2014年12月31日水曜日

鉄塊第七回VT句会選句選評結果



▽最高得点句

剥製の硝子の眼玉冬きたる (12点)【小笠原玉虫】



▽部門ごと上位句
 
【自由律俳句】(3句)
受け継がぬ家を掃き清めている    ( 8点)【このはる紗耶】
夕日揺らして焼芋屋来る       ( 7点)【タケウマ】
葱太ければそれでよゐ        ( 6点)【さゆり】



【定型俳句】(5句)
剥製の硝子の眼玉冬きたる      (12点)【小笠原玉虫】
街灯をにじませて居りどぶの湯気   ( 5点)【前田_獺太郎】
トランプに白紙のカード冬薔薇    ( 4点)【鈴木桃宙】
禿頭にのせる乳房や冬の月      ( 4点)【タケウマ】
嫌はれて捨てられてまだ葱でゐる   ( 4点)【さゆり】



【題詠句(兼題「宴」)】(3句)
祝宴の廊下の闇を冬といふ      ( 8点)【菜月】
ゆうべのビールあおって宴のあと   ( 3点)【前田_獺太郎】
宴果てもう会わぬ背が白い      ( 3点)【畠働猫】



【コンプリート句】(◎と○と●のすべてを獲得した句)(0句)
該当句無し



▽個人別合計上位者

菜月     (13点)
小笠原玉虫  (13点)
さゆり    (12点)
タケウマ   (12点)
鈴木桃宙   (11点)
前田_獺太郎  (10点)
このはる紗耶 (10点)

 


▽互選集計結果

剥製の硝子の眼玉冬きたる             (12点)◎○○○○○○○○○○△△
受け継がぬ家を掃き清めている           ( 8点)◎○○○○○○△△
祝宴の廊下の闇を冬といふ             ( 8点)◎○○○○○○△△△
夕日揺らして焼芋屋来る              ( 7点)◎◎○○○△△
葱太ければそれでよゐ               ( 6点)◎○○○○△△
男を生むいつか私も姑になる            ( 5点)◎○○○△△△
本を開けば呼ばれる                ( 5点)○○○○○△△△
遅れてきた男が傘を持っている           ( 5点)○○○○○△△
街灯をにじませて居りどぶの湯気          ( 5点)◎○○○△△△
満ちて星々は裸だ                 ( 4点)○○○○△△△△
トランプに白紙のカード冬薔薇           ( 4点)◎○○△
禿頭にのせる乳房や冬の月             ( 4点)○○○○○●
嫌はれて捨てられてまだ葱でゐる          ( 4点)◎◎△△
死に場所も選べないポインセチアが真つ赤      ( 3点)◎○△△△△△
「一口いる?」のスプーンが性の目覚め       ( 3点)○○○△△△
猫行く道を落葉行く                ( 3点)◎○△
透明な花の散る音星月夜              ( 3点)○○○△△
手袋のグーチョキパーのもどかしさ         ( 3点)◎○△△
ゆうべのビールあおって宴のあと          ( 3点)○○○△△
宴果てもう会わぬ背が白い             ( 3点)○○○△△
次の事故を右に曲がる               ( 2点)○○△△
病気切り取ってくれた君ごと捨てる         ( 2点)◎△△△
あばかれて空は午後五時のサイレン         ( 2点)○○△△
ああやはりそういうさだめなのですね        ( 2点)○○△△△△
冬の星優しき人でありなさい            ( 2点)◎△△
君の中でふやけし指や狂い花            ( 2点)○○△
ここに愛がある冬日に入る素足           ( 2点)○○△△
マリッジブルーの最中や兎抱く           ( 2点)◎△△△△△
カンテラに心臓といふ火や冬至           ( 2点)○○△△△
アルパカも牛も反芻ばかりしている宴だ       ( 2点)◎△△
さかる宴の二人無口な               ( 2点)○○△△
訓読みは切なさのあり宴かな            ( 2点)◎△△
空っ風が責める裏切り者でいる           ( 1点)○○●△△△
グラスからこぼれ落ちたる冬の夜          ( 1点)○△
柚子の湯やカピバラたちの菩薩めき         ( 1点)○△△△
咳をしてあしたへ歩く草鞋編む           ( 1点)○△△△
冴ゆる夜の宴に顔のない男             ( 1点)○△△
となりの宴だれか叱られている           ( 1点)○△△△
ふりおつる宇宙透視図 雪の宴             ( 1点)◎●△△
霜柱踏み踏み宴より帰る              ( 1点)○△△△
雪見風呂宴はカラオケの時間            ( 1点)○△△
寂しさうな人から宴に酔ひにけり          ( 1点)○△△
文庫本深夜古書店血の指紋             ( 0点)○○●●△△△△
へこんだら倒れたままだ缶ビール          ( 0点)○●△△
酒呑んで話したいひとり秋の宵           (-1点)●△△
菊の宴オール下ネタ一本勝ち            (-1点)●△△
夭折や詩人の書斎知の宴              (-1点)●△△
笑顔あふれる鬱病のひとでした           (-2点)○●●●△△
元カノに似た店員のいる喫茶店にてカフェラテを注文す(-3点)◎●●●●●△
भोज॥आप मौत की दुल्हन खाने के लिए नहीं करना चाहता था  (-3点)○●●●●△△△△△△△
イルミネーションの光が入る部屋からツイート    ( 無点)△△△△
狩ののち宴よ食えよ飲めよ酔えよ          ( 無点)△△
精一杯の恨み込めてか骨の白い           ( 無点)△△△△△
冬の昼日中現実味のない光だ            ( 無点)△△
眼覚めて終ひの棲家の寒夜かな           ( 無点)△△△
夕闇も時雨れて晴れてサドル拭く          ( 無点)△△△
見上ぐればその名よ吐息ふゆ銀河          ( 無点)△△△
村の宴義兄にストング剥がされる          ( 無点)△△△
傘の中雨の宴も佳境なり              ( 無点)△△
どこかの宴会の声にキライを混ぜる         ( 無点)△△
終わらぬ宴の暁の夢                ( 無点)△△
寂寥抱えて宴の散会                ( 無点)△△
バッカスの好くも厭うも宴かな           ( 無点)△△

 
 
(以上、63句)
※特選(◎)2点、並選(○)1点、逆選(●)-1点として集計。





▽作者発表(投句順)

上から次の順に掲載
「自由律俳句」
「定型俳句」
「題詠句(兼題「宴」)」


【馬場古戸暢】
猫行く道を落葉行く
夕闇も時雨れて晴れてサドル拭く
終わらぬ宴の暁の夢

 

【さゆり】
葱太ければそれでよゐ
嫌はれて捨てられてまだ葱でゐる
訓読みは切なさのあり宴かな



【畠働猫】
次の事故を右に曲がる
ここに愛がある冬日に入る素足
宴果てもう会わぬ背が白い



【前田_獺太郎】
あばかれて空は午後五時のサイレン
街灯をにじませて居りどぶの湯気
ゆうべのビールあおって宴のあと



【北大路京介】
病気切り取ってくれた君ごと捨てる
咳をしてあしたへ歩く草鞋編む
菊の宴オール下ネタ一本勝ち



【千花】
本を開けば呼ばれる
透明な花の散る音星月夜
傘の中雨の宴も佳境なり



【このはる紗耶】
受け継がぬ家を掃き清めている
柚子の湯やカピバラたちの菩薩めき
雪見風呂宴はカラオケの時間



【Keiten666】
「一口いる?」のスプーンが性の目覚め
君の中でふやけし指や狂い花
村の宴義兄にストング剥がされる



【えーき】
元カノに似た店員のいる喫茶店にてカフェラテを注文す
カンテラに心臓といふ火や冬至
寂しさうな人から宴に酔ひにけり



【琳譜】
精一杯の恨み込めてか骨の白い
見上ぐればその名よ吐息ふゆ銀河
ふりおつる宇宙透視図 雪の宴



【菜月】
死に場所も選べないポインセチアが真つ赤
マリッジブルーの最中や兎抱く
祝宴の廊下の闇を冬といふ



【鈴木桃宙】
男を生むいつか私も姑になる
トランプに白紙のカード冬薔薇
アルパカも牛も反芻ばかりしている宴だ



【笛地静恵】
ああやはりそういうさだめなのですね
文庫本深夜古書店血の指紋
夭折や詩人の書斎知の宴



【小澤温】
満ちて星々は裸だ
眼覚めて終ひの棲家の寒夜かな
भोज॥आप मौत की दुल्हन खाने के लिए नहीं करना चाहता था



