2013年3月30日土曜日
第十一回研鑽句会―種田山頭火を読む―
最高得点句
炎天をいただいて乞ひ歩く
(5点)炎天をいただいて乞ひ歩く ◎◎○
(4点)分け行つても分け行つても青い山 ◎○○
(4点)すべつてころんで山がひつそり ○○○○
(4点)もりもりもりあがる雲へ歩む ◎○○
(3点)この旅、果もない旅のつくつくぼうし ◎◎●
(3点)何を求める風の中ゆく ◎○
(3点)春の雪ふる女はまことうつくしい ◎○
(2点)生死の中の雪ふりしきる ◎
(2点)まつすぐな道でさみしい ○○○●
(2点)ふくろうはふくろうでわたしはわたしでねむれない ○○
(1点)しぐるるや死なないでゐる ○
(1点)ほろほろ酔うて木の葉ふる ○
(1点)どうしようもないわたしが歩いてゐる ○○●
(1点)捨てきれない荷物のおもさまへうしろ ○
(1点)まつたく雲がない笠をぬぎ ○
(1点)うしろすがたのしぐれてゆくか ○○●
(1点)ちんぽこもおそそも湧いてあふれる湯 ○○●
(1点)とんからとんから何織るうららか ○
(1点)おちついて死ねさうな草萌ゆる ○
(0点)鉄鉢の中へも霰 ◎○●●●
(0点)雨ふるふるさとははだしであるく ○●
(-1点)空へ若竹のなやみなし ●
(無点)歩きつづける彼岸花咲きつづける
(無点)また見ることもない山が遠ざかる
(無点)あの雲がおとした雨にぬれてゐる
(無点)酔うてこほろぎと寝てゐたよ
(無点)いつまで旅することの爪をきる
(無点)寒い雲がいそぐ
(無点)いそいでもどるかなかなかなかな
(無点)ひよいと四国へ晴れきつている
※特選(◎)2点、並選(○)1点、逆選(●)-1点として集計。
作者発表
全句、【種田山頭火】。
第十一回鍛錬句会
最高得点句
雪が雨になって夜はこんなに暗かった
(7点)雪が雨になって夜はこんなに暗かった ◎◎◎○
(6点)事故車の隣で笑顔だ ◎○○○○
(3点)少年ジャンプだけ束ねてある安アパートの灯り ◎○
(3点)黴匂う本屋にいてしずかな ○○○
(3点)酔った勢いでも出てこない言葉 ◎○
(3点)少しつめたいからだ出てった春の朝はやく ◎○
(3点)君と僕しか知らない炬燵の下である ○○○
(3点)抱きしめられ剃刀の落ちる ◎◎●
(2点)明日履く靴下もなく二月尽く ○○
(2点)生足増えて春はもうすぐ ○○
(1点)八つ当たりがこの春定年迎えます ○
(1点)菜の花の天麩羅を塩でいただく春をいただく ○
(1点)十年後に完成するはずの廃墟 ○
(1点)星も見えてつまりトーキョーは東京という所 ◎●
(1点)呪い言一番最後に力が無い ○
(1点)そもそも金もないのに出てきた日も暮れて ○
(1点)電話鳴るたび電話代お安くなる話 ○○●
(1点)雨の傘がばたばた開かれる夜の出口 ○
(0点)キラキラネームで二十歳になった ○●
(0点)沈丁花香り始めた変わろう先ず前髪を切る ○●
(0点)トラックのラジオから元カノの歌声 ○●
(0点)柔肌以外もいろいろ知らず ○●
(-3点)つぶ&マーガリンだよコッペパン ●●●
(無点)ダンシング一本松の逆光よ
(無点)さんざん悩ませた死顔が花に囲まれている
(無点)春らしいパンツの穿き心地が悪い
(無点)春風の寝湯に浮かぶ
(無点)逆光です車種もナンバーも分かりませんでした
(無点)地球上にただひとり凍て咳の夜
(無点)藤棚の蛇になりたい花房の影で君を狙って
※特選(◎)2点、並選(○)1点、逆選(●)-1点として集計。
作者一覧
【小笠原玉虫】
沈丁花香り始めた変わろう先ず前髪を切る
藤棚の蛇になりたい花房の影で君を狙って
明日履く靴下もなく二月尽く
【渋谷知宏】
