2014年1月25日土曜日

第二十回 研鑽句会

◆最高得点句
弟を裏切る兄それが私である師走  碧梧桐

◆コンプリート句
弟を裏切る兄それが私である師走  碧梧桐
正月の日記どうしても五行で足りるのであって  碧梧桐
霙れるそのうなぢへメスを刺させい  一碧楼

◆互選集計
(7点) 弟を裏切る兄それが私である師走 ◎◎○○○○●△△(コンプリート!)
(5点) 冬夜の一室の醜き女らよ許す ◎○○○△△
(4点) 闇から来る人来る人この火鉢にて煙草をすひけり ◎○○△
(3点) 正月の日記どうしても五行で足りるのであって ◎○○●△△△△(コンプリート!)
(3点) 火燵の上の履歴書の四五通 ◎○△△
(3点) 夜行列車一人の口のみかん汁垂れたり ○○○△△△
(3点) 冬の日のお前が泣くそのやうに低い窓 ○○○△△
(3点) 最後の話になる兄よ弟よこの火鉢 ○○○
(2点) 霙れるそのうなぢへメスを刺させい ◎◎○●●●△(コンプリート!)
(2点) ふくろうよ妻が一日寝てをり ◎△
(1点) 障子あけて雪を見る女真顔よ ○△△△△
(1点) お前の正直な日がくれて夏座布団 ○△△△△
(1点) 百合のゆうぐれが来るいつまで拗ねる ○△△△
(1点) さるすべり咲きひるなか電燈ともり ○△△
(0点) 反抗期で時にはなぐりたくもなるそのまなざし ○●△
( 1点) 炭の立ち消え妻を呼びたる ●△△△
( 1点) 靴磨き梅雨は仕事にならず墓参りにこの寡婦 ●△△
( 1点) 女の児真白いマント着て近より来る ●△
(無点) 砂山に日を浴びて師走の君と △△△
(無点) 畳に河鹿をはなしほうほうと言ふて君ら △△△
(無点) 冬の夜の我が持ちて人形の眼の動く △△△
(無点) 強い文句が書けて我なれば師走 △△
(無点) みなは寝し仏壇とぢてひと夜の蒲団に入る △△
(無点) 庭に下りて手を出して子野羊の頭を押すや △△
(無点)子ら迎へ火おもしろく彼の家この家 △△
(無点) 真赤なフランネルのきもので四つの女の児 △△
(無点) お前の歩むさくらの樹には桜の実 △△
(無点) 十三夜の酔ってゐる我は雨をついて出でけり △△
(無点) 庭師二日来て庭明るしかたばみ水霜の雫 △
(無点) 人のけはい暮方の降りて消ゆる雪 △
※以上全30句。特選(◎)2点、並選(○)1点、逆選(●)-1点として集計。△は無点。

◆作者紹介
【河東碧梧桐】
障子あけて雪を見る女真顔よ
火燵の上の履歴書の四五通
強い文句が書けて我なれば師走
最後の話になる兄よ弟よこの火鉢
弟を裏切る兄それが私である師走
正月の日記どうしても五行で足りるのであって

1873-1937 愛媛県生まれ。本名、秉五郎(へいごろう)。正岡子規門の高弟。高浜虚子と対立、定型・季語を離れた新傾向俳句を提唱。全国行脚して「三千里」「続三千里」をまとめた。のち自由律、ルビつき句など句風は変遷した。

【喜谷六花】
子ら迎へ火おもしろく彼の家この家
畳に河鹿をはなしほうほうと言ふて君ら
みなは寝し仏壇とぢてひと夜の蒲団に入る
庭師二日来てt庭明るしかたばみ水霜の雫
反抗期で時にはなぐりたくもなるそのまなざし
靴磨き梅雨は仕事にならず墓参りにこの寡婦

1877-1968 明治~昭和時代の俳人。明治10年7月12日生まれ。東京下谷の曹洞宗梅林寺住職。河東碧梧桐に師事。俳誌「海紅」に属し、自由律の革新派として活躍。

【小沢碧童】
砂山に日を浴びて師走の君と
さるすべり咲きひるなか電燈ともり
炭の立ち消え妻を呼びたる
百合のゆうぐれが来るいつまで拗ねる
ふくろうよ妻が一日寝てをり
十三夜の酔ってゐる我は雨をついて出でけり

