鉄塔の重き夜空 温
◇互選集計
(5点) 鉄塔の重き夜空 ◎○○○
(3点) 手にいっぱいの種をまく ◎○
(3点) 雪降り積もりだれもいない夜が輝く ◎○
(3点) 寂しい夜の水洟すする ○○○
(2点) 小雨のふたりの近い深夜 ◎
(2点) 雀一斉に陽へ隠れ ○○
(1点) 平等に呪われながら愛を負う ○
(1点) 真っ直ぐ蒲団を敷いて祈る ○
(1点) 今日の寝床か脚をさらせば ○
(1点) 鍵盤叩いてひとつずつ葬る ○
(0点) 君の的外れ俺の的を射た
(0点) 明け方の月が薄くて爪を噛んだ
(0点) 二の足踏むや祖父はICUにいる
(0点) この子どこの子抱き上げておく
(0点) インポや妻に初夢見させる
(0点) 水音かさなる秒針 ○●
(0点) --・-・ ・-・-・ --・- ・-・-・ -・-・- ・・-・- --・-・ ・・・- ・-・・・ ・・- ・・-・・ ・・- ・--- ---- ・・-
(0点) 雨のせいです笑うしかない
(0点) 主治医の話きいていきおい煙草吸いに出た俺だった
(0点) 夜しずか咎の無い者みな眠る
(0点) ごみ袋あいて雀二羽
(0点) ごみも落ち葉もこの棟の陰
(0点) 裸木のレース透かして鈍空がくる
(-1点) 避けられぬ苦しみぐらいあるさひつじ年 ●
(-3点) 殺したい顔面拭えないので 一人暮らしはじめました ●●●
◇作者発表
【畠働猫】
雪降り積もりだれもいない夜が輝く
平等に呪われながら愛を負う
夜しずか咎の無い者みな眠る
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避けられぬ苦しみぐらいあるさひつじ年
【小澤温】
手にいっぱいの種をまく
雀一斉に陽へ隠れ
鉄塔の重き夜空
インポや妻に初夢見させる
今日の寝床か脚をさらせば
【武里圭一】
殺したい顔面拭えないので 一人暮らしはじめました
君の的外れ俺の的を射た
寂しい夜の水洟すする
二の足踏むや祖父はICUにいる
主治医の話きいていきおい煙草吸いに出た俺だった
【小笠原玉虫】
真っ直ぐ蒲団を敷いて祈る
裸木のレース透かして鈍空がくる
明け方の月が薄くて爪を噛んだ
鍵盤叩いてひとつずつ葬る
雨のせいです笑うしかない
【馬場古戸暢】
水音かさなる秒針
ごみも落ち葉もこの棟の陰
ごみ袋あいて雀二羽
小雨のふたりの近い深夜
この子どこの子抱き上げておく
(0点) 二の足踏むや祖父はICUにいる
(0点) この子どこの子抱き上げておく
(0点) インポや妻に初夢見させる
(0点) 水音かさなる秒針 ○●
(0点) --・-・ ・-・-・ --・- ・-・-・ -・-・- ・・-・- --・-・ ・・・- ・-・・・ ・・- ・・-・・ ・・- ・--- ---- ・・-
(0点) 雨のせいです笑うしかない
(0点) 主治医の話きいていきおい煙草吸いに出た俺だった
(0点) 夜しずか咎の無い者みな眠る
(0点) ごみ袋あいて雀二羽
(0点) ごみも落ち葉もこの棟の陰
(0点) 裸木のレース透かして鈍空がくる
(-1点) 避けられぬ苦しみぐらいあるさひつじ年 ●
(-3点) 殺したい顔面拭えないので 一人暮らしはじめました ●●●
◇作者発表
【畠働猫】
雪降り積もりだれもいない夜が輝く
平等に呪われながら愛を負う
夜しずか咎の無い者みな眠る
--・-・ ・-・-・ --・- ・-・-・ -・-・- ・・-・- --・-・ ・・・- ・-・・・ ・・- ・・-・・ ・・- ・--- ---- ・・-
避けられぬ苦しみぐらいあるさひつじ年
【小澤温】
手にいっぱいの種をまく
雀一斉に陽へ隠れ
鉄塔の重き夜空
インポや妻に初夢見させる
今日の寝床か脚をさらせば
【武里圭一】
殺したい顔面拭えないので 一人暮らしはじめました
君の的外れ俺の的を射た
寂しい夜の水洟すする
二の足踏むや祖父はICUにいる
主治医の話きいていきおい煙草吸いに出た俺だった
【小笠原玉虫】
真っ直ぐ蒲団を敷いて祈る
裸木のレース透かして鈍空がくる
明け方の月が薄くて爪を噛んだ
鍵盤叩いてひとつずつ葬る
雨のせいです笑うしかない
【馬場古戸暢】
水音かさなる秒針
ごみも落ち葉もこの棟の陰
ごみ袋あいて雀二羽
小雨のふたりの近い深夜
この子どこの子抱き上げておく
(5点) 鉄塔の重き夜空 ◎○○○
返信削除◎暗い鉄塔は存在が重い。シンパシーだろうが好き。(圭一)
