2012年8月24日金曜日

近作と小文

『鉄塊』畦道、近作です。

『赤色灯』五句 



友達が刺され太った女が駆けつける


実柘榴のような拳で悔しい


一斉に包囲され百日紅だけ白かった


この墓に入るか迷う


ねだったシャツに袖通した先が秋




 二十年ほど前、ちょっとした刃傷沙汰に巻き込まれたことがあった。ひとりが軽傷を負い、加害者は逮捕された。現場が片付いた頃、顔見知り程度のある女性が所在なく辺りをうろうろしているのを見た。偶然通りかかった、という風ではない。私は、何故きみがここに、と尋ねた。加害者の恋人だった。加害者と私は古い付き合いだったが、彼女と交際しているのは知らなかった。その場に居た数人と彼女とで、喫茶店に行ったのを覚えている。テレビゲームの上で、アイスコーヒーを飲んだ。しかし何を話したのかは全く記憶にない。加害者とも彼女とも、それきり会っていない。
 
  
 ご高覧、感謝致します。

 松田畦道拝


2012年8月19日日曜日

近作七句

鉄塊 渋谷です。


現在、第四回句会の選句期間となっております。

この8月に作った僕の句を、一方的ではありますが、

ここに記したいと思います。





 
   目の前のすべてが煌めいたゲロ吐いた夜

  
  「殺し屋はホンマにおるで。」と床屋の親父

  夕べに魂を売らなくていいところまできた

  この得体の知れない感覚を豚キムチチャーハンに添えて

  またどこかの誰かが死んだ回覧板が回る

  永遠にとれない時計の痕つけてまなつの会社員

  葡萄炭酸 TSUTAYAの前で待ってる



僕の所属する結社『海紅』では7句が基本です。

というわけで近作七句として上げました。

どうぞよろしくお願いいたします。



知宏 拝



2012年8月11日土曜日

無題

投句締め切りはいつも守らないし、ブログにコメントもしないのは少し気が引けるので、なにか書こうと思ったものの、俳句に関して特に書く事もない。悩んだ末、日記の一部を載せることにしました。恥知らずな行為だが、誠意ってやつです。



7月30日
藤井と競輪。負けて騒いでいるアホ爺に今日知り合ったおじさんが「負けるのが嫌ならギャンブルするな」言っていた。おじさんは11万負けていた。男はまだまだ健在だと安心。俺も藤井も勝ったので、帰りにパチンコ。途中まで俺は勝っていたが藤井に合わせて打っていたら負けた。連れパチだから仕方ない。競輪の勝利を入れると負けてないけど。その後、行くとこもないから帰った。明日も勝てる気がする。

7月31日
朝から川崎競輪に自転車で向かった。途中で清水から連絡があったので戸越銀座に行って二人で電車に乗り川崎へ。清水は万車券を取ったけど最終的には負けていた。俺もボロ負けだった。気分は清々しい。やっとお金が無くなった。その後ヘブンスに行ってカイト君に「ドラゴンズドグマ」を借りた。軽くやったけどおもしろい。

8月1日
朝から「ドラゴンズドグマ」をしていた。いい感じのじいさんキャラが出来たけどジョブ選びを失敗した。「スカイリム」のほうがおもしろい。カプコン次に期待する。夜中になったので、ぶらりと散歩に出掛ける。俳句は全然出来なかったが、月はきれいだった。

8月2日
塚原が三軒茶屋に来ると言うので仕方なく外出。4時っていう半端な時間に食いたくもない王将に行き焼きめしを食った。特にやることもないので喫茶店セブンで風俗の話をして、8時ぐらいに塚原は帰った。その後、クロネコメールでそねださんに随句の基調を送り散歩。俳句は出来ない。最近作る気もなくなってきた。飽きたのかも知れない。それならそれでいい。

8月3日
いつもと同じでずっとゲームしていたら、親が怒って働けと説教された。「繰り返しはクソだけど同じはいいことだよ」と言ったら叩かれた。親はいつも正しい。深夜になって散歩。途中で財布を落とした。兄から盗んだ320円入っていた小銭入れ。今日に限って首に掛けてなかったのが失敗。明日から煙草吸えないのかと泣きそうだった。必死に来た道を引き返すとガードレールに財布が掛けてあったのを見つけた。きっと観音様みたいな人がやってくれたのだろう。中身もそのままだった。エコー買って帰った。

8月4日
朝から夜までゲーム。夜遅く五十嵐が来た。五十嵐のバイクの後ろに乗って出掛けようとしたが、予想以上に怖かったので車に乗り換えた。人に預けられるほど俺の命は軽くないみたい。車で移動しながら五十嵐は愚痴を言っていた。夜の雲が綺麗だった。多摩川に着いて煙草吸って帰った。明日モスラ見よう。