1881-1941 明治-昭和時代前期の俳人。明治14年11月14日生まれ。河東碧梧桐に師事し、東京上根岸の自宅を骨立舎と命名して俳道場とした。「日本俳句」「海紅」で活躍。

【瀧井孝作(折柴)】
人のけはい暮方の降りて消ゆる雪
お前の正直な日がくれて夏座布団
庭に下りて手を出して子野羊の頭を押すや
真赤なフランネルのきもので四つの女の児
お前の歩むさくらの樹には桜の実
夜行列車一人の口のみかん汁垂れたり

1894年-1984年 日本の俳人、私小説作家。俳句を河東碧梧桐に師事し、小説を芥川龍之介、志賀直哉に兄事した。文化功労者。

【中塚一碧楼】
霙れるそのうなぢへメスを刺させい
冬の日のお前が泣くそのやうに低い窓
冬の夜の我が持ちて人形の眼の動く
闇から来る人来る人この火鉢にて煙草をすひけり
女の児真白いマント着て近より来る
冬夜の一室の醜き女らよ許す

1887-1946 明治-昭和時代前期の俳人。明治20年9月24日生まれ。新傾向自由律俳句をつくり、明治44年「試作」を刊行。大正4年河東碧梧桐とともに「海紅(かいこう)」を創刊、のち主宰。

以上、五名。

70 件のコメント:

  1. 21 弟を裏切る兄それが私である師走 (7点)
    ◎こんな兄に、私はなりたい。(古戸暢)
    ◎「裏切る」とあるからには相当なことなのであろう。ここは借金の踏み倒しではないかと想像した。いずれにせよ、ふてぶてしいまでの句調からは反省や後悔のようなものはまったく窺えない。困ったものである。(洋三)
    ○自嘲か自戒か。弟である自分からすれば、何言ってやがると思うが。(働猫)
    ○文士の姿が伝わってきます。「師走」というだけあって、来年以降もずっと裏切り続けるという決意とむなしさ。(水名)
    ○裏切りの覚悟か、それとも開き直りか。骨太なドラマを思わせる。(雪兎)
    〇このとってつけたような師走が意外にいい。帰省前に、あわただしさのなかでちらと回想してしまったのだろうか。自分もまた、弟に借りている3万円を返していないまま今に至る(地野)
    ●裏切りという言葉は、もっと大切に扱いたい(祖啓)
    △弟裏切っちゃった~ああ~なんていう嘆きなんかじゃないですよこれは。ほくそ笑んでいますね絶対。子供の頃からこの兄はそうだったんだと思います。詠み人は絶対に悪い子ちゃんだ。そして悪い子ちゃん程魅力があったりするから困ったものです。(小笠原玉虫)
    △どのような裏切りか誰もが気になるところだが、そこに師走という季を持ってくるセンスが凄い。(鴨芹)

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    1. 確かに取って付けた感のある「師走」ですが、「師走ならこういう事もあるだろう」という妙な説得力があります。
      師走は先延ばしにしていた問題に決着をつけるのを促す季節でもありますし。

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  2. 30 冬夜の一室の醜き女らよ許す (5点)
    ◎許す、と言い切るこの強さには、許されたい、という願いの強さが隠されている。この女は一人ではない。複数形の「ら」には、同じ時間のその空間にいる女たちを指し示さず、むしろその部屋で何度も呼びまぐわったさまざまな容姿の遊女たちか。誰を許し、誰に許され、誰を許せないのか。女はその問いかけにいつも答える。すなわち、わたしを許し、私に許され、私を許せないものたちが、女である。(地野)
    ○こうした主観の露出には、面白さを感じざるを得ない。(古戸暢)
    ○「醜き」は容姿を指しているのだろうか、それとも愚痴や不平不満を言う心を指しているのだろうか。恐らくは後者ではないかと考えた。それでも最終的に男は受け入れなければならない。そんな屈折した思いを表しているのではないだろうか。いずれにせよ、それは強い思いに違いない。(洋三)
    ○何だよこの上から目線!とも思うんだけど、好きだ、好きすぎる。いいですね。この傲慢さは非常に色っぽい。いいな~~~こういう言い切り型の句、あたいだって詠んでみたいよ!! 悔しい。クソックソッ!!(小笠原玉虫)
    △醜さは容姿のこととも考えられるが、夜の暖かな部屋で楽しく語らい、それぞれに眠ってしまったしどけない様子のことととるほうが美しいだろう。例えば酔って眠ってしまった家族であろうか。(働猫)
    △ここでいう醜さは内面のものかもしれない。(雪兎)

