2012年9月28日金曜日

第五回 鍛錬句会

最高得点句
どの向日葵も私を見ない
それぞれのにおいのする金で払っている

最低得点句
ウルフルズ聴いて夏を漕いだ

互選集計
(6点) どの向日葵も私を見ない ◎◎○○
(6点) それぞれのにおいのする金で払っている ◎◎○○
(5点) 空んなった手をまだなめる犬の舌あったかい ◎○○○
(4点) 女も知らずに少年は逝く ◎◎
(3点) ただ生きているだけの腹が鳴った ○○○
(3点) 急いでなにか建ててるそこはかつて工場だった ○○○
(2点) 電話の先に本当にいるのか確かめたくなり ◎
(2点) 朝型人間の懸垂 ○○
(1点) 虫の声無く残暑 ○
(1点) ひとり抱え込んだ膝である ○
(1点) 凌霄花を映した目で狂っている ○
(1点) 金玉の裏の泡を流した ○
(1点) ハトに嫌われる行進 ○
(1点) 開けば錆臭い手の平よ ○
(-1点) 水に足をおく ○●●
(-1点) お願い。もうちょっとしがみつかせて ○●●
(-3点) ウルフルズ聴いて夏を漕いだ ●●●
(0点) 世の中ほどに対立もせぬ二人○●
(無点) さっきから足音が歌ってない
(無点) この一瞬のために死んでもよいと言わなくなり
(無点) 見ただけでおいしいよと言うインド人
(無点) 酔いどれた月との会話楽しんでいたんだけどね
(無点) 青い月夜にも人の死ぬ
(無点) 美味いラーメンを出して歯が無い


※特選(◎)2点、並選(○)1点、逆選(●)-1点として集計。

作者発表

渋谷知宏
ひとり抱え込んだ膝である
酔いどれた月との会話楽しんでいたんだけどね
お願い。もうちょっとしがみつかせて

白川玄齋
電話の先に本当にいるのか確かめたくなり
世の中ほどに対立もせぬ二人
この一瞬のために死んでもよいと言わなくなり

天坂寝覚
ただ生きているだけの腹が鳴った
水に足をおく
空んなった手をまだなめる犬の舌あったかい

中筋祖啓
見ただけでおいしいよと言うインド人
朝型人間の懸垂
ハトに嫌われる行進

馬場古戸暢
女も知らずに少年は逝く
ウルフルズ聴いて夏を漕いだ
金玉の裏の泡を流した

藤井雪兎
さっきから足音が歌ってない
美味いラーメンを出して歯が無い
それぞれのにおいのする金で払っている

松田畦道
どの向日葵も私を見ない
急いでなにか建ててるそこはかつて工場だった
凌霄花を映した目で狂っている

矢野風狂子
虫の声無く残暑
青い月夜にも人の死ぬ
開けば錆臭い手の平よ

※五十音順。

第五回 研鑽句会

最高得点句
母が縮んで老婆

最低得点句
ヤナギしおれてツクツクボウシ
健やかなる者を 蝕む者としての 私
あの街も 気温7度か 雨空か



互選集計
(6点) 母が縮んで老婆 ◎◎○○
(4点) 燕の白い腹が 見えた瞬間 ◎○○
(3点) 急行の止まらぬ駅にある 人のいとなみ ◎○
(2点) わらじ編んだら しあわせになれるか ◎○●
(2点) 今日も生き抜いた 母が居て 我が家 ◎
(2点) 鼻のしたに汗溜めた 友人来たる ◎
(2点) 春の布団が 冷たい ○○○●
(2点) 出せば出したで後悔する便り ○○
(2点) いずれご破算になるまでの ひとつの夜を眠る ○○
(2点) あの子の顎の線に似た いずれ満ちる月 ○○
(2点) 潮風に黙って吹かれる母が居る ○○
(2点) 轢死のあった踏切を渡る、夕暮れ前。 ○○
(1点) 思い出は 塗装の剥げた 積み木 ◎●
(1点) どの子の名前つぶやいてみようか 帰り道ぽつり ○
(1点) 北関東の広い空の 曇ったり晴れたりを 見上げ ○
(-1点) ヤナギしおれてツクツクボウシ 〇●●
(-1点) 健やかなる者を 蝕む者としての 私 ●
(-1点) あの街も 気温7度か 雨空か ●
(0点) 親鴨 取舵 仔鴨 宜候 ○●
(無点) 暑気押し分けて千葉行総武線代々木着
(無点) 時間作って 秒針の音 数える
(無点) 竹笹の場所ばかりが あかるい緑で
(無点) 雪駄引きずって 紫の花の前
(無点) 母が 日向を向いて かき餅を食う
(無点) 母ひとしきり嘆いたあとの寝息すかすか
(無点) 親子連れの入道雲 立ち上がる
(無点) 母の寝息に 耳すます午後
(無点) 池もに灯りが写り出したから 帰ろう
(無点) 雨の日に 老いゆく母が居る
(無点) 野毛の猫も 逃げる