【寺田人】
狩ののち宴よ食えよ飲めよ酔えよ
冬の星優しき人でありなさい
霜柱踏み踏み宴より帰る



【武里圭一】
冬の昼日中現実味のない光だ
酒呑んで話したいひとり秋の宵
寂寥抱えて宴の散会



【風呂山洋三】
笑顔あふれる鬱病のひとでした
グラスからこぼれ落ちたる冬の夜
さかる宴の二人無口な



【木曜何某】
イルミネーションの光が入る部屋からツイート
へこんだら倒れたままだ缶ビール
どこかの宴会の声にキライを混ぜる



【タケウマ】
夕日揺らして焼芋屋来る
禿頭にのせる乳房や冬の月
冴ゆる夜の宴に顔のない男



【吉村一音】
遅れてきた男が傘を持っている
手袋のグーチョキパーのもどかしさ
となりの宴だれか叱られている



【小笠原玉虫】
空っ風が責める裏切り者でいる
剥製の硝子の眼玉冬きたる
バッカスの好くも厭うも宴かな



以上21名





▽以下、コメント欄に参加者選評を掲載する。

64 件のコメント:

  1. 剥製の硝子の眼玉冬きたる (12点)◎○○○○○○○○○○△△

    ◎生命の温もりは消え去って透徹とした鋭さを湛えた剥製の義眼がまさに冬という季節を具現化しているという発見。すごく好きです。(獺太郎)

    ○じろり。思わず目が合う。普段は見てもいないのに。大掃除のスナップ。(静恵)

    ○冷たい空気感を覚えます。(洋三)

    ○寒い。(古戸暢)

    ○季節によって硝子の目玉に質感の変化があるんだろうな。その変化で冬を感じる視点が良いです。(さゆり)

    ○剥製という死してなお形のある、言ってしまえば奇妙なものと冬の到来を取り合わせることで、硝子の目玉の冷ややかな美しさが際だっています。(菜月)

    ○作り物の、虚ろな眼球。命の消えた身体と合わさって、冬の虚無感を呼び覚まします。(このはる紗耶)

    ○硝子の目玉に冬を感じました。合っていると思います♪(タケウマ)

    ○剥製は悲しいですよね。朽ち果てることをさせてもくれない体温を持たないものの義眼が更に冷たくなっていく。視点が凄いなぁと思いました。(琳譜)

    ○冬の冷たさと共に、命を失った物のピンと張りつめた痛みを感じました。(千花)

    ○どこにも視点の定まらぬようでもあり、一点を凝視しているようでもある、ガラスの眼玉。命のないはずの剥製の眼玉に光を感じるのは、冬の冷たさの中でこそかもしれない。(一音)

    △剥製の硝子の眼玉がきりりと動いているように感じぞくっとする。まるで生きているような剥製に、作者は冬を感じたのでしょう。「冬きたる」も良いけど、個人的には硝子の眼玉が「冴ゆる」のほうが好きだなあ。(桃宙)

    △語選びがすべて寒々とした冬に向かう景にふさわしいと思います。(働猫)

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  2. 受け継がぬ家を掃き清めている ( 8点)◎○○○○○○△△

    ◎慈しむ心が響く。現状の住宅事情、家族関係、日本人の心がある。美しい句です。(さゆり)

    ○これから増えていくだろう景。(古戸暢)

    ○いいですね。私事になりますが、このようなことが既に他人事でない事態になっておりまして、大変共感いたしました。親の家の片付けは、非常に気持ちがざわつくものですが、この詠み人は受け継がぬ、ときっぱり決めて、静かな気持ちで掃き清めているのだなと思いました。わたし自身はいまその境地にははるか遠いところにおりますが、悔いなきよう取り組もうと気持ちを新たにしました。言い過ぎず、すっとまとまっているところもとても美しい。好きな句です。(小笠原玉虫)

    ○自分はこの家を出て行くけれど掃除をして清める。年末の感じもして良いです。(木曜何某)

    ○子供である時間を過ごした家とのお別れの儀式でしょうか。いろいろな思い出を確かめるように胸に刻んでいく時間をこういう言葉にされているのが凄いです。(琳譜)

    ○静かな余生を暮らす老人が、これも静かに掃除をしている。そんな情景が浮かびました。(武里圭一)

    ○「立つ鳥跡を濁さず」に似た、礼儀正しさが清々しいです。(千花)

    △なんにしても、掃除をするとすっきりしますね。(タケウマ)

    △なんだかドキュメンタリー番組で見たような気がします。限界集落、少子高齢化、相続税制改定などなど。「現代」の縮図として効果的に切り取られた一場面であると思います。(働猫)

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  3. 祝宴の廊下の闇を冬といふ ( 8点)◎○○○○○○△△△

    ◎ちょっとトイレ行ってくる、なんて廊下に出た瞬間の、温度と明度の落差。祝いの空気まで遮断されて、瞬時に訪れる闇は、人生の「冬」なのかもしれないと思いました。(千花)

    ○廊下がいいです。動と静、光と闇。そこに冬をみる、わかります。(さゆり)

    ○いいですね。宴のさみしさを詠んだ句がいくつか見られる中、こちらは飛び抜けて優れていると感じました。ちょっと失礼……と、トイレでしょうか、それとも先に帰るところでしょうか、宴の会場から出て、廊下が寒い。ぶるっと身震いをする。明るく賑やかな宴の会場とはちがって、暗く寂しい廊下にしんとした寒さを感じたのでしょう。宴そのものを虚しいと言ったり、宴の終わりがさみしいというよりずっと自然で、かつ切り込んでくるような鋭さを感じました。素晴らしい。佳句と思います。(小笠原玉虫)

    ○二重の意味の「温度差」を上手く詠み込んでいる。正直特選と迷いました。(獺太郎)

    ○少し明かりが漏れていて薄暗い廊下は肌寒い。それを冬だというのがとてもいい(木曜何某)

    ○部屋の中と廊下の温度差がくっきりしています。(Keiten666)

    ○あたたかな祝宴会場から一歩出ると、ひんやりとした廊下。そのひんやりが酔った頬に心地よくもあるが、廊下の先を見ると、先の見えない暗闇。行く先に待つ「冬」を暗示するかのようにも思える。(一音)

    △思いを告げられぬまま、相手は結婚してしまったのかな、と。しかも伴侶も自分の大事な友人であったり。理由をつけて中座して出た暗い廊下に、やりきれなさが溜息となって吐き出されるかのよう。(このはる紗耶)

    △祝宴に気乗りしていないのでしょうか。(タケウマ)

    △ああこれは美しい。盛り上がる個室をよそに廊下はしんと冷え切っている。ただし北海道共和国では廊下といえど暖房がなければ人は遭難し凍死するため、廊下もあったかくします。(働猫)

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  4. 夕日揺らして焼芋屋来る ( 7点)◎◎○○○△△

    ◎焼芋屋をとめたことがない。(古戸暢)

    ◎ゆらゆら揺れてる夕日を背景に焼芋屋が来る景を思い浮かべました。系の描写がちゃんとできてる句かなと思いました。(えーき)

    ○リヤカータイプか、はたまた軽トラか。焼芋の熱々ほっこり感と、夕陽の赤さが共鳴して、冬の郷愁を誘います。独特の呼ばわる声まで聞こえてきそう。(このはる紗耶)

    ○「夕日揺らして」がうまい。焼芋屋の湯気、香り、いしや〜きいも〜の声、焼芋屋を待つ時のそわそわした気持ち…などが「夕日揺らして」という表現に結びつきます。(桃宙)

    ○夕暮れの焼芋屋の声は、暖かくもあり、物悲しくもある。その声が「夕日揺らして」という表現がいい。遠くから声だけが聞こえ、だんだんと近づいてくる様子が想像できる。(一音)

    △いいですね。昭和の感じがします。冬は厳しい季節だけど、焼芋屋さんみたいなほっとする存在もたくさんいるように思います。サンタクロースとか。子供時代の楽しい冬を思い出しました。三節に分かれて意味もリズムもトントントンとくるところも美しいと思いました。(小笠原玉虫)

    △昭和の町並み・風景で想像しました。(働猫)

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  5. 葱太ければそれでよゐ ( 6点)◎○○○○△△

    ◎素敵な句で好きな句です。たったこれだけの中にたくさんの言葉を見つけました。綺麗で力強い言い切り。(琳譜)

    ○何がいいのかわからないが面白い。(洋三)

    ○細い葱も薬味とかにはいいですよとか思いましたが、何度か読んでいるうちに太ければよいような気がしてきました。リズムに説得力があります♪(タケウマ)