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  3. 20 闇から来る人来る人この火鉢にて煙草をすひけり (4点)
    ◎写生なのかもしれないが、人生のメタファーであるようにも感じた。自らが定点(火鉢)であり、そこを通り過ぎていく人々の姿を描写しているようでもある。「来る人」ばかりでは火鉢の周りがいっぱいになってしまう。実際には去る人も同じ数いるのだ。闇から来て闇へ去っていく。そうして私たちは結局一人なのである。(働猫)
    ○待合所のようなところを想像した。夜、火鉢の前で煙草を吸う人達。恐らくは皆、無言なのではないだろうか。「闇から」という言葉が異空間のような世界観を醸し出している気がする。また「来る人」の繰り返しも効果的で、映像として心に響いてくる。(洋三)
    ○闇から来る人はどんな人なのか、得体が知れない。しかもそれが次から次へとやってくる。怖い。なのにそこには暖かさがある。皆黙々と煙草を吸っているのだろう。(鴨芹)
    △次々に人がやってくるのはどんなシチュエーションなのでしょう。祝い事?それとも弔い?想像力がかき立てられます。(水名)

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    1. 何かの催しでのひとこまなのだろう。この火鉢があるところが、休憩所となっているのだ。男たちが吐き出す白い息と煙まで見えてきそうである。

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  4. 26 正月の日記どうしても五行で足りるのであって (3点)
    ◎リアルだ(祖啓)
    ○緊張感ある作品の多い今回の作品の中にあって、どこかユーモラスでさみしげ。カエサルの「来た、見た、勝った」のような力強さはなく、「食ったもの書くしかねえよな」みたいな自嘲気味なところにひかれました。(水名)
    ○この人はこのような「ツッコミ待ち」な句が結構あって、その点は自分も大きく影響を受けているように思う。(鴨芹)
    ●「あって」何だというのかわからない。(古戸暢)
    △誰も訪ねてこない、何もすることのなかった。そんな正月だったのだろう。寂しさを逆手に取った滑稽仕立ての句。(洋三)
    △例年の正月に比べて、何かさびしいところがあったのだろうか。(働猫)
    △むしろ一行で終わらなくてよかったとするべきか。(雪兎)
    △平和だと書くことってそんなにないですよね、分かります。「足りるのであって」という終わり方がなんかいい。(小笠原玉虫)

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  5. 6 火燵の上の履歴書の四五通 (3点)
    ◎他にもあるが火鉢の使い方がうまい。火鉢の達人である。(鴨芹)
    ○もやもやする(祖啓)
    △冬の就職活動は、なんだかみじめな思いが募るもの。火燵に入っていてものんびり気分ではあるまい。(洋三)
    △これは就活なのでしょう。なにも手を加えず書いたあたり、本当に就職する気があるのかどうか、うかがえません。寂しく笑うだけです。(水名)

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    1. 寒さが引き立つ調度品である。

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  6. 29 夜行列車一人の口のみかん汁垂れたり (3点)
    ○加わりたい(祖啓)
    ○夜行列車のあの独特な空気感がよく伝わってくる。今は夜行列車そのものがなくなりつつあるので、この先このような句が生まれることもないのだろう、と考えると寂しい。(鴨芹)
    〇いまもって長い旅の象徴であるような夜行列車。昔はよく利用した。この句の時代がいつか知らないが、あの、座っているだけのまぬけな時間をうまく言い得ていると思った。(地野)
    △視点の面白い句。見知らぬ人なのだろう。それでも場が和むのには十分だ。(洋三)
    △他人の様子であれば大きなお世話であるが、自分のことであると考えれば、一人さびしく夜行列車に乗っている様子を思う。風邪をひいてくしゃみをして鼻水が出てしまい面白い顔になることがあるが、そうした面白い顔を見せる相手がいないときにひどく孤独を実感するものだ。みかん汁もそのように感じるだろう。さびしい。(働猫)
    △果物の汁が口からこぼれるのは、軽めのタブーのようだ。(雪兎)