※特選(◎)2点、並選(○)1点、逆選(●)-1点として集計。

作者発表

【なかぎり】  (自由律な会「アぽろん」代表)
ヤナギしおれてツクツクボウシ
暑気押し分けて千葉行総武線代々木着
時間作って 秒針の音 数える
燕の白い腹が 見えた瞬間
親鴨 取舵 仔鴨 宜候
わらじ編んだら しあわせになれるか
竹笹の場所ばかりが あかるい緑で
今日も生き抜いた 母が居て 我が家
春の布団が 冷たい
思い出は 塗装の剥げた 積み木
どの子の名前つぶやいてみようか 帰り道ぽつり
出せば出したで後悔する便り
雪駄引きずって 紫の花の前
いずれご破算になるまでの ひとつの夜を眠る
あの子の顎の線に似た いずれ満ちる月
北関東の広い空の 曇ったり晴れたりを 見上げているか
母が 日向を向いて かき餅を食う
健やかなる者を 蝕む者としての 私
母ひとしきり嘆いたあとの寝息すかすか
鼻のしたに汗溜めた 友人来たる
親子連れの入道雲 立ち上がる
潮風に黙って吹かれる母が居る
急行の止まらぬ駅にある 人のいとなみ
あの街も 気温7度か 雨空か
母の寝息に 耳すます午後
池もに灯りが写り出したから 帰ろう
轢死のあった踏切を渡る、夕暮れ前。
雨の日に 老いゆく母が居る
母が縮んで老婆
野毛の猫も 逃げる

2012年9月23日日曜日

七句


「甥」

すだれの影に転がしておいた甥だ

ようやく慣れたはずの甥が逃げた


お年玉が欲しい甥の後ろに妹がいる


甥と昼寝の真夏日

甥の転がり九十度


甥を抱いてとんぼの群れ


甥のあつさもあついあつさ



※既に発表した句です。近作ではありませんが、あしからずお願いいたします。

2012年9月10日月曜日

『ノイズ!ノイズ!ノイズ!』

 以前、何かの本で「チンパンジーの笑顔は恐ろしい」という記述を目にしたことがあった。何でも、その著者が語るには動物の笑顔を見ると、そこに人間が失ってしまった野生の中の狂気を垣間見てしまい、彼はどうにも恐ろしくなるのだという。だから、その著者は老若男女の誰もが可愛い、面白いと表現するチンパンジーの笑顔を見ても、大口を開けて鋭い犬歯を剥き出しにして笑う姿に狂気を感じるのだそうだ。