8月5日
昨日まま起きていた。家に帰ってからずっとゲームしていたみたい。深夜になって旅猿を見る。これからまた寝る。しかし句を作ってない。作るものじゃないだろうし別にいいか。

8月6日
ハマコーが死んだってゲームばかり。「ドラゴンズドグマ」クリアして二周目に入った。かわいい女キャラを作るのに2時間使う。いい加減バチが当たりそうだから、求人誌で仕事探し。めくるだけで疲れるからやめた。生きんのがかったるい。俺の脳みそに原爆が落ちて欲しい。
 残飯食って生きのばす 久しぶりの一句は駄句。

8月7日
朝から働く意志が湧いてくる。やっぱストイックに生きるべき。ブルーハーツ聴いてそう思った。「ドラゴンズドグマ」返して、求人誌に載っていたエステ屋の店長募集に電話。21歳を雇うとは思えないが、駄目ならそれでいいのでとりあえず明日の2時に面接。夜遅く準備を始める。履歴書を書くのは得意。これで飯が食えるかもしれない。しかし証明写真がない。スーツで撮ったまともなやつだったのに。怠惰な生活のツケだろう。だんだん面倒くさくなってきた。髭剃ろう。

8月8日
面接に行くのがめんどうになって断りの電話を入れたが来てくれと言われたので、仕方なく行った。風俗店だと思っていたけど、普通の店だった。エステの経験あるかと聞かれたので「回春エステなら」と冗談で場を和ませようとしたら「それとは違う」って真面目な顔で言われた。これは駄目だろうと思ってヘラヘラ適当に受け答えしていると、君は愛嬌があると危なげな台詞を吐きやがった。神様どうか不採用でありますように。

8月9日 
朝から鈴木と会っていた。特に理由はないけど、顔見てたらむかついたので、早めに帰った。夜からオリンピック見る。吉田沙保里はいい女だ。憧れる。
原爆句を久々に読む。松尾あつゆきは素晴らしい。
 まくらもと子を骨にしてあわれちちがはる 松尾あつゆき
原爆の悲惨さはわからんが、この句は美しい。

8月10日
スナイパーエリートV2はちょっと期待しすぎた。初回限定のヒトラー暗殺ミッションも中身薄いし。モーゼル使えるからいいけど。
定型との合同句会の締め切りは間に合わず深夜になってから送った。
定型俳句で「けり」とか使ったけど自分じゃないみたいで気持ち悪い。やっぱ普段使わない言葉を使うのはおかしいよ。定型の人は、最初はみんな慣れないとか言うのだろうけど、腑に落ちない。俳号や自愛が肥大化して気にならなくなるのかも知れない。なんかの病理だ。





2012年8月7日火曜日

第三回 研鑽句会


最高得点句
僕の春反古破るべし破るべし


最低得点句
すべてが散文的に梨の木花つけた


 互選集計

(5点) 僕の春反古破るべし破るべし ◎◎○
(4点) 祖父の仕事した品の一つ売れてゆく雪の日 ◎○○
(4点) 母をおろそかにして梨の汁を垂らし食っている ◎◎
(3点) 少し風邪気味の声の女体に触れんとす ◎○
(3点) しゃべるじゃない冬の日ずっと空のあかりだ ◎○
(3点) いつぱい白い雲いなごをつかむ ◎○
(2点) ことし君に鯊の句のないさびしさを君に云わず ○○
(2点) 春日に病めるドロップの蜜柑の味のを噛みしめ ○○
(2点) 今に見ろ名も知らぬ黒い大きな種を蒔きたり ○○
(2点) 君に出会ひたる紫陽花の咲き初じめ ○○
(1点) 春の雨を歩き一つの罪をつぐなふごとし ○
(1点) のうぜんの花活けて赤ければきみが来る ○
(1点) 降りて雪なるこの町のささやかなさま ○
(1点) 芝居茶屋を出てマントを正す口に唄出る ○
(1点) 金に困りぬいて冬の半島を一まはりして来た ○
(1点) 波あをく実力のごとく盛夏寄せる ○
(1点) 昼酔うて青草に寝ころびぬ人々の行く ○
(1点) 女が嫁ぐ夜が来た椿たやすく折れる ○
(1点) 鞄をさげて一生をかたい道を冬の日 ○
(0点) 庭のまはり自分らのまはり猫のからだののび ○●
(-1点) 柊の木は古典少女がいて冬の雨ふる ●
(-2点) 青大将がぶら下がっていて誰も通れない ●●
(-4点) すべてが散文的に梨の木花つけた ●●●●


