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2013年9月28日土曜日

第十七回鍛錬句会

最高得点句

  墓の花挿しの熱い水を捨てる  玉虫

(6点)墓の花挿しの熱い水を捨てる  ◎◎○○
(4点)片頭痛の視界に生足  ◎○○△△
(3点)思春期の最終日だった父を焼く  ◎○△
(3点)すりガラスの向こう忙しく生きている  ◎○△
(2点)体力の、臨界  ○○△△△
(2点)他人の尻ぬぐいした腹が鳴っている  ○○△
(2点)あしあともきれいな街だ  ◎△△△
(1点)こんなところにうちすてられてしまっては石仏  ○△△
(1点)泣きじゃくった後のカーテンの隙間だった  ○△△△
(1点)階段が痛くて痛くてしょうがない ○△
(0点)お菓子の空き箱できてもうひとつの世界  △△
(0点)サドルのドクダミはらう夕暮れ  △△△
(0点)吸い殻にスコール  ○●△△
(0点)肝心なときにペンのないわたしという生き方  ○●△
(-1点)病み疲れて秋団扇  ●△△
(-1点)ぜんぶ夢ならいいのにと動かない半身であなた  ●△
(-1点)価値観がそっくりそのまま輝いた  ●△△△
(-1点)寝返り打てば秋でした  ●△△

※以上全18句。特選(◎)2点、並選(○)1点、逆選(●)-1点として集計。△は無点。

―――――

作者発表(全6名。投句順。編者除く)

【中筋祖啓】
価値観がそっくりそのまま輝いた
階段が痛くて痛くてしょうがない
体力の、臨界

【畠働猫】
こんなところにうちすてられてしまっては石仏
思春期の最終日だった父を焼く
すりガラスの向こう忙しく生きている

【藤井雪兎】
お菓子の空き箱できてもうひとつの世界
泣きじゃくった後のカーテンの隙間だった
あしあともきれいな街だ

【風呂山洋三】
ぜんぶ夢ならいいのにと動かない半身であなた
寝返り打てば秋でした
他人の尻ぬぐいした腹が鳴っている

【小笠原玉虫】
病み疲れて秋団扇
墓の花挿しの熱い水を捨てる
肝心なときにペンのないわたしという生き方

【馬場古戸暢】
片頭痛の視界に生足
サドルのドクダミはらう夕暮れ
吸い殻にスコール


18 件のコメント:

  1. 12. 墓の花挿しの熱い水を捨てる(6点)

    ◎「特選。墓参りだろうか。今回の句群で出色の句であると思う。暑かった夏の日の一場面をよく切り抜いた。抑制の効いた表現がかえって故人への思いを表しているようにも思う。」(働猫)
    ◎「お盆だと確かに花挿しの水が熱くなっていることがあります。その水を入れ換えるのも供養なのでしょう。心洗われる句です。」(洋三)
    ○「私も今年の墓参りで熱い水を捨てたのだが、あの熱さはこの世のものではないような気がした。熱湯というほどではないのだが、どこか不自然な熱さだった。」(雪兎)
    ○「お盆の墓参りでの景だろう。そのまますぎるかもしれないが、ぱっと自身と重ねることができたため、採った。」(古戸暢)

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  2. 16. 片頭痛の視界に生足(4点)

    ◎「温泉みたいで艶っぽい。」(祖啓)
    ○「並選にとらせていただきました。片頭痛のときってほんと頭痛のこと以外何も考えられないくらいキツいですよね。そんな時でも『あ、生足。』(笑)この飄々としてるというか、とぼけてるというか、そんな感じに惹かれました。生足の前では片頭痛も霞む。生足の威力に改めて目を開かれる思いです。」(玉虫)
    ○「片頭痛の時は何をしても楽しくない。どうしてこうなったとひたすら自問する。やり場の無い憎悪が膨らんでゆく。そこに生足が現れる。さて、どうすればいいのだろうか。」(雪兎)
    △「救われた気持ちになったものかどうか。残念ながら性欲が一般男性より希薄なため、こういう状況にすかさずときめいてしまう感じには共感できない。」(働猫)
    △「意識が生足にいったおかげで痛みが和らいだのでしょうか。面白いです。」(洋三)

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  3. 1. 思春期の最終日だった父を焼く(3点)

    ◎「特選にとらせて頂きました。大変ぐっときました。偉大な父だったのか、逆にどうしようもない父だったのか。そんな父が亡くなって、体も焼かれて、子供時代の終焉を迎えたのでしょう。こうやって人は大人になっていくものですよね。物語性に惹かれました。」(玉虫)
    ○「無限のエネルギー。さらに燃えてゆく。」(祖啓)
    △「その日から大人にならなければならなかった。辛い句です。」(洋三)