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    1. 自分のことを詠んだものか、他人のことを詠んだものか。一人旅の様子がよくでている。

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  7. 10 冬の日のお前が泣くそのやうに低い窓 (3点)
    ○窓の低さに何をみたか。(古戸暢)
    ○冬の暗い部屋で泣く女を思い浮かべた。小さくうずくまって泣くのだろう。やがて西日が女の身体の高い部分に射す。そうして初めて窓の低さに気が付いたのだ。泣かれるのは嫌なものだ。それに慣れていく自分にも耐えられなくなる。(働猫)
    ○いいですね。重々しい黒雲が空を覆う寒い冬の一日のイメージ。こういう冬の一日って子供の頃よく見ていたような気がする。そして私はそういう冬曇りが大好きなのです。ああそうだな、書きながら気付きましたが、この句から私が受けるきゅんとした感情は、個人的な郷愁なんだな。個人的な郷愁を選評で申し上げるの、どこまで許されるのか分かりませんが、非常に揺さぶられました。(小笠原玉虫)
    △実は状況がいまひとつ読み解けない。「お前」は窓の外にいるのか、中にいるのか。「そのやうに低い窓」とはどういうことなのか。ただ、それでも心情に訴えてくるものを感じるから不思議だ。(洋三)
    △低い窓には悲しみが似合う。(雪兎)

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  8. 16 最後の話になる兄よ弟よこの火鉢 (3点)
    ○何やら深刻な印象の句。「兄よ弟よ」が効いている。また「火鉢」からはその部屋の異様な熱気のようなものを感じる。
    ○自分にも生きるのが下手な兄がいるが、何年かごとに会えば、なんとなく兄弟だなあと感じるものだ。そしていつかこのような時を過ごすこともあるのかもしれないと思う。実際には話すことなど何もないのだが、その時の雰囲気はなんとなくわかる気がする。(働猫)
    ○どんな話なのでしょうか。兄と弟なのですから、真剣な話なのでしょう。その横にある火鉢。ここにも緊張感があります。(水名)

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  9. 5 霙れるそのうなぢへメスを刺させい (2点)
    ◎この男女の炎のような緊迫感と逃げ場のないような状況の描き方はすごい、と思いました。大好きな作品。(水名)
    ◎いいいいですね。みぞれ降る寒いある日の、熱い血が通っている白いうなじって感じ。メスを刺させろ、とは非常に色っぽい表現。リビドー詠むならこういう具合にしやしゃんせ、という、挑発だと思います、この句は。大好きすぎて悔しい。クソッ!!(小笠原玉虫)
    ○とてつもない若さを感じる。まさに暴走だ。(雪兎)
    ●耽美なのであろうが、どうしても好色な狒々爺が浮かんでよろしくない。「刺させい」がよくないのだろう。いやらしい。(働猫)
    ●過激と言えば過激だけど、強い感情が書かせた句という感じがしない。それが必ずしも悪いことではないのだろうけど。(鴨芹)
    ●なんだかわからないが、メスを刺させい、これは方言だろうか。刺させろ、かと思って読んだ。怖いながら気になる句(地野)
    △透き通るような白い肌を思い描いた。抑えきれない心情を「メス」に置き換えたのだろう。いずれにせよ、読み手の心を突き刺す句である。(洋三)

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    1. 私のように「若さの暴走」と取る者もいれば、働猫さんのように「好色な狒々爺」と取る人もいる…面白いですね。
      一碧楼の句は昔も賛否両論だったんじゃないかという気がします。

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    2. 地野さんと同じく、「刺させい」が難なのか気になった。

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    3. 上記、難⇒何です。失礼いたしました。

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    4. >古戸暢さん

      「刺させい」は単に口語表現なのではないでしょうか。
      いささか古い言い回しかもしれませんが、口語も時代と共に移り変わるものですから。

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    5. え、わたしは「刺させい」が好き。雑だけどこの雑さが衝動的で素敵。これは読み手が男かオンなかで受け取りかたがちがうかも、と、ふと思いました。わたしこんなふうに言われてみたい。