    ○一見すべてが消沈したように見える冬において、太い葱の白さと瑞々しさの放つ根源的な説得力。これでいいのだ。(獺太郎)

    ○焼き鳥についている葱が太いと、幸せな気持ちになります。たまに、ペラペラな葱ってありますよね。(桃宙)

    △あまりに潔く、思わず頷いてしまう句。丁寧に育てられた松本一本葱を思い出します。(このはる紗耶)

    △葱の太さは何を象徴するのだろう。それがわかればもう少し読めるのだろうが、現時点では「あ、いいんですね」としか。(働猫)

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  6. 男を生むいつか私も姑になる ( 5点)◎○○○△△△

    ◎自らの運命について考えた瞬間。深い。(洋三)

    ○気が早い。(古戸暢)

    ○新しい命の生誕とその命がまた産む者を同時に描くことで、生命の営みが無限に続いていく様子が表れていて良いと思いました。(菜月)

    ○息子に結婚相手が見つかればって話ですけどもね。血のつながりのない関係の連続が感じられました。(北大路京介)

    △こうならなければという考えにとり憑かれてしまっている女性でしょうか。希望に溢れるというよりは、うっすらとした心の闇を感じます。(このはる紗耶)

    △その子が結婚するかしないかはまだわからないような気もしますが、ひとつの覚悟のようなものでしょうか。(タケウマ)

    △女性らしい視点ですね。現在の婚姻制度が存続していればの話ですが。自分の行く末を思うことで姑を許そうという気持ちなのかもしれないですね。封建社会的な家柄の良さを感じました。(働猫)

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  7. 本を開けば呼ばれる ( 5点)○○○○○△△△

    ○読書が好きな人は実感がある。作品に呼ばれているのだ。妻に呼ばれている、というような解もあると思うが、そちらはとらない。(静恵)

    ○日常のリアルが感じられます。(さゆり)

    ○物語の世界に入り込むことでしょうね。
    ディズニーのアニメような本の中に吸い込まれる画が目に浮かぶ句ですね。(北大路京介)

    ○もう……(木曜何某)

    ○読書をしようとしたら誰かに呼ばれる、というのではなく、敢えて「本の中から呼ばれる」みたいな、ネバーエンディング・ストーリー的な解釈をすると楽しいです。(Keiten666)

    △何に呼ばれるかがポイントですね♪(タケウマ)

    △読書好きな方なのでしょう。本を開くとその世界に入ってしまう。その本の世界では自分はどういうポジションなのでしょうか。想像するのは楽しいですね。(桃宙)

    △生活の不満、愚痴であろうか。(働猫)

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  8. 遅れてきた男が傘を持っている ( 5点)○○○○○△△

    ○え? 外、雨降ってんの?(洋三)

    ○遅刻しなかった者達がずぶ濡れになっている姿が想像できる。雨の日のデートで彼女だけ濡れているのかもしれない。(北大路京介)

    ○遅れてきたくせに、、そう思われるのでしょうね、、、私はきっとこんな人が好きです。嫌いにならいのは私の趣味だけでなく「持っている」の表現に留めたところが大きいのでしょう。素敵です。(琳譜)

    ○時間にはルーズなのに用意周到、ちゃっかりしていて好きです。(千花)

    ○遅刻する者は総じて屑だ。待つ人の気持ちを想像できない人間だからだ。この句ではさらに「傘を持っている」と、自分だけ天候の変化に対応しようという利己心をも突いている。非常に洞察力があると思う。待たせている人のことより、自分が雨に濡れることを気にしているのだ。そんな余裕があるなら一分一秒でも早く来い。屑め。冷徹な屑観察眼である。慧眼と言える。素晴らしい。(働猫)

    △はやく来ればよかったのにということでしょうか。(タケウマ)

    △ひとつの真理ですね。(Keiten666)

    返信削除
  9. 街灯をにじませて居りどぶの湯気 ( 5点)◎○○○△△△

    ◎最初は温泉街と読みましたが、どぶですからソープ街のほうがよいかもしれません。どぶから上がる湯気にネオンの光が反射して不思議な色合いになっているのでしょう♪ 場末の美でしょうか♪(タケウマ)

    ○子供の頃によく見た。(古戸暢)

    ○この世界詠んだことがあります。湯気を入れたかったのに入れる力がありませんでした。どぶにくっつけて詠まれた力がお見事です。(琳譜)

    ○歓楽街の賑やかな通りから一本路地へ入る。足元も心許ない薄暗い道。ぼんやり灯る街灯の下、どぶから立ち上る湯気。その湯気の元をたどれば、はしゃいでいた自分にたどり着くのかもしれない。(一音)

    △場末っぽいムードが非常に好みです。うーん、でもどぶの湯気って外灯まで届くかな!? と、細かいところに引っかかってしまいました。(小笠原玉虫)

    △わかるわかる。硫黄のようなにおいがするんですよね。(桃宙)

    △視点が湯気よりも下から街灯を見上げていることに注意したい。詠者は路上に寝そべっているか、どぶの中にいるのだ。いずれにせよ飲み過ぎであろう。(働猫)

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  10. 満ちて星々は裸だ ( 4点)○○○○△△△△

    ○言われてみれば当たり前のことなのだろうが確かになと思わされました。(えーき)

    ○言われてみればその通り。無駄のなさに惹かれました。(寺田人)

    ○星々が服を着ていない発見がすばらしい。「星星も」としてたら特選にしてました。(北大路京介)

    ○本当だ。冬に着込んでいて、空を見上げれば星々は裸。(木曜何某)

    △何が満ちたかというのがポイントでしょうか? ちょっとヒントが足りない気がします。(タケウマ)

    △いいですね。わたくしが主催しております「新宿屑句会」に投句されました名句、「睦む雲去りレグルスの真っ裸」以来、輝く星を裸と表現することの美しさに気付かされてしまったわたくしです。寒空に輝く星は確かに裸の感じがする。空一面の星々に、満たされているのはわたしたちの方なのかもしれませんね。実に美しい句です。(小笠原玉虫)

    △ちょっと寒そうですね。(Keiten666)

    △これは「星」が裸なのではなく、星から裸への視点の移動なのだろう。望遠鏡で星を眺めている最中にふと向かいのマンションの窓が気になり見てしまったとか。部屋の中で星見る初心な青年を誘惑する痴女がいるとか。素直な読みをするならば、美しく輝く星々は着飾ったりしないという気づきなのだろうが。それではアフォリズムになってしまう。(働猫)

    返信削除
  11. トランプに白紙のカード冬薔薇 ( 4点)◎○○△

    ◎トランプの予備のカードのことだと思います。トランプのマークは四季をあらわしていて冬はスペード。スペードのカードを無くしたのかもしれませんね。トランプと薔薇で『不思議の国のアリス』のような世界もちょっと見えました。白紙のカードは何かが抜けだしたあとのカードかも。(北大路京介)

    ○まず使われることのない予備のカードがゲーム中に紛れ込んでいた時と、枯れ庭に凛と咲くバラのシンクロと対比がぴしっと決まった。(獺太郎)

    ○なんとなくお正月の景として見る。親戚が集まって、子供たちは真新しいトランプを開けて遊び始める。ババ抜きなのにジョーカーが2枚、予備の白紙のカードも2枚入れたまま配ってしまった。全員のカードがきれいになくなって誰も敗者のいなかった小さなころの優しい思い出。(働猫)

    △スペアのカードですね。冬薔薇とあっているかどうか判断がつきませんでした。(タケウマ)

    返信削除
  12. 禿頭にのせる乳房や冬の月 ( 4点)○○○○○●

    ○いいなあ。露天風呂。あたたかい。禿げ頭。乳房。満月。四つの円。小島功の漫画の絵が浮かんだ。(静恵)

    ○何コレ面白い。(洋三)

    ○今回特に好きな句は二句で、そのうちのひとつがこちらです。何ぃ!? 何やっとんねんと笑いました。「禿頭」は某自由律俳句の会の代表で想起(笑)。頭におっぱいを乗せられて「やめろって」と言いつつにやけている顔がありありと目に浮かびました。けしからん中にも笑いもあり、どこかしんと静かな冬の景でもあり(そうかな? そうだよねw)ずば抜けて面白かったです。Excellen!!(小笠原玉虫)

    ○ドラゴンボールの亀仙人や、ドラゴンクエストの世界を連想しました。ぱふ、ぱふ、ぱふ、ぱふ…。あ、ドラゴンクエストは別に禿頭でなくても良いか。冬の月は、夜の世界の他に、寒そうな禿頭を連想させる。(桃宙)