○曇り空ならば重いのもわかるのだが、「夜空」が重いというのはよくわからない。では重いのは鉄塔か。鉄塔を重いと感じるのはどのような目なのか。これは景色・情景を常に審美眼によって切り取る癖を持つ者の句であろう。この夜、この情景においてあの鉄塔が重いのである。その自らの違和を詠んだものか。(働猫)
○実家の近くを深夜に徘徊している時にこうした鉄塔に出くわした。(古戸暢)
○今回の句群のなかで特に好きな一句。今回わたしもいまの季節独特の重い空を詠むことにチャレンジしてみたのですが、案外いい言葉が思い付かなかったのです。で、空じゃなくて鉄塔を重いということで、空を重く感じさせているのをみて、おお、この手があったかと思いました。真っ暗い夜空をバックに更に暗い影として鉄塔が立つ。ヘビーさ、そして冷たさが伝わってくる冬の佳句と思います。(玉虫)
(3点) 手にいっぱいの種をまく ◎○
返信削除◎大変いいです。いまの季節を詠もうとすると、寒さとか重い空とかを詠みたくなり、それはそれで素敵なんですが、敢えて希望を詠んだところが好きだなと思いました。寒くてふさぎ込みたくなる季節だからこそ出来ることもありますよね。手にいっぱいというのもいい。やれること全てやっておく、みたいな前向きな感じがある。短くストンとまとまってるところと語感、リズムもいいです。(玉虫)
○希望を感じさせる。小さな手であろう。子供の手か。私たちは種を蒔く土壌をどれだけ次の世代に残せるのだろう。(働猫)
(3点) 雪降り積もりだれもいない夜が輝く ◎○
返信削除◎雪なんて知らないけれども。(古戸暢)
○推敲必要。(温)
(3点) 寂しい夜の水洟すする ○○○
返信削除○「寂しい」には疑問。(古戸暢)
○悲し。(温)
○いいですね。寒さ、寂しさ、ひとりぼっち感と、わたしが大好きな正統派自由律俳句の雰囲気です。わたしだったら「水洟」じゃなくて「鼻を」にするかも。でも水洟のほうが感じ出るかなとも思います。風邪引いてるってよりも寒いから鼻水出ちゃうみたいな感じかなと。寂しいってズバリ言っているところも大変好みです。(玉虫)
△「水」で区切るのか、「水洟」とするのか。「水洟」ならば相当熱も高いのだろう。大事にしてほしいものだ。(働猫)
(2点)小雨のふたりの近い深夜 ◎
返信削除◎スッとは落ちない。(温)
△傘の中の二人なのだろう。温もりを感じる。(働猫)
(2点) 雀一斉に陽へ隠れ ○○
返信削除○羽ばたく雀を目で追って太陽を見たのだろう。視点の移動を自然と表現している。(働猫)
○鳩ではなく粒の細い雀なのがよい。(圭一)
(1点) 平等に呪われながら愛を負う ○
返信削除○いいですね。愛し合う二人だけども、愛を貫くために傷つけてしまうひともいるってことなのかなと読みました。また、愛は祝福と同時に呪いでもありますから、同じ苦しみに囚われるのは宿命なのだとも思いました。それでも、同じ苦しみのなかで手を取り合って同じ方向を向く人間は美しいと思います。何気に五七五になっているせいか、リズムもよくすっと入ってきますね。お見事と思います。(玉虫)
(1点) 真っ直ぐ蒲団を敷いて祈る ○
返信削除○清く。(温)
△ムスリムかな。互いの祈りが尊重される世界であってほしい。(働猫)
(1点) 今日の寝床か脚をさらせば ○
返信削除○切れの悪さも。(古戸暢)
△一夜の宿を得るために、脚を晒しているのだろうか。家出の末、身体を売ることを覚えた女子の悲哀を詠んだものか。女子の貧困は、搾取と偏見によってさらに貶められてしまう深い闇だ。(働猫)
(1点)鍵盤叩いてひとつずつ葬る ○
返信削除○実際、意味はよくわからない。が、妙に好き。(圭一)
△レクイエムだろう。鎮めるものは魂であろうか、思い出であろうか。(働猫)
(0点) 君の的外れ俺の的を射た
返信削除△J-POPの歌詞のようだなと感じた。(働猫)
(0点) 明け方の月が薄くて爪を噛んだ
返信削除△なぜ「噛む」にしなかったのだろう。「噛む」の方がずっといいのに。「噛んだ」と過去形にすることで、爪を噛むという無意識の行為を意識下のものとしてしまう。「爪を噛んだ自分」を詩的なものとして振り返っているような、やや過剰な自意識を思わせてしまうのだ。「噛む」であれば、意図のない瞬間を切り取った表現となる。どちらも「爪を噛む自分」を客観視しているのだが、「噛んだ」とした場合には自意識がやや臭う。(働猫)
(0点) 二の足踏むや祖父はICUにいる
返信削除△母親の脳梗塞を経験しているので、この心境には共感できる。現実を直視することを恐れる心境がよく表現されている。(働猫)