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    6. 「刺させい」時代劇で似たセリフを聞いたことがあります。「ええい、構わん!斬り捨てえい!」とか。

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    7. なるほど、口語かもしれませんね。何か別の単語かと考えてしまっておりました。

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  10. 23 ふくろうよ妻が一日寝てをり (2点)
    ◎ふくろうはおそらく、眠っている人々を今まで多く見て来たであろうから、眠りに関する相談をふくろうに持ちかけるのは正しいような気がする。(雪兎)
    △妻が風邪でもひいているのだろうか。夜になっても伏したままなのであろう。「ふくろう」に語りかける男の姿に哀愁を感じる。(洋三)

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    1. 句として完結していない印象を受けた。「寝てをり」の後に何が続くのか。

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    2. >古戸暢さん

      この句のように、言い切ってしまわないであえて流す書き方には、
      映像が途中で切られる感じがあって、それはそれで効果のひとつとしてもよいのではないでしょうか。
      いつも「~~している」とか「~~していた」ばかりではマンネリ化してしまいますから。

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    3. 海紅では「言い切った方がいい」と教わりました。この当時と現在とでは、考え方が違うのだと思いました。

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    4. 「妻が一日寝てをりふくろう」なら気になりませんでした。句意が変わりそうですが。

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  11. 1 障子あけて雪を見る女真顔よ (1点)
    ○この女性には雪を見なければならなかった理由があったのだろう。この行動の前に何があったのか想像したくなる。(雪兎)
    △雪を見る女の真顔に何を見たのか。美しさ。いや、恐怖に近いものではないだろうか。(洋三)
    △女の顔を盗み見ればいつだって真顔である。表情は他者のためにあるという割り切りが女性の凄味でもある。社会性が幼稚な男性は、こうした場面でそれを垣間見るたびに、恐怖を募らせるのである。(働猫)
    △「あら雪だわ」「おお雪か」なんて、大人の男女のちょっとのんびりした雰囲気が好きです。(水名)
    △確かに真顔でなければ絵にならない。(鴨芹)

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    1. 女の真顔に恐ろしさを感じるのは、私たちが男だからか。

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  12. 9 お前の正直な日がくれて夏座布団 (2点)
    ○句意はよくわからないが、惹かれる雰囲気がある。(古戸暢)
    △「正直な日」というのがわかりにくい。しかしながら、何故だかストンと胸に落ちる句である。(洋三)
    △きっといい座り心地だろう。(雪兎)
    △ちょっと見下してるような感じが何故か非常にツボでして。なんか好き。理由をはっきり述べられないのですがとても好きな句です。(小笠原玉虫)
    △作者の中にある感情は葛藤なのだろうか。取り残されたように部屋に一人居る姿が想像出来る。(鴨芹)

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  13. 18 百合のゆうぐれが来るいつまで拗ねる (1点)
    ○六月くらいのむうっと暑い夕暮れのイメージ。百合からの連想で、水気を帯びた白い肌のいい匂いの美女が傍にいる光景も浮かびます。そして美女はふくれている。いいですね、非常に色っぽい。悩ましい六月の夕暮れ、こんなふうに詠んでみたいものです。(小笠原玉虫)
    △「百合のゆうぐれ」とは奇妙な表現に感じたが、面白いとも思った。(洋三)
    △きっと百年だろう。漱石的に考えて。(働猫)
    △どんなことになろうと、百合の夕暮れは美しい。(雪兎)

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  14. 8 さるすべり咲きひるなか電燈ともり (1点)
    〇昼につけっぱなしの電燈に目が行くには、色々なものに移る目線の中に、ある種のコントラストが必要ではないか。さるすべりの桃色の鮮やかさは、どこかでその対極にある暗さを引き立たせる気がする。
    (地野)
    △日の当たらない暗い部屋なのだろうか。紅い「さるすべり」がなんだか妖しい雰囲気を醸し出している。(洋三)
    △あ、これ、スッゴく好きです。真夏の真昼の、まぶしすぎる日差しって、耳がキーンとするような静けさがあって、あのじりじり、キーンの孤独感がもう好きでたまらないのです。燃えるように咲くさるすべり、往来が明るすぎて家の中が暗く感じられて電燈をつけたのでしょう。夏が恋しくなる佳句です。(小笠原玉虫)