    ○明るくてよい。「禿頭」「乳房(たぶん巨乳でしょう)」「冬の月」とまるいものを重ねていくイメージの畳みかけも見事。(働猫)

    ●禿頭・乳房・冬の月の三つが主張しているので、どれかに焦点を絞れば?また、狙いすぎな感も。(さゆり)

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  13. 嫌はれて捨てられてまだ葱でゐる ( 4点)◎◎△△

    ◎今回断トツで好きなこちらを特選に頂きます。どういうことかな?とちょっと考え込む感じもありますが、嫌われ、捨てられ、と散々な中でそれでも葱でいるって、スッゲ矜持のようなものを感じます。背筋の伸びた誇りですね。葱が冬らしいし、シヴい。鍋、蕎麦、いろんなものに欠けたら寂しい葱。でも存在自体は華々しくはない葱。そして真っ直ぐな葱。この葱はカッコいいですよ。「まだ」は「なほ」の方がわたし好みではあるかな。でも句としてスラッとまとまってるし、定型らしくかしこまりすぎていないし、非常に評価出来ると思います。大好きです。(小笠原玉虫)

    ◎長葱の緑の部分を食べるか否かは永遠の課題である(嘘) 。鍋に入れられなかった葱の悲しさ。食べてもらえなかった葱の切なさ。それでも葱は葱であろうとする矜恃。己を重ねずにはいられない。(一音)

    △最後の「葱でゐる」がポイントですね。ちょっとした言葉の交換が不思議な世界を作りますね。それがおもしろいかどうかは別の問題ですが。(タケウマ)

    △「まだ」と言うからには「葱」でなくなることもできるのであろうか。「葱」は何かのメタファーなのであろうが、わからない。(働猫)

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  14. 死に場所も選べないポインセチアが真つ赤 ( 3点)◎○△△△△△

    ◎花は死に場所を選べはしないけれど鮮やかである。切なさが染みます。(武里圭一)

    ○咲く場所も枯れる場所も選べない花の運命のようなものがいいなと思いました。(えーき)

    △生死の対比を色で上手く詠んでいる。真つ赤が効いてます。(さゆり)

    △クリスマスの時期、街中に飾られているポインセチア。育てられるがまま、出荷されるがまま。句を通して、華やかな中に潜む物悲しさにハッとさせられます。(このはる紗耶)

    △ポインセチアの赤にどうにもならない心情を託しました。(タケウマ)

    △死の直前なのでしょう。絶望的な中、ポインセチアに「生きる力」を感じている。(桃宙)

    △自然を捻じ曲げて植物を利用する日本におけるクリスマスの商業性に対する風刺でもあろうか。しかし、逆に死に場所が選べる植物などあるものか。と考えると、死に場所を求めているのは作者であろうか。ここで死のうと定めていた場所にポインセチアの鉢を置かれてしまった、と。イエス様は「死ぬな」と言っているんじゃないかな。(働猫)

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  15. 「一口いる?」のスプーンが性の目覚め ( 3点)○○○△△△

    ○思春期を男子校で過ごした私からすれば羨ましい限りです。スプーンを性的な目で見る発想にも惹かれました。(寺田人)

    ○私はまさしくその通りでした。(武里圭一)

    ○句の出来は最低。でも性の目覚めは好き。青春はどうしようもないくらいに惨めだ。(温)

    △甘酸っぱいゼリーとかでしょうか? ほろ苦いコーヒー系もよいかも♪ カレーとかもありでしょうか?(タケウマ)

    △性に目覚めるのは大体、小学校高学年〜中学生くらいか。「一口いる?」という言葉をさらっと言えるのは、10歳くらい年上の女性か。女性の舌の温度とか、口紅とか一本のスプーンからいろいろなことを妄想しているんでしょうね。(桃宙)

    △性の目覚めアンケートへの回答、または報告のようだ。これがその後の特異なフェチに繋がってゆくのであろう。(働猫)

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  16. 猫行く道を落葉行く ( 3点)◎○△

    ◎猫はかわいい。冬に向かう道を決然とゆく様子であろう。どうか達者で暮らせかわいい猫よ。(働猫)

    ○落葉が転がる感じが、風を感じて良いです。(Keiten666)

    △猫のあとを追いかけるように落ち葉が舞っているのでしょう♪(タケウマ)

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  17. 透明な花の散る音星月夜 ( 3点)○○○△△

    ○儚げな景が見えてきていいなと思いました。(えーき)

    ○月の美しい輝きを「透明な花の散る音」と捉えるなんて恐れ入る。脱帽。(北大路京介)

    ○心に咲いた花、と解釈しました。(Keiten666)

    △きれいですね。秋の夜に散る透明な花はどんな花なのでしょうか、気になります♪(タケウマ)

    △これは美しい情景です。星や月の輝きを花ととらえているのでしょうか。その光が降り注ぐ様子を音としてとらえるとは、作者は共感覚の持ち主かもしれませんね。(働猫)

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  18. 手袋のグーチョキパーのもどかしさ ( 3点)◎○△△

    ◎共感するものがあります。誰とじゃんけんするわけでもなく、グーチョキパーと指の体操をしていました。手袋をはめていると動かしづらいんですよね。バスの整理券をとるとき、自動販売機で飲み物を買うために小銭を出すとき、携帯電話のボタンを押すとき、よくもどかしい思いをしていました。この句の季語は「手袋」ですが、手袋の中の悴んだ手もよく表現されているんじゃないかなと思いました。音としても面白い響きではないでしょうか。(桃宙)

    ○もどかしさ、というところに手袋の厚みが表れていて良いと思いました。(菜月)

    △確かにもどかしい♪(タケウマ)

    △「ぼっこ手袋」というやつですね。あ、これは方言でしょうか。なべつかみ型のやつです。手袋の中はグーでしたーと言い張ってじゃんけんの負けをなかったことにしたりしました。私にも無邪気だったころがあったのです。そうでもないか。(働猫)

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  19. ゆうべのビールあおって宴のあと ( 3点)○○○△△

    ○これ実体験として最近あったので、思わずいただきました…(さゆり)

    ○宴のあとの描写が、宴の賑わいとの温度差を生んでいて良いと思いました。(菜月)

    ○旧知の友人との宴。知らぬ間の眠りから覚め頭を整理するように気の抜けたビールをのむ。思い出さなくていい悲しい話も、良い知らせも全てが現実だと確認する時間、、そんな風に読みました。よくある歌といえばそうなのでしょうが余計なことが上手く削がれていたので是非と取らせていただきました。(琳譜)

    △気の抜けたビールはおいしくないですよね。(タケウマ)

    △もったいないと思って飲んじゃったのかな。これから片づけるのか、と思うとうんざりしますね。(働猫)

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  20. 宴果てもう会わぬ背が白い ( 3点)○○○△△

    ○なぜ白いのかが気にかかります。もう会わぬという断定に一抹の寂しさを感じ、謎を抱えたまま並選に頂きました。(寺田人)

    ○大変好きです。宴のあとのさみしさの句ですが、これは洗練されている。送別会だったのかな。仕事の仲間って仕事が一緒でなくなると、ほんとにもう一生会わないことのが多くてさみしいですよね。でも、去っていくその背には安堵も漂っていそうだ。雪の中、振り返りもせずに去って行ったのでしょうか。寂寥感と安堵の配分がお見事。リズムも好き。とてもよい句と思います。(小笠原玉虫)

    ○ここでいう宴とは、付き合っていた期間を表すのでしょう。もう会わないと決めた日に、白い背を見てしまうという人間らしさ。(桃宙)

    △白にした事でクリアな感じがして、すがすがすくて良いです。(さゆり)

    △その人はすでに故人なのでしょうか? 生きているなら会うこともあるかと。(タケウマ)

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  21. 次の事故を右に曲がる ( 2点)○○△△

    ○事故多発地帯か。(洋三)

    ○事故をなに食わぬ顔で素通りするどころか道案内に組み込んでしまうクールというよりはコールドな感覚に惹かれました。(寺田人)

    △「次の角」ではなく「次の事故」がポイントですね。運転手(もしくはナビゲーター)は預言者ですね♪(タケウマ)

    △死亡事故で爆炎をあげて燃え盛っている車。それを全くの他人事として突き進んでゆく感じが、怖くもあり面白くもある句だなと思いました。ぽつっと短くて、この短さがまた怖い。斬新だと思います。(小笠原玉虫)

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  22. 病気切り取ってくれた君ごと捨てる ( 2点)◎△△△

    ◎自身の経験を追体験する句でした。自由律の句会は初めてですが、短詩の中でここまで毒々しくカタルシスが得られるものが作れるのか、という感慨すらありました。(寺田人)