 俺は目の前に座り、嬉々として話をしているドンキーの笑顔を眺めながら、頭の片隅でボンヤリとそんな事を思い出していた。ドンキーとは、俺のガキの頃からのツレのアダ名で、その由来は勿論、任天堂が生んだ『マリオ』と並ぶ人気キャラクター『ドンキーコング』から来たモノだった。因みに、俺のツレのドンキーは任天堂の『ドンキーコング』の様に人気者では無い。どうにも頭が悪い上に、そのツラは二目と見られたもんじゃ無い程に不細工だったし、なんと言っても、奴の極度な斜視っぷりは、初対面の相手が大抵、目のやり場を無くして困り果てる程のシロモノだった。
 しかしながら、神様とは粋な野郎で、そんなドンキーには人並み以上の腕力を与えてくれた。ところが神様の仕事ってヤツは、何故かいつも片手落ちで、ドンキーはその人並み外れた腕力と引き換えに、理由無き暴力を振るう事に何ら躊躇いを必要としない想像力の欠如した精神構造を持って生まれてきていた。つまりドンキーとは、そんな男だった。だからドンキーはいつだって暴力によって群れを統べる事の出来る世界に身を置いていたし、実際そんな世界こそ、彼が最も生きる意義を見出せる世界だった。
 それにしても、その日のドンキーは上機嫌だった。話題は昨夜の出来事ばかり。ドンキーは、さも面白くて仕方が無いといったカンジでビールを呷りながら、その話を続けていた。
「昨日はどうにも寝苦しかったからよ、何人か呼びつけて河川敷の辺りをブラブラしてたんだよ。そしたら河川敷の駐車場の隅の方に車が一台、エンジン掛けて停まってんじゃねぇか。さあ、楽しい時間の始まりだぜ」
 話しながらも込み上げてくる笑いを堪えきれず、ドンキーは「ヒヒヒヒ……」と、会話を遮る思い出し笑いを漏らし続けた。
「俺は、ピンと来たからよ、スグに上半身裸になって、他の全員にもシャツを脱ぐ様に命令したんだよ。そして、全員が脱いだシャツを川の水でビシャビシャに濡らして、静かに車の周りに近付いたんだ。そしたら、案の定、車の中で若いカップルがイチャ付いていやがたからよ、だから、この俺様が仕置きしてやったんだよ。アハハハ……」
 ドンキーと俺は水滴で濡れた瓶ビールを互いに手酌しながら、安居酒屋の油で汚れたテーブルに所狭しと並べられた焼き鳥を次々に口の中へと放り込んでいった。俺達は育ちの悪さから来るものなのか、どうしてもガツガツとした意地汚い喰い方しか出来無い。犬の様に餌をがっつき、酒を浴び、キチガイの様に吠えるばかりだ。我ながら嫌になっちまう。向かいに座るドンキーのツラを見ると、ビールの酔いで充血した奴の目玉が、下品な笑顔で話し続けるその話に何処か狂気じみた熱が帯び始めているのを感じさせた。
「俺達がソッと車を取り囲んだから、車ん中のカップルは俺達に気付きもしねぇで、スケベな事で頭が一杯になってやがんだよ。恥ずかしげも無く抱き合ってやがる。俺達は一斉にバチャバチャと濡れたシャツをフロントガラスに叩きつけて貼り付けると腐れカップルの視界を遮ってやったんだよ。そのまま俺達は滅茶苦茶にドアやボンネット、天井なんかを力任せに殴ったり蹴ったりしてやったワケさ。笑えるだろ?」
 ドンキーはコップに残ったビールを一気に飲み干すと、気持ち良さそうにゲップを一発済ませて笑った。
「たまんねぇだろうな、天国から一気に地獄だぜ。何が何だか解らなかったんだろうよ、慌てて車から男が転がり出てきたから、俺がイキナリ、ソイツの鼻っ面を思いっ切り蹴り飛ばしてやったんだ。そしたら、鼻っ面蹴飛ばしたつもりが、どうも前歯を折っちまった様で、口ん中を血だらけにしてるわりにゃあ、鼻血を一滴も垂らしていやがらねぇんだ、だから、もう一発顔面に喰らわしてやったよ。今度はキレーに入って、笑えるぐらい鼻血を出してくれたねぇ。『あーっ、あーっ』なんて言いながら地面を転がってるから、笑った笑った。他の奴が腹の辺りを蹴り飛ばしたら、蹲って亀みたいになりやがったから、後は全員で袋にしてやったぜ」
 ピチャピチャとドンキーは指先についた油をしゃぶっている。
「女の方はどうしたんだよ」
 俺は手羽先に喰らい付きながら話の先を促した。
「聞かなくても解ってんだろうがよ。へへへ……。結構イイ女だったぜ。一、二発頬を張ってやったらチャンと言う事を聞く様になったからな。イチャイチャしてたわりには、全然濡れて無くて、最初ちょっとだけギシギシしたけど、三回も深く衝いてやりゃあ滑りも良くなって、しっかりグチュグチュとヤラしい音を立てたぜ。ただムカつく事にその女、一回も声を出さねぇんだよ」 「アンタが下手なだけじゃねぇの?」
 俺が茶々を入れると、ドンキーはゲラゲラと更に大きな声で笑った。
「でもよ、男の方はイイ声で鳴いてたぜぇ。『ごめんなさい、ごめんなさい』って、テメェの女が犯されてる間中、蹲って謝ってやがるの。ヒャハハハ……」
 ドンキーは涙を流さんばかりに大笑いしていた。
「お前も今度、一緒にやってみたらどうだ?」
「俺はパスだよ。その内、捕まってもしらねぇぜ」
 ドンキーはビールを呷ると、ニヤニヤしながら俺のコップにビールを注いだ。
「これはやったもんにしか解んねぇんだよ。何ちゅうのかよ。祭りなんだよ、祭り。頭ん中にさ、祭りの時みたいにスピーカーからガンガン流れる陽気な音楽や人の笑い声、話し声が聞こえるんだよ。車のクラクションや蝉の声も聞こえる。あのグラグラと全身が湯だって頭ん中が沸騰してる様な感覚、浮かれた祭囃子を体感しちまったら、何も無い日が死んじまってるみたいに無味無臭、カラッカラに乾燥して、カラーじゃ無い白黒の世界に見えちまうんだよ。それは、どうしようも無く糞つまんねぇんだよ」
 俺はドンキーに注がれたビールの泡を見詰めながら「この世間で真っ当に生きていくにゃ、そいつがノイズだって事に気付かなきゃ駄目なんだぜ、ドンキー……」と心の中で呟やいていた。次の瞬間、俺はそのビールを一気に呷ると、ドンキーに向かって言い放った。
「俺は、アンタと違って大人になったんだよ!」
 ドンキーは「アヒャヒャヒャハハハ……」とキチガイの様に哄笑すると、鉛の様に重い拳で俺を思いっ切りブン殴った。殴られた俺はビール瓶や焼き鳥の並んだ皿を薙ぎ倒して椅子ごと後ろにフッ飛ぶと、そのまま固い床の上に転がった。ゴツンと激しく後頭部を床にブツけると、成る程、ガヤガヤと俺の頭ん中にも不愉快なノイズが流れ込んでくるのが理解出来た。