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    1. 「ひるなか」は今も使う語なのだろうか。

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  15. 22 反抗期で時にはなぐりたくもなるそのまなざし (0点)
    ○かけがえの無い存在(祖啓)
    ●逆選が選べない!なのでほとんど言いがかり的にこちらに。ほかの句に比べてちょっとまんますぎるかなと思いました。お子さんを詠んだ句かな。近い関係の者を詠むときってストレートになりすぎるのかもしれませんね。(小笠原玉虫)
    △ストレートな句。これぞ自由律の醍醐味。(洋三)

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    1. 状況説明文のように思える。

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  16. 13 炭の立ち消え妻を呼びたる ( 1点)
    ●何度も読んだが、やはりそのままだ。わざわざ句にするぐらいだから、作者はこのシーンが気に入っているのだろうが、もう少しありふれた現実から「ハズして」欲しい。(雪兎)
    △とりあえず呼んでみる。ただこれだけの句なのにストンと胸に落ちた。私にも覚えがあるからだろう。(洋三)
    △妻はもういないのに、と読むと哀しい。(働猫)
    △何故妻を呼んだのか。そこを考え始めるといろいろなことを考えさせられる。(鴨芹)

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    1. 採り損ねたがいい句。少し足らない感じもするが。

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  17. 27 靴磨き梅雨は仕事にならず墓参りにこの寡婦 ( 1点)
    ●ちょっと説明的すぎるような気がしました。靴磨きと墓参りという組み合わせは面白いと思いました。(水名)
    △墓参りに来ていた母子の句だと思った。(洋三)
    △寡婦の仕事が靴磨きなのだろうか。別人か。靴磨きというと少年のイメージがあるが、寡婦の仕事として一般的だったのか。(働猫)

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    1. 冗長にすぎたか。

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    2. どこが句の中心なのかわからないといった印象。
      靴磨きと寡婦のつながりもいまいち見えてこない。
      ただ、「イメージを錯綜させる」という手法は自由律にしかできないかもしれないので、覚えてはおきたい。

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    3. 恐らく、これも「無中心」の句だと思います。「靴磨き~」と「墓参り~」で中心点が分かれています。雪兎さんのおっしゃる通り、自由律でしかできませんよね。たまにはいいかも。

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    4. 覚えられないのが難点です。

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  18. 25 女の児真白いマント着て近より来る ( 1点)
    ●何故だか温かな光を感じる句。恥を忍んで言えば「女の児」が天使のようさえ思えてしまった。そのままの句なのにも関わらず、どうしてそこまで思ってしまうのか。不思議な句である。ここは敢えて逆選でいただき、他の方の意見を聞くこととしたい。(洋三)
    △今マントというとヒーローとか怪盗とか特別な人が着用するイメージだけど、この当時は普通に使われていたようで、個人的には大正から昭和初期の雰囲気を強く感じさせられることばのひとつ。(鴨芹)

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    1. 採り損ねたがいい句。洋三さんと同様に、温かなものを感じた。理由は特に思いつかない。そういう句なのだろう。

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  19. 3 砂山に日を浴びて師走の君と (無点)
    △「師走の君」とはどういう意味なのか。忙しいという意味ではないだろう。一読して決別をイメージしてしまったが、どうだろう。(洋三)
    △この詠み人にしては珍しいような、さわやかな句だなと思いました。好きだけどこのかたらしくないな、だから気になる、みたいな句です。(小笠原玉虫)
    △口語自由詩への強い興味があるように感じられる。(鴨芹)

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    1. 砂山を想像できなかった。砂場でつくった山か、もっと大きな砂山がたまたまあるのか。

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  20. 7 畳に河鹿をはなしほうほうと言ふて君ら (無点)
    △想像するだけで楽しそうな景である。可笑しい。(洋三)
    △「ほうほう」が吉田戦車の絵で思い浮かべられた。ほうほう。ほうほう。(働猫)
    △最後の「君ら」が呼びかけなのかどうなのか、おかしいです。(水名)

