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2013年10月29日火曜日

第十八回鍛錬句会

※諸々の事情により、今月の研鑽句会はお休みになりました。

第18回鍛錬句会
最高得点句

  秋の朝からみんな鼻血出とるで   水名

(6点)秋の朝からみんな鼻血出とるで  ◎◎◎
(4点)まだ死ねず透けるまで米研ぐ ◎◎
(4点)隣のチャイムの鳴り続ける秋の夜  ◎◎
(3点)時間はときどき止まっているわとすっぴんが真顔○○○○●
(3点)橋の上の夜釣りの女か ○○○
(2点)にんぎょうを抱いた少女と夜汽車去る◎
(2点)亀の顔出る波紋◎
(2点)裏切られてぐじゃぐじゃの鶏頭見ている  ○○
(2点)先に寝てしまった雨強くなる ◎
(2点)無駄な努力がまた高く売れた○○
(1点)結婚線のない手のひらふたつ ○
(1点)ラッキーな時のウッキー ○
(1点)異動する部下のあいさつ冷静な俺でいた○
(1点)梨剥いてもらおう洗い物の報酬だ ○
(0点)しぐるるや睨む野良居り
(0点)一度溶けて固まった乳房は白い闇○●
(0点)内臓が今日を汚している俎上○●
(0点)明日が迎へに来てただいまと泣く○●
(0点)俺の好きな女と嫌いな女が同じ男を好きだなんてどういうことだ
(0点)甘えて包丁研いでもらった
(0点)毒を盛る時の後退
(0点)着メロに合わせていつまでも歌っていた
(-1点)雪が降るようにしてねらう○●●
(-2点)他人の性交がいくつか行われているこの夜にすべきことは何か●● 


※以上全24句。特選(◎)2点、並選(○)1点、逆選(●)-1点として集計。

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作者発表


【中筋祖啓】
ラッキーな時のウッキー
雪が降るようにしてねらう
毒を盛る時の後退


【畠働猫】
一度溶けて固まった乳房は白い闇
にんぎょうを抱いた少女と夜汽車去る
 内臓が今日を汚している俎上


【藤井雪兎】
俺の好きな女と嫌いな女が同じ男を好きだなんてどういうことだ
他人の性交がいくつか行われているこの夜にすべきことは何か
着メロに合わせていつまでも歌っていた


【風呂山洋三】
隣のチャイムの鳴り続ける秋の夜
異動する部下のあいさつ冷静な俺でいた
梨剥いてもらおう洗い物の報酬だ


【小笠原玉虫】
しぐるるや睨む野良居り
先に寝てしまった雨強くなる
甘えて包丁研いでもらった


【馬場古戸暢】
亀の顔出る波紋
橋の上の夜釣りの女か
結婚線のない手のひらふたつ


【十月水名】
裏切られてぐじゃぐじゃの鶏頭見ている
時間はときどき止まっているわとすっぴんが真顔
秋の朝からみんな鼻血出とるで


【地野獄美】
まだ死ねず透けるまで米研ぐ
明日が迎へに来てただいまと泣く
無駄な努力がまた高く売れた

2013年10月25日金曜日

中塚一碧楼を読む

今年の夏、中塚一碧楼の句観賞をTwitter上に揚げたのだが、最近になってまとめてみようかと思い立った。改めて読み返すと読みの甘さがどうしても否めない。他の鉄塊衆の意見も聞いてみたいところである。



山このごろ炭焼の煙立たぬ明け暮れ


あの人はどうしているのだろう。顔すら知らない間柄でも、気にかかる人が私にもいる。


この朝うすものを著て佛壇の前にひさしき

何を語りかけているのだろうか。迷い。それとも、決意か。


養老院の櫻電車からいつも見え今日も見えたり

毎日見る光景だが、そこに暮らす人たちにまで思い馳せれば、また違った感慨となるのだろう。


蝋燭のあかりにて見えるこどもの顔

「震災一句」の前書きあり。あの夜と似た夜。だが、私たちの震災はまだ終わらない。


わが顔面の痛き夜の葉柳の家の女と

したたか、かつしなやかな平手打ちであったであろう。


夏貧民の児が引き抱へたる一つのキャベツ

そのキャベツは何人分なのか。はたまた何日分なのか。一碧楼の句にはこうしたいわゆる社会的弱者へ目を向けたものが存在する。人に対する深い眼差しを感じてならない。


桐の花咲き工場頼もしからず工場主

美しい桐の花と頼りない人物との取り合わせ。桐の紋は権威の象徴であるが、どうやらこの工場主にはふさわしくないようだ。とは言え、権威など無くてもいいのかもしれないが。


浅草の夜の酒を飲み水を飲みて夏めく

厭なこと全部、きれいさっぱり忘れちまった。開放的な夏のはじまり。


水をのみこぼしのみこぼし家のかげに

夏の暑い日。よほど喉が渇いていたのだろう。胸元まで濡らした姿が目に浮かぶようだ。


2013年10月14日月曜日

祖を読む、水を読む

※鉄塊衆名簿自選五句より。
※もはや題名の意味がわからなくなっていることについては、自覚的です。

中筋祖啓

となりの花が赤くて良かった

なぜとなりの花なのか。そして白かったら良くなかったのだろうか。

春一に良い角度で飛ぶカラス

カラスの飛び方に角度をみたこと、「良い」という主観を込めたところに、この句の面白みがある。

ダンゴムシぞんざいにして常に居る

「ぞんざいにして」の使い方に少し違和感を覚えるも、ダンゴムシにぞんざいという言葉はよくあてはまる気もする。

うまれてこのかた直線

これまでの自身の生き方を詠んだものだろう。曲線に生きた人と対面してもらいたい。

溶けたのか世界が雲へ消えてゆく

薄い雲がまばらに広がっている空を思い浮かべた。消えたのは世界ではなく、自身の方だったのかもしれない。

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十月水名

ゆでたまごの白身の味を朝から説明できるか

朝から難しいことに考えをめぐらせることとなったようだ。しかし朝でなくとも、説明するのは難しいように思う。

呪文のてにをはを間違い姉がまた泣いた

長い日本語の呪文を唱える必要があり、その中には「てにをは」が含まれている。姉はその呪文を唱えたいが、何度やっても「てにをは」を間違えてしまう。小学生が遊んでいる景か。

手のひらよりも鳥に集約されていく花びら

桜並木道で、手を差し出してみた。花びらが手のひらに乗るかと思ったが、道の先にいる鳥の方に落ちて行くばかりで自身の手には乗らない。春のひとこま。


難破したところで神棚をつくればいい

港町での発想か。こうして海神は、世界の各地で現れて行く。

10÷3が最初の永遠だった

幼少の時分、延々割り続けた記憶がある。生れてはじめて遭遇する永遠は、あの式の中にあるのかもしれない。個人的には、1÷3をも推したい。