2013年1月23日水曜日

句をとる


私が句をとる際に重視していることは、その句がすとんと心に落ちてくるかどうかという点である。すなわち、考える間もなく景が広がる句、そういう句を選んでいる。

句の中に何がしかの違和感を感じたり、頭をひねらなければいけなくなったならば、私はその句をとらない。疑問符が浮かばない句を好むのである。このことは結果的に、句評を書きやすい句を選ぶことにつながる。

実際に選句をする際には、私は三段階評価をする。すなわち、各句の冒頭に、無印(0点)、△(一点)、○(二点)を書き込んで行くのである。もっともこれはPC上で行う場合のことであって、実際の紙の上で行う際には、△の代わりに一本線を、○の代わりに二本線を書き入れている。この作業を、だいたい三度ほど行う。その結果、各句の冒頭部分は以下のようになる。

○△○1  古池や~
△△  2 古狸~
     3 古古古~
   ○4 古時計~
      5 古ん古ん~

こうして点数の多く入った句をとっていくわけである。上の例でいえば、1番の句が特選、2番と4番の句が並選となる。なおたまに、◎(あるいは三本線)を書いてしまう句がある。これは自動的に特選となる。

逆選の時も、加点法を用いる。残った句(上の例でいえば3番と5番)のうちにいいところを見つければ、それを候補から外す。そうして最後まで残った句を、逆選とするのである。消去法と言った方がいいのかもしれない。なおたまに、いきなり×をつけたくなる句がある。これは自動的に逆選となる。

以上、私が選句の際に重視することと、具体的な選句法を述べた。

皆さんがどのようにして選句をしていらっしゃるのか、お聞かせいただければ幸いである。

1/27追記

皆さんのコメントを読んでいて、選句方法に関して書き忘れたことがあることに気付いた。
無点句となる句の中に、選外句が含まれているのである。これは、あまりに私の感覚から異なっていて、どのように判断すればいいのか、何が良くて何がいけないのか、この辺りが皆目見当もつかない句のことである。

したがって私の選ぶ逆選句は、理解はできるものの何かが足りない(加点できない)句となる。なお、好き嫌いでいえば、そもそも句に対して嫌いという感覚を持たないので、逆選句であれど好きな句であることに変わりはない。

8 件のコメント:

  1.  私は、選句選評もひとつの表現物、作品だと考えています。ひとの目に触れることを前提とした文章は、全て作品である、と。なので選句の基準となるのは、選評=表現の意欲を、かき立てられるか否か、です(なんだかすごくわがままなようですが)。それは馬場さん仰るように、「句評を書きやすい句を選ぶ」ということなのかもしれません。良い句だと感じた次の段階に、読む側である私が語る側になる契機を与えてくれるかどうか、そこに拡がりはあるか否か。そんな基準で選句をしています。ときには選評とは言い難い、自分語りにもなります。傲慢だなあ、と思いつつも、そうせずにはいられない。それが私にとっての良い句との出会いなのです。
     具体的には、まず選句表を熟読し、いいなと思った句の冒頭に「・」を打ちます。そこから、自分が語りたいなにかを探します。特選・並選の差は、あまりないように思います。強いていえば、一番に語りたいことがある、それが特選です。その「語りたいこと」が、作者自身へ向けられる要素が強まると、それは逆選になるようです。批判や質問がある場合、ということですね。それでも、言いたいことが何もない、というよりは高く評価しているのです。逆選は『●』であって、『X』ではないのです。

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    1. ご意見をありがとうございます。

      句評も作品とのこと、ごもっともだと思います。

      語りたいかどうかで句をとるということですが、「結果として」語りやすい句を選ぶこととなる私と対照的(とまではいきませんか)で面白いと感じました。

      逆選もまた、同一ベクトル上の真逆に位置するというふうに考えれば、特選や並選と同じ性質のものなのかもしれませんね。

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  2. 私の場合はまず一回ざっと読んで、少しでも気になったら「○」を付けておき、
    その中から特選・並選としぼっていきますね。
    特にひっかかる所が無いと取りません。
    基本的に逆選は「○」の付かなかった句の中から選びますが、
    最初の読みの段階で決まることもあります。
    畦道さんの仰る通り、選句も作品だと思いますし、
    その結果次第では、他人の俳句観に多大な影響を及ぼすことがありますので、
    真剣にやらなければなりませんね。

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    1. ご意見をありがとうございます。

      特にひっかる所というのは、一体なんでしょうか。そして逆に言えば、逆選は特にひっかかる所がないものとなるでしょうか。

      お手すきの際にでもお教えいただければ幸いです。

      なお、草原一望アップしています。ご笑覧ください。(ここに書くことではありませんね)

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    2. >特にひっかる所というのは、一体なんでしょうか。そして逆に言えば、逆選は特にひっかかる所がないものとなるでしょうか。

      引っ掛かる所というのは、要は非凡な部分です。
      そしてそれが表現として成功しているかどうか。
      なので逆選は、非凡であっても表現として失敗している場合に付けることが多いですね。
      もちろんそういう句が無い場合は、特に引っ掛かる所が無く誰でも書けるような平凡な句を逆選にします。
      もちろん平凡であることを糾弾するつもりはありませんが、
      自分が見出さなければ誰も意識しなかったものを句にしたいのです。

      「草原一望」拝見致しました。

      キリンの顔だけ先に見えた  瞭

      この句いいですね。随句ならではの一瞬の輝きだと思います。
      あと、「草原」の二月号も届きました。ありがとうございます。
      古戸暢さんの句では、「逢いたい夜を咳する」に特選を。
      次点で「怒鳴り声に変わった階下」をいただきます。

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    3. たびたびありがとうございます。
      詳しく説明くださったので、よくわかりました。

      また草原への感想、どうもありがとうございます。
      あいもかわらない自句たちですが、とってくださると嬉しいものです。

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  3. 僕は、気になる句にまず印を付けます。それを2~3回繰り返します。その中から特選、並選、逆選を選ぶのですが、まず、評を書きます。書いているうちに「これは特選」とか「これは並選」とか決まってくる感じです。
    逆選は気になる句の中で「好きだけどストンと落ちなかった」句を選んでいます。そういうルールと決めているわけではないですが今までの選び方を振り返ると、逆選は「好き」が前提としてあります。

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    1. ご意見ありがとうございます。

      私も言われてみれば、評を書きながら選んでいることもあるようです。

      こうして皆さんのお話をきいていますと、以前にどなたかが(そして私も)話していた、「無点句となるのが一番悲しい」がもっともな気がしてきます。

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