  なにもかも月もひん曲つてけつかる  栗林一石路



2012年9月5日水曜日

七句

「女」

自身が男だからだろうか、過去に拾った句を見ていると「女」がやけに目につくのである。自身が女であれば、「男」を詠むようになるのだろうか。とにもかくにも、「女」好きと呼ばれないことを切に願う。

存外に短いスカートだった

遠く女子高生は夏服

おごらせない女を誘う

女物の傘に寄り添う

しきりに振り返ってくる深夜の女だ

女の鬢も汗ばむ夕刻

風呂上がりの女が歩く夜だ


※当初は、タイトルを「近作七句」としていましたが、「近作」とは「新作」であるらしいので、「近作」を削りました。七句はいずれも、今夏の『草原』に発表済の句です。

2012年9月3日月曜日

言葉のバカップルの誕生


言葉のバカップルの誕生について  記者 (中筋 祖啓)

趣味 すばやさ 
かつて、海紅の句会にて、「趣味 すばやさ」という句を投句したのですが、
その時は、さほど、目立つことなくそれなりに終わってしまいました。

が、しかし、やはりこの句が何故か異常に心地よく、
ここ最近、「うーん、やっぱり、趣味 すばやさだ。」
と、一人で思い出し笑いをする習慣が抜けきれなくなってしまっていました。
なぜか、「趣味 すばやさ」については、思い出し笑いが留まる所が無い。
その原因について、今回のVT句会に参加して、皆さんの句評を読むにいたり、
「どうやら、これは、言葉のバカップルを発見したようだ!」
と、さらに笑いはじめる事態になってしまいました。