    △あまり感心しない考えではありますが、そういう選択をしなければならない場面もあるのかもしれません。(タケウマ)

    △女性の執刀医に恋をしたのでしょうか。(桃宙)

    △「君ごと」何を捨てるのだろうか。病気だろうか。ここで描かれているのが医療行為だとしたら、「病気」を「切り取」るという表現には違和感を覚える。おそらく、この「切り取って」は手術のことではない。写真または絵の構図として切り取ったということか。自分の病的な部分を「君」に客観的に示されたのかもしれない。それならば捨てざるを得まい。性癖とは互いの無言の了解の上に成り立つものであるのだから。(働猫)

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  23. あばかれて空は午後五時のサイレン ( 2点)○○△△

    ○暗い胸の内を見抜かれて、ハッと振り返れば空がバーっと拡がる、その動きが目に見えました。(千花)

    ○「午後五時のサイレン」に郷愁を覚えた。子供は家に帰る時間である。何があばかれたのだろう。それを知った以上、五時でも帰るわけにはいかなくなった。その秘密こそが子供と大人を分けるものだったのかもしれない。(働猫)

    △リズムがいいですね。披講して気持ちがよかったです。で、「あばかれて」は自分の罪が露見したということでしょうか。刑事ドラマのクライマックスですね♪(タケウマ)

    △「あばかれて」だけだと具体性がなくて弱いです。(Keiten666)

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  24. ああやはりそういうさだめなのですね ( 2点)○○△△△△

    ○平仮名にした事で、悲壮感を感じるかも知れないところを楽観視しているようにもとれ、あっけらかんとしてて良い。(さゆり)

    ○厳しい身の上を詠んでいるのだが、ひらがなで表記したことで静かな開き直りを感じました。(千花)

    △どこか投げやりな口調が印象的。詳しく語らぬがゆえに、かえって、喜怒哀楽諸々、読み手それぞれの記憶をちくちくと刺激する句。(このはる紗耶)

    △仕方ないですね。(タケウマ)

    △何か嬉しくない出来事に嘆息しているのは分かります。しかしそれ以上のものは感じない。(武里圭一)

    △575のリズムの力強さを実感する句である。つまり575に落とし込めば何を言おうと句になるということです。それ以上でもそれ以下でもありません。(働猫)

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  25. 冬の星優しき人でありなさい ( 2点)◎△△

    ◎何故か幾度も読み返してしまう句。クリスタルのような空気を感じます。全てを見透かすような鋭さでくっきりと輝く冬の星。その光と共に諭す声は故人のものか、それとも隣に佇つ人か、自らの内なる声か。(このはる紗耶)

    △そうありたいものです♪(タケウマ)

    △亡き母を星に擬えているのでしょうか。その言いつけを守ろうとしているのですね。アニメ「一休さん」のエンディングテーマを思いました。母上様は生きてらっしゃいましたが。(働猫)

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  26. 君の中でふやけし指や狂い花 ( 2点)○○△

    ○直球であることを買う。(古戸暢)

    ○長い愛撫なのでしょう♪ 狂い花が付き過ぎのような気がします。帰り花でもよいような。(タケウマ)

    △花である季節を過ぎた「君」をも「狂い花」にするほどのテクニックだぞーという自慢でしょうか。そういうのこそ秘するが花というものですよ。(働猫)

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  27. ここに愛がある冬日に入る素足 ( 2点)○○△△

    ○日向ぼこでしょうか。なるほど、愛があるような気がします♪(タケウマ)

    ○私の誤用かもしれませんが、「アガペー」を感じた一瞬とでも言えばいいのでしょうか。綺麗です。(獺太郎)

    △あ、いいな、と素直に思いました。冬、日向でお昼寝をしている景。薄暗い家の奥から愛する家族がやってきて、陽だまりに入ってきたのでしょう。最初女性かなと思ったのですが、冬に素足ということでもしかしたら元気な子供なのかもしれない。「愛がある」というストレートな言い切りが非常にカッコいいです。(小笠原玉虫)

    △あたたかさは、愛ですね。(Keiten666)

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  28. マリッジブルーの最中や兎抱く ( 2点)◎△△△△△

    ◎なぜ抱くことになったのかはわかりませんが、別のものを抱くことによって気分が変わったりするのでしょうか。自らの意思で抱いているわけではないように読んだのですが、その変な感じが好きで特選にとらせていただきました。(木曜何某)

    △兎の象徴するふわふわ感や優しさがマリッジブルーに対して効果的で暖かい情景。かわいい句。(さゆり)

    △兎を抱いて解消されるとよいのですが。(タケウマ)

    △いいですね。乙女の時代に終止符が打たれるという感じがします。兎はぬいぐるみじゃなくて本物だとしたら、是非結婚した先にも連れて行って可愛がってあげてほしいです。(小笠原玉虫)

    △マリッジブルーを題材にしたのは面白いです。でも、兎=「さみしい」「孤独」の象徴は正直、もう飽きてしまった気がします。(桃宙)

    △兎は少女性の象徴でしょうか。結婚を前に、失われていくものにすがりつきたい気持ちを表しているのでしょう。(働猫)

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  29. カンテラに心臓といふ火や冬至 ( 2点)○○△△△

    ○「心臓といふ火」の解釈に迷いましたが、炎の揺らめきが鼓動のように思えたと受けとりました。冬至という一番長い夜の底を肌と眼にひたひたと伝えてくる句。(このはる紗耶)

    ○カンテラの火は、まさにカンテラの心臓であると思った。冬至の短い日を集めて灯したかのようなカンテラのささやかな火。この明かりを失えば、世界は闇に包まれるのだろう。(一音)

    △「心臓といふ火」がポイントですね。強引な句またがりですが、破たんはしていないと思います。(タケウマ)

    △缶コーヒーのCMをおもいだします。(Keiten666)

    △一つ一つの語をぼんやり眺めれば、カンテラの火を熱い生命の象徴としての心臓と見立てて冬の夜の寒さや寂しさを表現していることはなんとなくわかります。しかし、だとすれば語のつなぎ方に違和感を覚える。その場合は「カンテラ『の』」でなければならない。カンテラの揺れる火を見て落ちてきた心情なのだとすれば、ここは「の」でなければ不自然なのだ。しかし、「カンテラ『に』」としているということは、カンテラの火を眺めながら詩情が湧いてきたのではなく、すでに「この火は心臓だ」と思いながら火を灯す動作をしているということだ。作者は詩人であろうか。常に世界をメタファーとして見ているのだろう。作者にとってはカンテラの火を心臓に見立てるというのはすでに通ってきた道、過去の表現なのだろう。しかし詩ではなく俳句という形式に落とし込んだとき、それはあざとさやわざとらしさとして表れてしまう。今この瞬間を切り取ること、常に新しい表現を模索すること。俳句として読むならば、この句にはその二点が欠けているように思います。(働猫)

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  30. アルパカも牛も反芻ばかりしている宴だ ( 2点)◎△△

    ◎アルパカと牛の醸し出すオカルトな雰囲気が大好きです。反芻ばかりしているというのも、とても雰囲気があると思います。(菜月)

    △ああ、アルパカも反芻するのですね。(タケウマ)

    △これはあだ名なんだろうな。私も年齢層の高い職場なのでわかります。(働猫)

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  31. さかる宴の二人無口な ( 2点)○○△△

    ○いいですね。酔うの出遅れたりして、妙に冷めた気持ちになってしまう宴って誰にでも覚えがあると思うのですが、同じように白けた顔をした人を見つけたのでしょう。二人はきっとにやりともしないし、共犯的な気持ちになることすらないでしょう。あ、あの人もつまんなそう。そう思うだけでやっぱり静かに時間が過ぎるのを待つだけなのでしょう。連帯感未満ですが、そこにはちょっとだけほっとしたものが漂っているように思います。もちろん二次会は不参加の方向で。そして別々に帰っていく二人。触れ合いそうで触れないこれも一期一会。いいですね。この儚さがいいです。短律ですっとまとまり、リズムもキレイで非常に好みの句です。(小笠原玉虫)

    ○無口でも宴が盛るなら、お互い話さなくても気まずくない仲なんでしょう。(武里圭一)

    △「さかる宴」がよくわかりませんでした。言葉も発せず交尾に没頭している様を宴と詠んだのでしょうか。(タケウマ)

    △二人の性欲の高まりが匂い立つようです。(働猫)

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  32. 訓読みは切なさのあり宴かな ( 2点)◎△△