(0点) この子どこの子抱き上げておく
返信削除△正月の親類が集まる席であろうか。誰の子供かわからないが、とりあえず抱き上げておく。やさしさのようでもある。しかし自分に引き寄せて考えてみると、子供嫌いな人間が、社会にうまく適応するために、パフォーマンスとして行っている情景を思う。そういった「とりあえず」感がこの句の主題であろう。(働猫)
△可愛らしい。詠み人のやさしさがいいなと思いました。童謡みたいなリズムも楽しい。(玉虫)
(0点) インポや妻に初夢見させる
返信削除△「見せたる」と誤読して、関西弁の句かな、と思ったが違った。関西弁の句の方が面白かった。(働猫)
△逆選にしようかとも思ったが、姫初めができない寂しさに気づいたのでやめた。(圭一)
(0点) 水音かさなる秒針 ○●
返信削除○時を刻む音が二つある状態。「水音」は水滴であろうか。重なっているから耐えられるが、二つの音にずれがあった場合、精神に異常を来しそうな気がする。(働猫)
●水音と秒針がどうにも繋がらない。(圭一)
△深夜の景かな。眠れず輾転としていると、水道の水滴と時計の音が妙に気になる。すごくよく分かるし自由律俳句にぴったりの句材とも思うけど、ちょっと投げっぱなし感が惜しい! もう少しいじれないかなと可能性を感じます。(玉虫)
(0点) --・-・ ・-・-・ --・- ・-・-・ -・-・- ・・-・- --・-・ ・・・- ・-・・・ ・・- ・・-・・ ・・- ・--- ---- ・・-
返信削除△ネットで翻訳すると「しんねんさみしくおうとうをこう」だった。応答を乞うという気持を何故か隠したくなるのはよく分かる。……といってそういう意味合いを作者が付したのかは知らないが。(圭一)
(0点) 雨のせいです笑うしかない
返信削除△「他者のせいにすること」も「笑ってごまかすこと」も私は忌み嫌っている。この句にはそれが二つとも入っている。むう。許せぬ。(働猫)
(0点) 主治医の話きいていきおい煙草吸いに出た俺だった
返信削除△「永訣の朝(宮澤賢治)」中の「曲がった鉄砲玉のように」を思わせる。「俺だった」はなくともいいと思うが、よく知っている自分自身の意外な行動に驚いたという意味での「俺だった」ならば、削るわけにもいかないのだろう。(働猫)
(0点) 夜しずか咎の無い者みな眠る
返信削除△どうかな~「悪い奴ほどよく眠る」とも言うしなぁ~(^皿^) 子供や、無垢な女性の寝顔を思わせる美しい句ではあります。(玉虫)
(0点) ごみ袋あいて雀二羽
返信削除△袋の中にいたのか。開けたところに餌を求めてやってきたのか。いずれにしても微笑ましい景色だ。(働猫)
(0点) ごみも落ち葉もこの棟の陰
返信削除△吹き溜まりになっているのだろう。掃除する者もない閑居の様子か。(働猫)
△並選をもう一句とれるとしたらこちらを。これ好きだな。隅っこ感が非常に好みです。これはマンションとかじゃなくて古い公団と思う。この棟に住んでいる者の、慎ましい、または侘しい生活にも思いを馳せてしまいますね。こういう物語の広がりを感じる句は大変わたし好みです。(玉虫)
(0点) 裸木のレース透かして鈍空がくる
返信削除△「レース」と表現したのは詩的であると思う。「鈍空」はよくわからないが曇天のことなのであろうか。雪の降る前の情景を詠んだものだろうか。(働猫)
(-1点) 避けられぬ苦しみぐらいあるさひつじ年 ●
返信削除●新年に向けての覚悟かな。「苦しみ」と「ひつじ(ふわっとしてて草食獣ってことでおだやかな印象)」の取り合わせ面白いなと思うのですが、ちょっとまんま過ぎて惜しいなと。避けられぬ苦しみとひつじ年。着眼したのほんとに面白いのでもう少し整理してみたい。可能性を感じるので逆選にしてみました!(玉虫)
(-3点) 殺したい顔面拭えないので 一人暮らしはじめました ●●●
返信削除●よくわからない。(古戸暢)
●よくわからない。意味が、ではなく、表現の意図が。空白も効果的ではないように思う。始めるのは冷やし中華でもよいように思う。(働猫)
●スネがじがじ。(温)
△これは実家との決別かなと思いました。実家に対して「殺したい」という激しい表現を使うところにシンパシーを覚え。と、思ったら「はじめました」と丁寧に終えているところをみると、平安を取り戻したのかなと感じました。もっと短くズキッとくる感じにまとめることも出来そうです。是非そちらも見てみたい。(玉虫)