「趣味」という概念と、「すばやさ」という概念が組み合わさることは、通常ありえないので、
これは、あきらかにバグなのですが、
しかし、もしも、本当に、すばやく動くこと自体を趣味だと定義してしまうことができたなら、
これは、尋常でなく、楽しい毎日が続く事になります。

・服を素早く着替えるのが、趣味
・階段を素早く駆け上がるのが、趣味
・人との打ち合わせを素早く確認するのが、趣味
・排便を素早く行うのが、趣味
・早歩きが、趣味

どこもかしこも、趣味だらけ、こんな面白い事は無い。
「長所 すばやさ」としなかった原因は、私自身は、他人と比較すると、
実は大変にドンくさい人間で、全くすばやくなど無いので、とても「長所 すばやさ」とは言えないからです。
あえて意識して急いでいないと、周りのスピードについていけないのです。
基礎スピードが人よりも遅いため、素早く動く事を、あえて意識し続ける必要があった。
それならいっそのこと、素早さを趣味にしてしまえば、あら不思議!尋常でなく楽しい毎日。

さて、句の解釈はここまでで、これからが本題です。

・言葉のバカップルの誕生とは?

ちょっとおかしな組み合わせだが、何故か、腐れ縁と言いますか、無性にはずすことができない言葉のカップル。

いきなり話が飛びますが、ちょうど、お笑い芸人のオードリーって、すごいバカップルだなあ、と日ごろ思っていたのです。
春日と若林は、普通の概念で考えてみると、はたしてコンビとしてちゃんと機能しているのかどうなのか?
理屈では測れないおかしな状態になっているのですが、
「このコンビは、バカップルだ!」
と、解釈するならば、こんなに腐れ縁で仲の良いお笑い芸人も他にいなさそうだな、と思いました。
お互いの長所よりも、むしろお互いの短所のほうが上手い具合に相性よく通じ合っているような構図になっていて、だから、漫才の能力云々とかよりも、お互いの性格の短所を補いあう相性の良さから、オードリーは別れないのだろうと。

以前、私の詠みました
・大食卓帝国陸海軍
という句も、やはり、言葉のバカップルであることになります。

大日本帝国陸海軍 + 食卓 = 大食卓帝国陸海軍

という組み合わせは、表面上は、バグっていて、なんのこっちゃ?となるわけですが、
しかし、これが、どうも、腐れあう。腐れあう。

食卓が広大に、帝国のように、栄えている様。
軍事国家のように、安定することなく、栄えては滅び、栄えては滅びる。食卓が。一日三回も。火に焼かれ。欲に食らわれ。金を掛け。生き物を犠牲にして。

食卓が・・・!!

うーん、これは、やはり、バカです。
けれども、たしかに、「大食卓帝国陸海軍」なんとなく、そう呼びたくなるのです。
この現象が、言葉のバカップル。

言葉のバカップルとは、表面上の相性の悪さを補うくらいに、
裏の腐れ縁の部分での相性の良さから、言葉と言葉がくっついてしまって離れなくなった、
なんとも、滑稽かつ真剣な状態をさすようです。
言葉達も、文体の秩序を維持するためや、読み手の思いを伝えたいといったため、色々と大変なようで、時として、バカップルにならざるを得ない。

滑稽かつ真剣。真剣かつ滑稽。

よって、ここに、言葉のバカップルの誕生を認めたいと思います。

バカだけど、くっついちまったんだから、しょうがあるまい、祝ってみようか!と、こうなりました。

関係ないけど、最後に「洒落男」という名曲を添付いたします。

2012年9月2日日曜日

第一回 VT句会(2012秋)