    ◎とある書道漫画に、日本人が仮名を発明したのは、自分たちの「心の中」を表現したくなったからでは?と言うおばあちゃんがいたのをおもいだしました。日本語の音である訓読みで漢字を読むというのもそれに通づるものがあり、「切なさ」の措辞が生きています。(Keiten666)

    △そういわれるとそんな気もしますね。下五がかな止めなので、中七は連体形にしたいところです。(タケウマ)

    △「うたげ」という読みに切なさがあるということだろうか。それともなにか別のものについて述べているのか。どちらに解釈するとしても理解が及ばない。「打ち上げ」の音便化であるという「うたげ」の語源を考えてみても「切なさ」には結びつかない。宴において、「訓読みが述べられる何か」について考えてみても特に思いつかない。理解できないまま「切なさ」という感情を直截に述べられては困惑するばかりである。(働猫)

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  33. 空っ風が責める裏切り者でいる ( 1点)○○●△△△

    ○景の寂しさのようなものがいいと思いました。(えーき)

    ○耐えがたい悔恨を抱えて風にさえ苛まれる、という。「空っ風」がよく効いています。(武里圭一)

    ●私は20日産まれなので。(温)

    △映画のワンシーンの香りがします。事情を抱えた強面の男が、秘密を抱えたまま川べりで天を仰いでいるかのよう。(このはる紗耶)

    △本当に裏切り者であれば、空っ風は甘受すべきでしょう。(タケウマ)

    △これはイスカリオテのユダであろう。風に吹かれているのはゴルゴダの丘か。神殿近くの木にぶら下がって揺れているのか。あるいはコキュートスか。でも空っ風だから群馬なのかもしれない。(働猫)

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  34. グラスからこぼれ落ちたる冬の夜 ( 1点)○△

    ○なにかがあふれたのでしょう。普通に考えればグラスですから液状のものでしょうが、感情のようなものがこぼれたと読むことも可能でしょうし、中七が連体形ですから、冬の夜がグラスからこぼれたと読むことも可能です。さて、こぼれた冬の夜はどうなるのでしょうね。テーブルに小さな水たまりを作るのか、クロスにしみこんでいくのか、いろいろ考えるのが心地よい句です♪(タケウマ)

    △「冬の夜」ならば黒い液体でしょうか。コーラやコーヒーでは句にならないので、やはり酒として読みたい。黒い酒。黒ビールくらいしか思いつかないな。冬っぽくないな。いや、「グラス」自体が星座なのかもしれないですね。夜空にグラスを思い描いて、そこから冬の夜があふれているように見ているのか。この読みが一番しっくりくるな。(働猫)

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  35. 柚子の湯やカピバラたちの菩薩めき ( 1点)○△△△

    ○ゆったりカピバラが湯に浸ってる景が見えていいなと思いました。(えーき)

    △柚子湯に浸かるカピパラですね。なるほど菩薩のように見えるかもしれません。(タケウマ)

    △か、かわいい。(Keiten666)

    △かわいらしいですね。たしかに彼らの顔は柔和な菩薩のようにも見えます。(働猫)

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  36. 咳をしてあしたへ歩く草鞋編む ( 1点)○△△△

    ○寒さが感じられる句(木曜何某)

    △無理はしないほうがいいですよ。(タケウマ)

    △草履編むが惜しい。下五がもっと現代的で現実的な語だとさらにぐっときたなと思います。草履編むって行為が我々の生活の中に既にないからだな。咳をしてあしたへ歩むはめっちゃくちゃいい。ほんと大好きです。ぐっときまくりです。ほんとに草履編むだけが惜しいと思いました。(小笠原玉虫)

    △演義における劉備の母であろう。庭にある桑の木が天子の乗る車の天蓋と同じ形をしているのだ。(働猫)

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  37. 冴ゆる夜の宴に顔のない男 ( 1点)○△△

    ○この句では顔のない男のことしか紹介していないのに、宴に集まる者たちが皆人間ではないような景が浮かびました。怪しげな宴と季語の相性が良いと思います。(菜月)

    △ホラーテイストで好き。人間じゃないものもひっそり混じっていそうな宴って、怖く楽しく素敵だと思います。(小笠原玉虫)

    △ニャルラトホテプかな。だから宴会に輝くトラペゾヘドロンを持ち込むなとあれほど言ったのに。それとも「宴」自体がサバトであったものか。(働猫)

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  38. となりの宴だれか叱られている ( 1点)○△△△

    ○楽しいはずの宴なのに、叱られている人がいるのは辛いですね。それを肴にして飲んでいるのも何だか怖いです。(桃宙)

    △宴会あるあるですね。ハメを外しすぎてあらら~っていう人、います、います。思わず噴き出した楽しい句。(このはる紗耶)

    △かわいそうですね。(タケウマ)

    △酒の席ではよした方がいいですね。無粋極まりないですし、お互い感情の抑えが利かなくなりますので。(働猫)

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  39. ふりおつる宇宙透視図 雪の宴 ( 1点)◎●△△

    ◎風のない夜。深々と降ってくる雪。星の海を上昇していく。(静恵)

    ●季語にもう少し重きを置くべきかなと思いました。(菜月)

    △雪の降るときの模様は宇宙の内面を透かした図と詠んだのでしょう。ステキな発想だと思います♪(タケウマ)

    △「宇宙透視図」とは何だろう。もともと宇宙には視界を遮る物質はないと思うが。雪が視界を遮ることで、すでに見えていたもの・ことに気づいたのだ、という逆説的な句なのだろうか。俳句としてまとめるには詩情にあふれすぎているのではないだろうか。(働猫)

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  40. 霜柱踏み踏み宴より帰る ( 1点)○△△△

    ○楽しい宴の余韻を感じる。(武里圭一)

    △朝までお疲れさまでした。(タケウマ)

    △きっと楽しい宴会だったのでしょうね。(Keiten666)

    △北国の宴会は帰り道が命がけとなる。路上で睡魔に負ければ、翌朝冷たくなって発見されることとなる。作者が北国の人かはわかりませんが、霜柱を踏んでゆく緊張感や危うさを感じ取りました。(働猫)

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  41. 雪見風呂宴はカラオケの時間 ( 1点)○△△

    ○風呂にいる人物と宴との距離感がいい。今回の中では数少ない宴に参加していない宴の句なのがまた憎いw(獺太郎)

    △カラオケ嫌いなんですね。ボクもどちらかというと、お風呂のほうが好きです♪(タケウマ)

    △社員旅行でしょうかね。俗な宴会を抜け出し、一人風流に浸る様子ともとれますが、「雪見風呂宴」と一気に読めば、全館貸し切りで風呂でも宴会が続いている様子ともとれます。そっちの方が楽しそう。(働猫)

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  42. 寂しさうな人から宴に酔ひにけり ( 1点)○△△

    ○観察眼の鋭敏。からみ酒の人は、実生活の淋しい人が多い。(静恵)

    △なるほどそういうものかもしれません。(タケウマ)

    △自分も口下手ですので、あまり親しくない人と隣になったりすると、勢い飲む量が増えます。話すことがない分、飲むことになるし、酔ってしまえば緊張もなくなるし。こう見えるのかなと思うと、ちょっと明日の忘年会で人の目が気になりますね。(働猫)

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  43. 文庫本深夜古書店血の指紋 ( 0点)○○●●△△△△

    ○自由律が続く中で575の定型に安息を覚えるとともにその内容のレトロかつヴァイオレンスかつミステリアスな様相に惹かれました。(寺田人)

    ○たたみかけるように連なる単語が、からくり箱をパタパタと開けていくように情景をあらわにしていきます。古書店特有のあの匂い。静寂に包まれる夜、店の主が見つける文庫本の指紋。謎めいた物語の始まりを知らせに思えます。(このはる紗耶)

    ●あまりにも雰囲気を出しすぎているかなと思い、逆選にしました。(えーき)

    ●血の指紋がついてても売り物になる貴重な文庫本なのだろうか。血の指紋はもしかしたら血判かもしれない。「深夜」とあるのがよく解らなかった。おどろおどろしい感じを出したかったのだろうか。ただリズムよくするために「深夜」と入れたのではないだろうか。(北大路京介)

    △血の指紋がポイントですね。四段切れはあまり感心しません。(タケウマ)

    △こういうおっかないものに出会ってしまうのも、中古品探しの醍醐味かと思います。わたしも着ると吐いてぶっ倒れる着物とか、いろんな経験があります。そんなことで懲りる我々ではないのですよね。非常に共感しました。(小笠原玉虫)

    △普通はないでしょうけれどね。ちょっと不気味です。(Keiten666)

    △なにか始まるのでしょうか。杉下右京が細かいところを気にしている場面ですかね。(働猫)