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  4. 6. すりガラスの向こう忙しく生きている(3点)

    ◎「具体的に何をしているのかはわからないが、とにかく一生懸命生きている。案外他人の人生はこのように見えるのかもしれない。」(雪兎)
    ○「並選にとらせていただきました。よその会社の窓の下を通りかかったのかな。どこか他人事で、ちょっとだけ淋しく。この部外者感というかちょっとした淋しさが俳句っぽくていいなと思います。不本意にフリーターやってた頃よくこんな風に感じていたっけなぁと懐かしく思いました。」(玉虫)
    △「台所にいる母親の姿を思い浮かべました。」(洋三)

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  5. 4. 体力の、臨界(2点)

    ○「『限界』よりも壮絶だ。と同時に、もの凄い説得力がある。もう本当に無理なのだろう。」(雪兎)
    ○「体力がみなぎっているってことでしょうか。当分頭から離れそうにありません。」(洋三)
    △「臨界っていうのがいいですね。限界だとそこで止まっちゃう感じだけど、臨界だとこのあとメルトダウン→メルトスルーと、恐ろしい何かが起こりそうで、怖いながらも何か期待してしまいます。」(玉虫)
    △「あふれ出しているのだろうか。うらやましい限りである。完全にコントロールされていますか。」(働猫)
    △「『臨界』という単語が、私が知っている『臨界』とは異なるように思う。」(古戸暢)

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  6. 7. 他人の尻ぬぐいした腹が鳴っている(2点)

    ○「並選にとらせていただきました。ほんと草臥れ損というか…あるある、こういうこと。飯くらい奢れと言いたくなりますね。こういう不条理感が生きてる、人生、って気がして気になる句でした。好きです。」(玉虫)
    ○「生理現象ですからなあ。」(古戸暢)
    △「それは腹も鳴るに違いない。しかし当たり前すぎはしないか。『わたしの尻をぬぐった腹が鳴っている』であれば句になる。」(働猫)

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  7. 13. あしあともきれいな街だ(2点)

    ◎「機械的な街を想像した。」(古戸暢)
    △「いまの季節にそれはないかなとも思うんですが、雪が積もってて点々と足跡がついている街路かなと思いました。金沢みたいな。足跡すら情緒がある街っていいですん。」(小玉虫)
    △「あしあとさえも残せないほどソフィスティケイトされた街なのか。一切の汚れを許さないディズニーランドのことですかね。」(働猫)
    △「景観もさることながら、そこに住む人々の生活様式も。ということでしょうか。古い街並みを思い起こしました。」(洋三)

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  8. 5. こんなところにうちすてられてしまっては石仏(1点)

    ○「仲間だ。安心する。」(祖啓)
    △「うちすてられた石仏。どうしたものやら。」(洋三)
    △「いいですね。うちのお墓とかがある田舎の山の中の光景なんかが目に浮かびます。忘れ去られたようになっている石仏や道祖神って、怖いけれど雰囲気ありますよね。『うちすてられて』じゃなくて『うちすてられてしまっては』にしたのは何故なんだろう?しまっては?この部分がよく分らなかった。うちすてられちゃ悲しいね~みたいなのを想像させるための余韻的な?この部分についてどう思うか、皆さんと語ってみたいです。」(玉虫)

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  9. 8. 泣きじゃくった後のカーテンの隙間だった(1点)

    ○「不意に周囲の不思議に気付いた瞬間か。」(古戸暢)
    △「気になる句。泣き疲れてふと見たら、カーテンの隙間から何が見えたんだろう。泣いている姿を誰かに見られちゃったのかな。非常に気になりますね。」(玉虫)
    △「カーテンに丸まって泣いていたのか。小学校の教室を思う。または、自分の部屋で泣いていて、ふと気付くとカーテンの隙間に眼があったというオカルト句なのか。いずれにせよ『泣きじゃくった』という語選びの良さがそれほど生きていないのではないか。」(働猫)
    △「そういえば、私も子供の頃、カーテンの隙間で泣いていたことがある気がします。」(洋三)

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  10. 11. 階段が痛くて痛くてしょうがない(1点)

    ○「腰痛でしょうか、膝痛でしょうか。あるいは心労か。いずれにせよ重い足取りなのでしょう。私もそんな時があります。」(洋三)
    △「コンドロイチンが効くらしい。ご検討ください。」(働猫)

