2013年1月16日水曜日
鴨を読む、猫を読む
※鉄塊衆名簿自選五句より。
本間鴨芹
春はぬかるみの危うさ
優しさと滑稽さが同居しており、ついつい頭に残ってしまう面白い句。
子と手をつなぐ日曜は強く手をつなぐ
「手をつなぐ」のしつこさがいい。たまの日曜日、たくさん遊んであげよう。
窓灯り数えている一人のばんめし
一人暮らしの景かもしれないし、家族が出かけている時の様子を詠んだものかもしれない。さびしさが伝わってくるが、待ってほしい。「窓灯りを数え」ながらの夕飯とは、どこか高さがあるところにいるのだろうか。高級ホテルで優雅に食事をしている可能性が急浮上してきた。
見納めとなる富士山四百二十円
四百二十円は、富士山から地元へ帰る際の列車賃だろうか。いや、420円の距離のところに住んでいるのであれば、富士山を見ることはいつでも可能だろう。「見納めとなる」とあるので、作者は遠方住まいのように思う。そうすると四百二十円は食事代だろうか。想像が膨らんで行く。
またエッチなこと考えてたでしょ台風情報
テレビでの台風の予報をみているさなかに、女の子に言われたことだと考えた。彼女がそう言うにいたった根拠はなんだろうか。そして「また」とは。作者の何かが垣間見える。
――――
畠 働猫
そのすらりとした足の間から二人も産まれた
何度も声に出して読んでしまった。読めば読むほど味が出る、面白みに溢れた句だ。
何を食べても君はいない
君が出て行った部屋での様子とみた。共に食卓を囲んだ君が戻ってくることはもうない。コーヒーを飲もうと、グラタンを食べようと、もう君はいないのだ。
父という自死の先達がある強み
使われる単語の硬さ、そして強さが、「強み」をより一層強くしている。
ひとりで生きてるわけじゃなかった窓の月
月に心を助けられた人も多くあるだろう。こういう句は、このように口語で詠いたい。
君に降った雨が来た
君の真上を通過して、僕のところに雨雲がやってきたのである。その様子を電話か何かで伝えあったのだろうか。友との句と読むもよし、恋人との句と読むのもまたよし。
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>またエッチなこと考えてたでしょ台風情報
返信削除橋本夢道の句にも「静かな暴風妻の目がせよと迫りて路地雨うつ」というのもあるので、これからは雨の度にいろんな事を考えてしまいそうです。
>何を食べても君はいない
「食べる」というのは生きる事のはずなのに何だろう、この生きながら死んでいる感じは…
>春はぬかるみの危うさ
返信削除春泥って季語を思い出します。
雪解けた土のぬかるみは、北国に春の到来を告げます。
でも、足元は気をつけなければいけない。
>君に降った雨が来た
ひょっとしたら雨じゃないのかも?!
なんて、深読みをしてしまう。
君に訪れた何かが僕にも来たよ。
みたいな…
そのまま読んでも、佳句だと思います。
拙句を取り上げていただきありがとうございます。
返信削除評を頂くということは本当にありがたく、今まで自分が見つけられなかったものを
見せて頂くようなうれしさがあり、勉強になります。
>父という自死の先達がある強み
千本ノックに出されていた句と記憶していますが、強烈な印象があります。
ここでいう強みとは、どのような強みなのだろうか。
考えさせられます。
>またエッチなこと考えてたでしょ台風情報
返信削除天気図でエッチなことが考えられる旺盛さ。共感できる青春詠。台風情報でも熱帯夜でも、雪崩警報でも考えるときは考えるものです。ということは若干、季が動くのかもしれません。
>父という自死の先達がある強み
『千本ノック』で正選にとった句です。自死という、一見ネガティブな言葉に引っ張られそうですが、これは『生きる』という宣言。強み、で着地したところが見事でした。地に足のついた、まさに力強さを感じます。
春はぬかるみの危うさ
返信削除子と手をつなぐ日曜は強く手をつなぐ
そのすらりとした足の間から二人も産まれた
君に降った雨が来た
頭を使う前にすとんと来た、好みの句です。