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  44. へこんだら倒れたままだ缶ビール ( 0点)○●△△

    ○こういうくだらないの大好き!(Keiten666)

    ●わざとだったら申し訳ないが、もう少しどうにか出来なかったのか。(獺太郎)

    △ことの成り行きがうまく飲み込めません。(タケウマ)

    △「へこんだ」のは缶であり、酒に逃げる自分でもあるわけですね。(働猫)

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  45. 酒呑んで話したいひとり秋の宵 (-1点)●△△

    ●状況は良いのに「ひとり」が揺れる。話したい<一人>がいるのか。私が<一人>なのか。(静恵)

    △秋の宵はそういう気分になりますね♪(タケウマ)

    △酒を飲んだから話したいのか、飲む前から「飲みながら話そうぜ」と思っているのか、どちらともとれますね。どちらともとれますが、どちらともままあることではないでしょうか。詠み尽された素材だと思います。(働猫)

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  46. 菊の宴オール下ネタ一本勝ち (-1点)●△△

    ●楽しそうではありますが……(木曜何某)

    △その下ネタを聞いてみたいです♪(タケウマ)

    △試合には勝ったかもしれませんが、勝負には負けています。(働猫)

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  47. 夭折や詩人の書斎知の宴 (-1点)●△△

    ●モチーフには好感が持てますが、ぶつぶつ切れた説明文的な印象が拭えないのが惜しいです。(このはる紗耶)

    △なんとなく書斎の風景は浮かんできます。この三段切れも効果的ではない気がしますね。(タケウマ)

    △「や」という切れ字を用いていることから、作者の感動の中心は「夭折」に対する詠嘆なのだろう。「なぜこんなに早く」と詩人の死に対して嘆いている。しかしその後作者の興味は詩人の遺した書斎へと移ってしまう。「知の宴」という表現は(新鮮でこそないが)十分に読む者に訴える力を持つものだ。しかしそれによって、作者の感動の中心が「夭折」から「知の宴」へ移動してしまったように感じる。親しい詩人の(読み取りにくいが、この詩人は作者にとって親しい存在であるのだ。だからこそ書斎に入り込むことができるわけだ。)早すぎる死を嘆きながら、いざその書斎に踏み込んだとき「すげー、すげー本いっぱいある。いいな、この本、いいなー」とすでに悲しみも失われ知的遺産に興味が移り、何を形見にもらおうかという吟味が始まってしまったように読めるのである。「知」を求める者の業と読むこともできるが、しかしそれには違和感を覚える。「詩人」と「知」とは必ずしも親和するものではないように思うからだ。「詩人」とは「情」の人であり、「知」とはむしろ隠すべき特性ではないかと思うからだ。亡き詩人の必死に隠した知の集積を暴き立てた句とも取れる。なんだかどう読んでも後味が悪いのは自分が詩人に感情移入しすぎているせいだろうか。(働猫)

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  48. 笑顔あふれる鬱病のひとでした (-2点)○●●●△△

    ○「でした」という言い切りの形、そして過去形なのが胸を痛ませます。さらりと述べられる言葉に潜む闇が重い。(このはる紗耶)

    ●過去形から切なさや、後悔、そして鬱病の人に幸せになってほしいという気持ちが伝わってきました。鬱病というフレーズがインパクトあるのに、どうしても○をつけられない、むしろ逆選に選んでしまったのは、「笑顔あふれる」に面白みを感じなかったからです。確かに笑顔を褒められて悪い気はしないのですが、「笑顔あふれる鬱病の人」はどこにでもいるんじゃないかなあ…と。難しいし、自分でもなかなか思いつかないのですが、もっと別のものを詠んでもいいのではないかなあと考える私も鬱病なのでした。(桃宙)

    ●「鬱病」といわずにそれを表現する言葉はなかったかなと思う。「心を病む」とか。鬱病なのに笑う、鬱病だから笑う、どちらにもとれるけれど、「笑顔あふれる」という表現にも違和感を覚えた。(一音)

    ●「鬱病」に対して先入観や偏見があるように読める。少なくとも「笑顔」と「鬱病」とは本来相容れないものであるとは考えているのだろう。句とは作者のフィルターを通して切り取られる世界である。作者の意図が病に苦しむ人を揶揄することであるならば成功している。そうでないならば、自らのフィルターの傾きや偏りを再度確認するべきではないかと思う。(働猫)

    △幸せなのか不幸せなのか… まあ、たいていの人は、その両方を抱えているものですね♪(タケウマ)

    △とっても不安になる句。元気になりかけのときがいちばんあぶないと言われるように、いやー元気になりました! なんて笑いながら報告にきたその帰り道に、ふっと飛び下りて死んでしまったりしそうで怖いですね。自分の痛みよりも他人の痛みの方が恐ろしいのは、その度合いが分からないせいだと思います。伺いしれない他人の心の中が恐ろしいなと思わせる句です。(小笠原玉虫)

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  49. 元カノに似た店員のいる喫茶店にてカフェラテを注文す (-3点)◎●●●●●△

    ◎駄作。句意も形もどうしようもないぐらい駄作。けれども上手くやろうとする駄作なんかより、ずっとよい。下手なら下手な句を詠むのがよい。本音で生きなければ。(温)

    ●状況説明文。(古戸暢)

    ●状況はよくわかりました。(タケウマ)

    ●ちょっと説明的すぎるかな、と思いました。状況も気持ちもよく分かるし、カフェ好きな自分としては好きな景だけど、句としてはもう少し整理するとぐっとよくなるかなと。その可能性に掛けたい気持ちで逆選とさせて頂きました。(小笠原玉虫)

    ●色々な面を考えて全てが足りないと感じたのでこの歌を取らせていただきました。ご自身で題材を探され安易な言葉に飛びつくでもなくおられたこと素敵です。題材の切り方や言葉運び何か一つ変わるだけで選ばれる句になられる方だと感じました。(琳譜)

    ●知ったことか、という感じ。(武里圭一)

    △日記ですね。言いおおせて何もない。(働猫)

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  50. भोज॥आप मौत की दुल्हन खाने के लिए नहीं करना चाहता था (-3点)○●●●●△△△△△△△

    ○読めない。しかしその解釈が読む者に委ねられるという点が非常に俳句的であると言える。実際、参加者の反応も様々なものになるだろう。自分は自句自解を求める行為は作者に対する侮辱であると考えている。だから、この句の訳や意味を問うのは無粋であろうと思う。句会に提出された以上、これは俳句である。読めない、意味がわからないのは読む側である自分の問題である。意味はわからない。読み方さえわからない。しかしそのインパクトときたらどうだ。今回の63句中で抜群である。誰も黙殺することができまい。字面の面白さもよい。とらざるを得ない。はは。おもしろい。顔を合わせてする句会で突然一人だけヒンディー語で詠み始めたら、爆笑するだろう。わからん。はは。文句なしに一番面白い。特選で取らないのはやはり意味がわからないこと、リズムもわからないことから、その根拠を示せないからだ。朗読を聞けばリズムはわかるのだが。web句会の限界か。ただしこれは一度限りの外連でもある。今後自分が意味の分からない他言語俳句について今回以上の衝撃や面白味を覚えることはないだろう。(働猫)

    ●誰か訳して下さい。(洋三)

    ●せめて意味を知りたい、読めぬ発音できぬ調べることが困難という状態が、こんなにも苦しいものかと思い、問題句として取り上げます。(寺田人)

    ●自己満足すぎて参加する意志さえ感じられません。(Keiten666)

    ●外国の方がHAIKUに興味を持って作ってくれたなら嬉しいのですが、奇を衒っている印象しかありませんでした。(千花)

    △読めないのが、もったいない。訳を付けてほしい。(静恵)

    △外国語表記の理由は、これが母国語の方が詠まれたのか、それとも意図的なのか。ネットで翻訳してみましたが完全には訳せず。なので、句意を読み取るまでいきませんでした。ごめんなさい。翻訳で出せた部分のフレーズには惹かれたので、勿体無かったです(このはる紗耶)

    △翻訳サイトで調べましたが、よくわかりませんでした。意味を教えてください。また、そういった行為を促す意図であれば、それなりの意味をもった句であろうと期待しています♪ 種明かしプリーズ♪(タケウマ)

    △つっこまれ待ち感がすごいのであえて触りません。(獺太郎)

    △ ヒンディー語かな…。新しいです。見た瞬間「これは…!!!」と思いました。翻訳したら残念な気持ちになるかもしれないと思い、翻訳していません。(桃宙)

    △ وقد تم (琳譜)