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  11. 2. お菓子の空き箱できてもうひとつの世界(0点)

    △「空き箱に箱庭でも作っているのか。そういえば小さい頃そんな遊びをしたような気もします。」(働猫)
    △「子供心をくすぐりますよね。」(洋三)

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  12. 3. サドルのドクダミはらう夕暮れ(0点)

    △「しばらく放置していた自転車なのかな。たまに乗ろうとしたら、ドクダミが這い上がっている。毟り取って捨てて、出すまでが一苦労。漕ぎ出すとヘンな音がするかもしれない。でもそういう古い自転車って味があって好きです。気になる句でした。」(玉虫)
    △「『ドクダミ』に何かが仮託されているのだろうか。読み取れなかった。それとも特に言いたいことなどないのだろうか。」(働猫)
    △「カタカナ遣いがかっこいい。暗いトーンがより増します。」(洋三)

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  13. 9. 吸い殻にスコール(0点)

    ○「もう吸えない。」(祖啓)
    ●「写生句ですね。歌舞伎町みたいなゴミゴミした街に落ちている吸い殻に、バーッと激しい夕立が降る、みたいな。雰囲気あっていいなと思います。好きか嫌いかといえば好き。うん、でも、これを見て作者がどう思っているのか、これによって作者が何を言いたいのかがちょっとよく分らなかった。詠んだ人が見えないな、ということで逆選にとらせて頂きました。こういう風にズバッと短いの好みなんですが、こちらにはもう一言欲しかったかな。あと『スコール』って言葉もちょっと気障かなと思う。」(玉虫)
    △「この夏のゲリラ豪雨にあったものか。火も完全に消えて良かったですね。」(働猫)
    △「喫煙者ですが、ポイ捨てには嫌悪感を抱きます。」(洋三)

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  14. 14. 肝心なときにペンのないわたしという生き方(0点)

    ○「ただただ共感。私もそうです。」(洋三)
    ●「文意を理解しかねた。」(古戸暢)
    △「百縛百句に出されていた作品ですね。『わたしという生き方』が冗長に感じます。『わたし』あるいは『生き方』のどちらかでよいと思います。」(働猫)

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  15. 10. 病み疲れて秋団扇(-1点)

    ●「読む側も疲れる。」(祖啓)
    △「疲れても治りはしないだろう。仮病だったのか。そんな余裕が感じられる。病が重く発熱している状況を詠むのであれば、『扇ぐ手も病んで○○(なんか季語)』ではどうか。」(働猫)
    △「病に臥していると、寝ているだけで疲れるものですよね。」(洋三)

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  16. 15. ぜんぶ夢ならいいのにと動かない半身であなた(-1点)

    ●「逆選。対象である『あなた』との距離が遠いためか、それとも想像で詠んだものか。どうにも軽く感じてしまう。ステレオタイプなドラマのシーンのようだ。いずれにせよ本当に大変なのはこれからであろう。」(働猫)
    △「これは辛い。いきなり事故で下半身を…というような辛い状況が浮かびます。胸を揺さぶられます。が、俳句として、過不足なくまとまっていて大変美しいと思います。こういう長さ・リズムで私も詠みたいな~とつくづく思いました。」(玉虫)

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  17. 17. 価値観がそっくりそのまま輝いた(-1点)

    ●「言っていることそのままだとは思うのですが、うまく飲み込めませんでした。」(洋三)
    △「いいですね、ぐっときますね。価値観が似た相手と出会って、関係が出来たことを心から喜んでいる感じが伝わってきます。でも『輝いた』だからもう関係は終わってしまったのかもしれず…輝くような嬉しさと、淋しさが混在していて素敵です。好き。」(玉虫)
    △「人間を形作るものは『価値観』である、と思います。それが輝いたということはよい人物に巡り合えたのでしょう。異性であるなら結婚を申し込んではいかがでしょうか。そのような相手には人生の中でそれほど多くは出会えません。」(働猫)
    △「俺の時代が来た!って感じですね。」(雪兎)

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  18. 18. 寝返り打てば秋でした(-1点)

    ●「一見俳句としての雰囲気は持っているが、ややテンプレ気味。もっと言葉に重みが無ければ短律は成立しない。また、秋という言葉は広過ぎて、使い方が難しいと思う。」(雪兎)
    △「好きです。ふと夜半に寝返りをうったついでに目覚めて、虫の声が聞こえたり、月がキレイだったりして、ああ秋だなぁと思ったのかな。ストレートでいい句だなと思います。」(玉虫)
    △「寝すぎです。」(働猫)

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