君と僕しか知らない炬燵の下である
そもそも金もないのに出てきた日も暮れて
黴匂う本屋にいてしずかな
【白川玄齋】
酔った勢いでも出てこない言葉
十年後に完成するはずの廃墟
柔肌以外もいろいろ知らず
【天坂寝覚】
雨の傘がばたばた開かれる夜の出口
少しつめたいからだ出てった春の朝はやく
星も見えてつまりトーキョーは東京という所
【中筋祖啓】
呪い言一番最後に力が無い
つぶ&マーガリンだよコッペパン
ダンシング一本松の逆光よ
【畠働猫】
雪が雨になって夜はこんなに暗かった
地球上にただひとり凍て咳の夜
キラキラネームで二十歳になった
【馬場古戸暢】
生足増えて春はもうすぐ
菜の花の天麩羅を塩でいただく春をいただく
春風の寝湯に浮かぶ
【藤井雪兎】
トラックのラジオから元カノの歌声
事故車の隣で笑顔だ
抱きしめられ剃刀の落ちる
【本間鴨芹】
電話鳴るたび電話代お安くなる話
八つ当たりがこの春定年迎えます
春らしいパンツの穿き心地が悪い
【松田畦道】
少年ジャンプだけ束ねてある安アパートの灯り
さんざん悩ませた死顔が花に囲まれている
逆光です車種もナンバーも分かりませんでした
2013年3月17日日曜日
第三回 VT句会(2013春)
最高得点句
もう生きているだけの爪を切る
鍵盤の血を拭けば低音
互選集計
(5点)もう生きているだけの爪を切る ○○○○○
(5点)鍵盤の血を拭けば低音 ○○○○○
(4点)根雪に膝突き先祖の話 ◎○○
(4点)吹雪の木々の手ざはり ◎○○
(4点)雪おろし知らないままにたぶん死ぬ ◎◎
(4点)春を待つ銀のエンゼルまだ独り ◎○○
(3点)くんくんと匂い嗅いで回る春だよ ◎○
(3点)俺の内側は別の色に塗ってある ◎○
(3点)取り皿の四角く冬の深みけり ◎○
(3点)窓拭いて月を尖らす ○○○
(3点)春暁や目覚めぬままに少し泣く ◎○
(3点)啼くことを許され春の犬である ○○○
(2点)切れぎれに眠る枕がたより ◎
(2点)件は冷たい鉄の門に入る ◎
(2点)半世紀置かれし春日傘 ◎
(2点)まつすぐなら疑ふ ○○
(2点)メニュー告ぐチョークの音も二月かな ◎
(2点)新しい方言覚え冬の果 ○○
(2点)たぶん七回忌でおしまいだと父は食後の茶を断った ○○
(2点)このかなしみにルビふる ○○
(2点)椿の蜜舐めよる肥えた蠅 ◎
(1点)救いの神がお年玉をねだりにやってくる ○
(1点)ペンですかいいえ馬です春隣 ○
(1点)蜜吸うや甘いの辛いの酸っぱいの ○
(1点)蜜壺に沈む羽虫の睡り ○
(1点)蜜の香りへ舌をさしだす ○
(0点)ママチャリのコンドル ○●
(0点)教会に空席 ○●
(0点)節分に仏頂面を外しけり ○●
(-1点)目の前にあと一人いる福笑い ●
(-1点)回転をしたかに見せる光沢だ ●
(-1点)蜂蜜をたつぷり塗つて蕪村の忌 ●
(-1点)佐保姫と名づけ野良猫にかまぼこ ●
(-2点)コマーシャルソングの事が好きすぎる ●●
(-2点)蜂蜜が妙に好き ●●
(-3点)醜女も蜜壷 ●●●
※特選(◎)2点、並選(○)1点、逆選(●)-1点として集計。
作者一覧
【青山茂根】
吹雪の木々の手ざはり
まつすぐなら疑ふ
小道いくつを如月の野にまどふ
啼くことを許され春の犬である
動かぬ泡抱いて蜜
【粟野賢太郎】
教会に空席
初雪処女の手袋
憂鬱はお前を守るカランコエ
淡雪のかかりし指と約束し
醜女も蜜壷
【五十嵐義知】
マスクする理由違へてゐた
件は冷たい鉄の門に入る
風邪声の聞こゆる青い水の中
取り皿の四角く冬の深みけり
幻燈という蜜の塊
【小川春休】
切れぎれに眠る枕がたより
窓拭いて月を尖らす
雲雀東風盆に徳利ころがれる