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    1. 現代にいたるまでの擬音語の変遷が気になる。

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  21. 15 冬の夜の我が持ちて人形の眼の動く (無点)
    △恐らくは、そういう仕掛けの人形なのだろう。だが、そう思ってもなお不気味さは立ち消えない。日常における非日常的な出来事。(洋三)
    △傾きによって目を閉じる人形なのだろう。オカルトな意味で読む人はまさかいないとは思うが。(働猫)
    △いいですね。昭和の頃よくみかけた、目を閉じる人形なのかな。あれを何となく手にとって、目を閉じさせたりしてる静かな夜って感じがしますが、どこかホラーっぽい印象もあり。冬の夜に何か思うところがあり、そのせいで人形が怖く見える、みたいなことだったら面白いなと思います。はっきり述べないけれど、心の中には一筋縄ではいかない感情がありそう。物語性に惹かれる句です。(小笠原玉虫)

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    1. からくりがほどこされた人形ではなかった、と読んでも面白い。もとい怖い。

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  22. 11 強い文句が書けて我なれば師走 (無点)
    △一年最後の月、それは会心の出来であったのだろう。文字通り力強い句。(洋三)
    △自分にしっくりくる口調や言葉選びにぬかりなくやっているようで、この自意識の強さが俳人らしくて良い(地野)

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  23. 12 みなは寝し仏壇とぢてひと夜の蒲団に入る (無点)
    △仏壇の前では、人は素直になれるものではないだろうか。心の整理のひととき。(洋三)
    △静かな夜の雰囲気が好き。みんないるんだけど先に寝ちゃって、ぽつんと自分だけ起きてるのってなんかいいですよね。共感を覚えました。日常のほんの一瞬を切り取ったような句は非常に好みでもあります。(小笠原玉虫)

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    1. 仏壇は閉じられるものだったか。我が家では開きっぱなしである。

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  24. 14 庭に下りて手を出して子野羊の頭を押すや (無点)
    △映像として頭に浮かぶ句。ややスピード感に欠けるのが気になるが、動きを分割することで力強さが増している。(洋三)
    △わかります。猫の額も押したくなる。(働猫)

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    1. ゆっくりとした景。押したい気持ちはわからない。

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  25. 17 子ら迎へ火おもしろく彼の家この家 (無点)
    △「彼の家この家」が効いている。近所の家々を巡り歩く子供たちの姿が目に浮かぶようだ。(洋三)
    △死がまだ理解できていなかったころ、確かに盆提灯が回ったりする様子を面白く感じたものだ。(働猫)

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    1. 「おもしろく」がないままに、おもしろさを出せればなおよい。

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  26. 19 真赤なフランネルのきもので四つの女の児 (無点)
    △印象明瞭な句。対象に対する純粋な想いを感じる。(洋三)
    △子どもに対しては他のものを見る時とは違った目線を持っているように感じる。(鴨芹)

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    1. 座敷童のようで可愛らしい。

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  27. 24 お前の歩むさくらの樹には桜の実 (無点)
    △単なる写生ではなく暗示性を持つ句のように思えた。(洋三)
    △「さくら」と「桜」の使い分けをどう捉えるか。(鴨芹)

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    1. 「お前の歩む」と「さくらの樹」の関係性がいまいちわからなかった。

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  28. 28 十三夜の酔ってゐる我は雨をついて出でけり (無点)
    △まだまだ行けるといったところか。「十三夜」が効いている。勢いを感じる。(洋三)
    △酔っているのだからしかたがないのだが、風邪をひくパターンである。心配ですね。(働猫)

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  29. 2 庭師二日来て庭明るしかたばみ水霜の雫 (無点)
    △これは取り合わせの句なのではと思った。手入れをしてもらった庭の明るさと「水霜の滴」の輝き。そして恐らくは、いわゆる無中心の句なのだろう。(洋三)

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    1. 盛り込みすぎたか。景は浮かぶ。

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  30. 4 人のけはい暮方の降りて消ゆる雪 (無点)
    △「人のけはい」を感じて外を見れば、淡い雪が降っていたということだろうか。静かな印象の句。(洋三)

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    1. 音のない句。悪くはないと思う。

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