    △Googole翻訳など試してみたが、भोज॥आपという単語だけは意味が分からなかった。それによって評価も変わるので無点で。(武里圭一)

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  51. イルミネーションの光が入る部屋からツイート (無点)△△△△

    △今の時代ならではの句。イルミネーションには青いLEDがふんだんに使われているのかもしれません。(このはる紗耶)

    △外はクリスマスの町なのでしょうか。引っ越しをお勧めします。(タケウマ)

    △「イルミネーションなう」…なうは古いか。(桃宙)

    △はしゃいでいる街のざわめきと一人の部屋を対比したものだろうが、カタカナが妙に古臭さを醸し出している。意図的に「野暮ったい自分」を演出しているのであれば見事です。(働猫)

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  52. 狩ののち宴よ食えよ飲めよ酔えよ (無点)△△

    △リズムを意識した句でしょうか♪ でも、ボクはうまくリズムにのって披講することができませんでした。(タケウマ)

    △何度か口に出して読んでみたがリズムがわからない。「うたげよ」と読むと仮定するが、のちの「くえよ」「のめよ」「よえよ」が3音のリズムで続くので「うたげよ」の4音が重たくおさまりが悪い。「宴よ」は最後に持ってくるのがよいのではないだろうか。そうであったとしても内容的に経験したことのない景であるので、とるには至りません。(働猫)

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  53. 精一杯の恨み込めてか骨の白い (無点)△△△△△

    △樹海を髣髴とさせる句。薄暗い森の中、異様なほど白く見える骨。まだそれほど時が経っていないのでしょうか。背筋がひやりとしながらも、目が離せない心境になります。(このはる紗耶)

    △骨の白さに故人の生涯を象徴させました。でも、たいていの骨は白いような気がします。(タケウマ)

    △不幸な死に方をなさったかたなのでしょう。でも、焼き上がったお骨は真っ白。「恨み込めてか」って言ってるけど、このかたは思い残すことなく成仏なさったような雰囲気が漂っています。苦しかったこと全てが浄化されていてほしい。そんな気持ちにさせられる句ですね。(小笠原玉虫)

    △葬儀。白くて綺麗な骨だね、なんて言われている誰かを見て後悔しているのか。恨まれることでもしたのでしょうか。(桃宙)

    △「恨み」という言葉から、この骨の主を人間とする読みに引っ張られそうであるが、そうではあるまい。火葬された骨はここで詠まれるような鮮烈な白ではない。釣り上げられた魚、あるいは屠殺され肉を裂かれてゆく鳥、獣。または路上で冷たくなってゆく轢死した野良猫。この鮮烈な白は焼かれることのない獣たちがこの世の名残りに遺すものなのだろう。高校生のころ、体育でグラウンドに出たところ、隅の方に烏が集まっていた。近づいてみると猫が死んでおり、あらかた啄ばまれところどころ白い骨を晒していた。級友は気味悪がったが、猫だったので穴掘って埋めてやった。一人で。それを思い出した。その生まれ変わりであろう猫は今丸々と太って足元で寝ている。(働猫)

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  54. 冬の昼日中現実味のない光だ (無点)△△

    △やわらかい冬の日差しの中にいると、別世界にいるような感覚になりますよね。「冬の昼」で切るのか、「冬の昼日中」と読むのかわかりませんでした。(タケウマ)

    △薬であろうか。合法であればよいが。(働猫)

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  55. 眼覚めて終ひの棲家の寒夜かな (無点)△△△

    △独り身の侘しさを想起させる句。静寂の痛み。(このはる紗耶)

    △寒い夜はいやですよね。上五は「めざめて」ではなく「まなこさめて」でしょうか。(タケウマ)

    △いつ死が訪れるかは誰にもわからないことです。そう考えれば今住んでいるところがいつだって終の棲家であると言える。しかしずいぶん古臭い語をもってきたものである。(働猫)

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  56. 夕闇も時雨れて晴れてサドル拭く (無点)△△△

    △これから自転車で帰るのでしょうか。お尻が濡れないようにしっかり拭くのですね。(タケウマ)

    △一日中降り続けた雨が、深夜になってあがったイメージ。夜中の1時頃にそっとサドルを吹いて散歩へ出かけるのでしょう。しんとした雰囲気に惹かれました。(小笠原玉虫)

    △思い出しました。いくらふいても、必ず尻が濡れてしまうのですよね。あの水はサドルからしみだしてくるのでしょうか。謎です。(働猫)

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  57. 見上ぐればその名よ吐息ふゆ銀河 (無点)△△△

    △「ふゆ銀河」は「冬銀河」でしょうか。とすると、三段切れですね。イメージはなんとなくわかりますが、羅列された言葉をつなげるなにかを工夫するのが俳句ではないでしょうか。(タケウマ)

    △景はいいなと思う。ふゆ銀河の体言止めもいい。その名よ吐息のところがちょっとバラバラっとしちゃってて惜しい。整理するとぐっと良くなる気がします。(小笠原玉虫)

    △それぞれの語がばらばらであり、まとまりに乏しい。結果として、何か含みのありそうな語を並べておきながら結局何も言ってない句になった。何を見上げ、何の名を呼び、なぜ吐息を漏らし、何を冬銀河に見たのか。おそらくは一瞬の情景を切り取ったのだろうが、詰め込み過ぎで何も伝わらない。一瞬でも情報量が多いのならば、刹那で切り取ってみるとよいでしょうね。(働猫)

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  58. 村の宴義兄にストング剥がされる (無点)△△△

    △エロティック。昔の農村にあったという風習を連想させます。それが今もどこかで続いている?と、色々な意味で胸がざわつく句。(このはる紗耶)

    △「ストング」知りませんでした。検索しちゃいました♪ ボクの表情が変わったのを見て、かみさんが怪訝な顔をしています。でも、義兄は剥がしちゃダメなんじゃないかな~ まあ、本人が望んでいるなら、それはそれでいいけれど♪(タケウマ)

    △「ストング」がおもしろい。そういうものがあるのですね。剥がされることは想定済みであったのだろう。(働猫)

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  59. 傘の中雨の宴も佳境なり (無点)△△

    △土砂降りなのですね。(タケウマ)

    △「雨の宴」がよくわかりませんでした。だから「宴」に「雨」が降っていることにします。野外フェスですね。傘を差しているのは盛り上がりに欠けるファン、または運営の人でしょうか。(働猫)

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  60. どこかの宴会の声にキライを混ぜる (無点)△△

    △迷惑ですね。(タケウマ)

    △無関係の他人が盛り上がってるのって迷惑以外の何物でもないですからね。ささやかな抵抗と読めばかわいらしくもありますが、何らかの呪詛のようでもあり、少し陰湿にも思う。(働猫)

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  61. 終わらぬ宴の暁の夢 (無点)△△

    △疲れ果てて寝た人がいるのですね。(タケウマ)

    △この宴は現実だったのか。それとも夢だったのか。北欧神話のヴァルハラを想像しました。(働猫)

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  62. 寂寥抱えて宴の散会 (無点)△△

    △なごりおしいのか、故人をしのぶ会のような訳ありの宴だったのか。寂寥という単語を俳句で使うのは難しいなと思いました。(タケウマ)

    △宴の終わりは寂しいものだ。しかしそれをそのまま「寂寥」と言ってしまっては趣が無さすぎる。また「寂寥」ではちょっと大袈裟過ぎる気もする。(働猫)

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  63. バッカスの好くも厭うも宴かな (無点)△△

    △まあ、酒の神様は好きなんじゃないんですか。(タケウマ)

    △たしか、バッカスに好かれるものは酒に強く、好かれない者が下戸であるのではなかったか。とすると「酒豪も下戸も一緒に宴会だよ」というそれだけの句意であろうか。酒だけが宴会の楽しみではないからねえ。普通のことではないのかな。ちなみに「バッカス」「ラミー」は冬の季語。(働猫)

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  64. 以上で、第七回VT句会の編集担当を終えさせていただきます。

    ご参加のみなさん、並びにブログをご覧いただいているみなさん、おかげさまで大変有意義な句会となったと感じております。
    本当にありがとうございます。

    今年をこのように盛況な句会で締めくくれますことを喜ばしく思うとともに、新しい年に向けて、さらなる研鑽と鍛錬の決意を新たにしています。

    来年も互いの成長と健吟を祈念しまして、最後は一本締めで締めくくらせていただきます。
    それでは、みなさん。お手を拝借。

    ヨー。(パチン)

    ありがとうございました。
    あとは各自好きなものを飲んで好きなものを食べてご歓談ください。
    良いお年を。

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