蜜月や艶見ゆるまで梅近く
春灯を消し字幕には蜜語かな
【榊倫代】
野茨の芽の矜持
春一番に耳羽搏くよ
メニュー告ぐチョークの音も二月かな
春暁や目覚めぬままに少し泣く
蜜壺に沈む羽虫の睡り
【篠原識別子】
犬の目にしやぼん玉
半世紀置かれし春日傘
少年の帽子目深き春の雪
春時雨一升瓶を提げてゆく
蜂蜜をたつぷり塗つて蕪村の忌
【渋谷知宏】
くんくんと匂い嗅いで回る春だよ
わかめになりたい波が揺れてる
猟犬の末裔今はバター犬
真っ直ぐに雪は落ちない決闘だ
蜜吸うや甘いの辛いの酸っぱいの
【白川玄齋】
落椿のどこまでも紅い
救いの神がお年玉をねだりにやってくる
目の前にあと一人いる福笑い
初日の出いつも通りの酒に酔い
蜜蝋で封もされずに年賀状
【鈴木牛後】
怒声降り積もりホワイトボードは雪野
俺の内側は別の色に塗ってある
節分に仏頂面を外しけり
佐保姫と名づけ野良猫にかまぼこ
蜜蝋蝋燭たわわに雪の部屋を塗る
【中筋祖啓】
ママチャリのコンドル
坂をゆききった荒い息
回転をしたかに見せる光沢だ
コマーシャルソングの事が好きすぎる
蜂蜜が妙に好き
【畠働猫】
もう生きているだけの爪を切る
骨になって正体不明の動物となる
冬日向えふぶんのいち丸くなる
春を待つ銀のエンゼルまだ独り
水蜜の季節も待たず逝ってしまうという貴女
【馬場古戸暢】
夜の寒さもスクワット
かめはめ波放つ幼女ふたり
冬帝を迎え撃つなり手を握る
雪おろし知らないままにたぶん死ぬ
蜜の香りへ舌をさしだす
【藤井雪兎】
根雪に膝突き先祖の話
鍵盤の血を拭けば低音
新しい方言覚え冬の果
ただ見てたホットケーキを焼く背中
蜂蜜瓶抱いて陽だまりの昼寝
【松田畦道】
たぶん七回忌でおしまいだと父は食後の茶を断った
このかなしみにルビふる
ペンですかいいえ馬です春隣
早春の星巡りしてすぐ爆発
壇蜜のひかがみあたりまで二月
【矢野錆助】
凍えた両手がカップ酒掴む
冬霧のドブ川ちろちろ
老父母の背中の丸く白菜鍋
風花の空に残りし飛行機雲
椿の蜜舐めよる肥えた蠅
以上全15人。
※五十音順。句の並びは、自由律二句、定型二句、題詠一句の順。今回の題詠は「蜜」。
2013年3月13日水曜日
兎を読む、虫を読む
※鉄塊衆名簿自選五句より。
※俳号に「生き物」が多い集団だと思いました。
藤井雪兎
泣き疲れて夕暮のまんなか
『草原』においても話題となった一句である。自身の姿とも、誰か他者の姿とも読めるだろう。どちらにせよ、あまりにまばゆい夕陽の中で泣き疲れている様がありありと浮かび上がってくる。
自分の影に鍬振り下ろしている
農事に従事する日常を詠んだ一句。飛び散る汗が影に沁み込む様までみえてくる。
あしあとだけがおれのふるさと
振り返る価値があるのは、おれが歩んできた軌跡だけである。おれがどこから来たかなんて、そんなこともうどうでもいい。
クッキーの香り残して転校していった
最後にクッキーを渡されたのだろうか。それとも、いつもクッキーの香りのする子だったのだろうか。ここでは異性と読みたい。
ちょっとだけ死をくすぐって君は美しい
君の手首には切り傷がたくさんあると読んだ。そんな君の生はなによりも美しくみえるのが不思議である。
―――――
小笠原玉虫
えのころ草ふとほぐす雲暗くなる
誰もが経験したことがあるようなないような景。哀愁を感じるのはだからこそだろう。
月ばかり明るい小銭しかない夜道だ
ポケットにいれた小銭を数えながら夜を歩いてゐるのだろう。ろくに金もない俺の心のことなど考えもせず、月だけがやけに頑張っているのであった。
犬の背に鼻埋める失敗した夜
犬とともに暮らしていないと詠めない一句。明日の再生へ向けて、こうして癒されながら眠りにつくのだろうか。