特選(◎)2点、並選(○)1点、逆選(●)-1点として集計。


作者発表


 【相沢華芳】
すべてが散文的に梨の木花つけた
波あをく実力のごとく盛夏寄せる


 【浅野麗木】
少し風邪気味の声の女体に触れんとす
少年ねむる菜の花の匂ひあるてのひらでした


 【神谷たづ子】
春の雨を歩き一つの罪をつぐなふごとし
一りんも咲かぬ梅の木は孤独の自由に向き


 【河東碧梧桐】
芝居茶屋を出てマントを正す口に唄出る
昼酔うて青草に寝ころびぬ人々の行く


 【妹尾美雄】
鞄をさげて一生をかたい道を冬の日


 【滝井折柴】
祖父の仕事した品の一つ売れて行く雪の日
のうぜんの花活けて赤ければきみが来る
降りて雪なるこの町のささやかなさま
終駅におろされた俺の草摘みに行く
金に困りぬいて冬の半島を一まはりして来た
庭のまはり自分らのまはり猫のからだののび
君に出会ひたる紫陽花の咲き初じめ
僕の春反古破るべし破るべし


 【竹内唯一郎】
春日に病めるドロップの蜜柑の味のを噛みしめ
今に見ろ名も知らぬ黒い大きな種を蒔きたり
女が嫁ぐ夜が来た椿たやすく折れる


 【中塚一碧楼】
青い林檎を噛ぢるなんといふ眼の鋭さだ
ことし君に鯊の句のないさびしさを君に云わず
あをぎりの茂りを切りこんで地へとび下りた
母をおろそかにして梨の汁を垂らし食っている
柊の木は古典少女がいて冬の雨ふる
しゃべるじゃない冬の日ずっと空のあかりだ
いっぱい白い雲いなごをつかむ
すこし錆びておる鋏できりとつた野菊の花


 【福島一思】
無言で歩く並んであるく父に夏空


 【松宮寒骨】
青大将がぶら下がっていて誰も通れない



五十音順



2012年8月4日土曜日

第三回 鍛練句会


最高得点句
花の名を忘れた口へ匙を運ぶ


最低得点句
あー死にたい。でも死ねないのは君のせいだよ

蟷螂の子がポトリと落ちてもがくメダカの水槽

空蝉のくるぶしあたり

君への仇討のために幸せになろう


互選集計

(9点) 花の名を忘れた口へ匙を運ぶ ◎◎◎◎○
(6点) 桃そっと置かれたまま腐っとる ◎◎○○
(4点) 乾いた土に雨のまるさ ◎○○
(2点) 若気の至りの上限にいる ○○
(2点) みんな棄てて帰る海風がすずしい ○○
(2点) どっかの犬が吠え続ける夜を帰る ○○
(2点) 花の名前で雨に濡れている ○○
(2点) くそ暑い日の昼飯の味噌汁 ○○
(1点) 日陰ばかり歩く ◎●
(1点) 酔いたい夜の酔えない
(1点) なにができるミシンの音か
(1点) 朝刊に裏切られる試合の結末
(1点) 雨が長居させてくれた
(1点) 稲妻にこの姿見せに行く
(1点) もういい月が出た
(0点) キィーン!ポールにカバンが当たったぞ ○●
(-1点) 空蝉のくるぶしあたり
(-1点) 君への仇討のために幸せになろう
(-1点) 蟷螂の子がポトリと落ちてもがくメダカの水槽
(-1点) あー死にたい。でも死ねないのは君のせいだよ ○○●●●
(無点) 小さきおなら駅から歩め
(無点) 汗臭く日の暮れる
(無点) 心配して損した前歯欠けてる
(無点) 政治を憂いて元気な老人たち
(無点) うらぶれて私の影を踏む
(無点) ガソリンスタンドは、まばゆい
(無点) いつまでも玄関先の野あざみ


特選(◎)2点、並選(○)1点、逆選(●)-1点として集計


作者発表


【渋谷知宏】
あー死にたい。でも死ねないのは君のせいだよ
くそ暑い日の昼飯の味噌汁
空蝉のくるぶしあたり


【春風亭馬堤曲】
うらぶれて私の影を踏む
日陰ばかり歩く
いつまでも玄関先の野あざみ


【白川玄斎】
朝刊に裏切られる試合の結末
君への仇討のために幸せになろう
政治を憂いて元気な老人たち


【天坂寝覚】
雨が長居させてくれた
もういい月がでた
みんな棄てて帰る海風がすずしい


【中筋祖啓】
小さきおなら駅から歩め
ガソリンスタンドは、まばゆい
キィーン!ポールにカバンが当たったぞ


【馬場古戸暢】
酔いたい夜の酔えない
若気の至りの上限にいる
汗臭く日の暮れる


【藤井雪兎】
乾いた土に雨のまるさ
花の名前で雨に濡れている
稲妻にこの姿見せに行く


【松田畦道】
心配して損した前歯欠けてる
なにができるミシンの音か
花の名を忘れた口へ匙を運ぶ


【矢野風狂子】
桃そっと置かれたまま腐っとる
蟷螂の子がポトリと落ちてもがくメダカの水槽
どっかの犬が吠え続ける夜を帰る


※五十音順