胸の中にクサリヘビを飼う
クサリヘビといえば、毒蛇の一種だとまず思いつく。さて胸の中に毒蛇を飼うとは、なんとも怖いもの知らず。それでも飼わねばならぬ、作者の胸中はいかに。
頭から毛布かぶる点滴の痕疼く
点滴を受けたのは最近かそれともずっと昔か。ともかく、頭から毛布をかぶろうとも、点滴の痕はやけに疼くのである。捨てられないあの頃が詰まっているためか。
2013年3月4日月曜日
私が第十回の鍛錬句会で特選に選んでいたもう一つの句の選評です
おはようございます。白川 玄齋です。
私は今回の第十回の鍛錬句会で、もう一つ特選に選んでいるものがあります。
その句は、渋谷さんの
「何のおまつりかは関係ない犬がきた」
です。
選評を書いているととても長くなるとわかりましたので、 先日 Twitter へツイートしたものをこちらにも書きます。
以下がツイートした本文の内容です。
(1)こんにちは。今回の鉄塊鍛錬句会で、特選として取ろうとしたものがもう一句ありました。ものすごい長文になるのでブログに選評を書かず、こちらに書きます。その句は渋谷さんの「何のおまつりかは関係ない犬がきた」です。以下、選評です。
(2)この句で思い浮かべる情景は、お祭りで生け贄にするために大切に育てられた牛が、お祭りとは関係のない犬がふらっとやって来たのが見えて、「いい気なものだ。俺はこれから生け贄にされるのに。。。」と思う、そんな光景です。こういう風景は『荘子』の中によくありまして、
(3)今回のたとえを用いますと、お祭りの牛は大切に育てられておいしいものを食べられるかもしれないが、やがて生け贄として死んでいく、それよりは餌も満足に得られなくても自由でいる犬の方がよい、そういう主張があるわけです。さて、
(4)『荘子』を更に読んでいきますと、この話には続きがありまして、『荘子』は単に自由な犬の側に軍配を上げることを述べていただけなのかというとそうではないのです。この例で言うと、お祭りの生け贄の牛になるか、自由でひもじい犬になるかは自分で決められるものではなく、
(5)運命、あるいは天命というもので決まるものであるということです。では一体、もしも荘子は生け贄の牛の立場になった場合はどうするのか、という所を考えてみますと、
(6)「自分が生け贄の牛として生まれついたのは天命だから、それをきちんと見つめた上で、自分の進退を考えよう」と思い、次のように過ごしていくわけです。二つほど考えますと、
(7)自分は自由な連中よりも大切に育てられ、いつもおいしいものがあるわけだから、それによって毎日毎日を楽しく過ごし、満たされた中で生け贄として殺される日を迎えよう、というのが一つの生き方で、もう一つは、
(8)正直な所自由な連中がうらやましい。だからお祭りの時に隙を見て他の牛たちと共に脱走を試みよう、という生き方です。牛の群れの突進は時には軍隊までも崩壊させる事がありますから、
(9)この牛の試みもそう無謀なものとばかりも言えないわけです。それでも人生の乾坤一擲の勝負であることには変わりはありませんが。さて、この両者の生き方には優劣をつけるわけではなくて、
(10)どちらも自分の状況をしっかりと見つめ、自分の意思で出した答えなのですから、どちらが正しいというわけでもないのです。運命を見つめるとは、運命によって作られた状況に従うという意味と、改善するという二つの意味があり、
(11)そのどちらか、あるいはそんな両極端を取らない選択肢を、自分の置かれた状況の中で主体的にしっかりと考えていく、これこそが「楽天知命」、おかれた状況をしっかり認識して、そこに安らぎを見いだすという、
(12)言葉の本当の意味なのだと、こういう事をこの句を見ながら延々考えていました。何がよくて何が悪いではなく、自分の状況をしっかりと見つめて出した答えなら、全て正しいのだと、そう思っています。これからもしっかりと学んでいきます。(了)
私は今回の第十回の鍛錬句会で、もう一つ特選に選んでいるものがあります。
その句は、渋谷さんの
「何のおまつりかは関係ない犬がきた」
です。
選評を書いているととても長くなるとわかりましたので、 先日 Twitter へツイートしたものをこちらにも書きます。
以下がツイートした本文の内容です。
(1)こんにちは。今回の鉄塊鍛錬句会で、特選として取ろうとしたものがもう一句ありました。ものすごい長文になるのでブログに選評を書かず、こちらに書きます。その句は渋谷さんの「何のおまつりかは関係ない犬がきた」です。以下、選評です。
(2)この句で思い浮かべる情景は、お祭りで生け贄にするために大切に育てられた牛が、お祭りとは関係のない犬がふらっとやって来たのが見えて、「いい気なものだ。俺はこれから生け贄にされるのに。。。」と思う、そんな光景です。こういう風景は『荘子』の中によくありまして、
(3)今回のたとえを用いますと、お祭りの牛は大切に育てられておいしいものを食べられるかもしれないが、やがて生け贄として死んでいく、それよりは餌も満足に得られなくても自由でいる犬の方がよい、そういう主張があるわけです。さて、
(4)『荘子』を更に読んでいきますと、この話には続きがありまして、『荘子』は単に自由な犬の側に軍配を上げることを述べていただけなのかというとそうではないのです。この例で言うと、お祭りの生け贄の牛になるか、自由でひもじい犬になるかは自分で決められるものではなく、
(5)運命、あるいは天命というもので決まるものであるということです。では一体、もしも荘子は生け贄の牛の立場になった場合はどうするのか、という所を考えてみますと、
(6)「自分が生け贄の牛として生まれついたのは天命だから、それをきちんと見つめた上で、自分の進退を考えよう」と思い、次のように過ごしていくわけです。二つほど考えますと、
(7)自分は自由な連中よりも大切に育てられ、いつもおいしいものがあるわけだから、それによって毎日毎日を楽しく過ごし、満たされた中で生け贄として殺される日を迎えよう、というのが一つの生き方で、もう一つは、
(8)正直な所自由な連中がうらやましい。だからお祭りの時に隙を見て他の牛たちと共に脱走を試みよう、という生き方です。牛の群れの突進は時には軍隊までも崩壊させる事がありますから、
(9)この牛の試みもそう無謀なものとばかりも言えないわけです。それでも人生の乾坤一擲の勝負であることには変わりはありませんが。さて、この両者の生き方には優劣をつけるわけではなくて、
(10)どちらも自分の状況をしっかりと見つめ、自分の意思で出した答えなのですから、どちらが正しいというわけでもないのです。運命を見つめるとは、運命によって作られた状況に従うという意味と、改善するという二つの意味があり、
(11)そのどちらか、あるいはそんな両極端を取らない選択肢を、自分の置かれた状況の中で主体的にしっかりと考えていく、これこそが「楽天知命」、おかれた状況をしっかり認識して、そこに安らぎを見いだすという、
(12)言葉の本当の意味なのだと、こういう事をこの句を見ながら延々考えていました。何がよくて何が悪いではなく、自分の状況をしっかりと見つめて出した答えなら、全て正しいのだと、そう思っています。これからもしっかりと学んでいきます。(了)
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