最高得点句
ふるさとは鞄の底のような闇

最低得点句
およそ天下のすべての男らのてのひらと手の甲とを消毒せよ

互選集計
(8点) ふるさとは鞄の底のような闇 ◎◎◎○○
(5点) 家族はあなただけになりましたと真夜中にぽつり ◎○○○
(3点) ラストシーンに蜘蛛の降りる ◎○
(3点) 豆腐屋の玻璃に「今朝の詩」貼られている ◎○
(3点) 新しき墓と花火みる ○○○
(3点) 趣味 すばやさ ◎○○●
(3点) 喧嘩に負けて恐竜図鑑読む ◎○
(2点) 雨だれに沈む道路の青信号 ○○
(2点) 恐らくはコロスをソグと読んでいる ○○
(2点) もうひとつ傘貸して見送る ◎
(2点) 乾いた音させて犬が食うている蝉だ ○○
(2点) 影、乾いてゆく ◎
(2点) 向日葵やあたまのなかは鏡張り ◎
(1点) 見つけたぞ宝の地図の地図の地図 ◎●
(1点) 座礁晴。 ◎●
(1点) おじさんの団扇の裏に松浦亜弥 ○
(1点) 暑すぎる出来る限りをデストロイ ○
(1点) 世の中ほどに対立もせぬ二人 ○●
(1点) 路上には吸殻と夏雲の影 ○
(1点) 恐竜のもっともくらきミュージアム ○
(1点) 偽名も一緒に眠っている ○
(1点) 穴惑標識朽ちしまま荒野 ○
(1点) きみが空蝉を見せるかわりのなにかがない ○
(1点) 過ちて東京の路地裏の水 ○
(1点) 十円で河童の木乃伊見る青野 ○
(1点) 秒針を追う長針を追う短針よ ○
(1点) 胎盤流れて夏の河またぐ ○
(1点) 笛吹いて蜘蛛垂直に糸垂らす ○
(1点) 眠る恐竜に月光 ○
(1点) 幾たびも飛ぶ夢の崖夕蜩 ○
(1点) 冷麦や朴訥として恐妻家 ○
(1点) 冬銀河一皮むけば腫あれるや ○
(1点) ひとの手の恐ろしく虫殺す毎 ○
(1点) 売女に嘘で媚びてる
(0点) 四十女の陰部を弄る夜が蒸す ○●
(0点) 座布団のご冗談にも程がある ○●
(-1点) 恐ろしやサンバイザーのママチャリが ●
(-1点) 発泡スチロールの甲冑のアイドルらと孔雀と ●
(-1点) 炭酸はじける入道雲 ●
(-1点) 夏空を恐竜二匹が流れ行く ●
(-1点) 撫でる頭が無い ●
(-1点) 腰に提げた赤色灯が俺の所在地 ●
(-2点)  およそ天下のすべての男らのてのひらと手の甲とを消毒せよ ●●


※特選(◎)2点、並選(○)1点、逆選(●)-1点として集計。

作者発表

【青山茂根】
眠る恐竜に月光
不在しづかに額縁の向かう側
穴惑標識朽ちしまま荒野
影、乾いてゆく
新しき墓と花火みる

【天坂寝覚】
ひとの手の恐ろしく虫殺す毎
過ちて東京の路地裏の水
空を飛ぶわけにもいかず影を踏む
わざと水たまり踏んで笑う
もうひとつ傘貸して見送る

【丑丸敬史】
恐れよわが影のみちる八月の道
冬銀河一皮むけば腫あれるや
聖痕のまたひとつふゆ鏡餠
大亂の倭國に虹の羽化
空蟬の杯をみたす甘露

【興梠隆】
恐らくはコロスをソグと読んでいる
秒針を追う長針を追う短針よ
ふるさとは鞄の底のような闇
座礁晴。
撫でる頭が無い

【柴田千晶】
恐怖漫画の少女蝿捕蜘蛛まみれ
幾たびも飛ぶ夢の崖夕蜩
十円で河童の木乃伊見る青野
豆腐屋の玻璃に「今朝の詩」貼られている
胎盤流れて夏の河またぐ

【渋谷知宏】
恐ろしいことに君がいない夏は来ぬ
笛吹いて蜘蛛垂直に糸垂らす
路上には吸殻と夏雲の影
腰に提げた赤色灯が俺の所在地
乾いた音させて犬が食うている蝉だ

【春風亭馬提曲】
恐竜の骨に響や法師蝉
川遊び少女のリボン解けけり
暑すぎる出来る限りをデストロイ
売女に嘘で媚びてる
夏空見上げて目が痛むだけ

【中筋祖啓】
恐ろしやサンバイザーのママチャリが
座布団のご冗談にも程がある
雨だれに沈む道路の青信号
趣味 すばやさ
息がえぐる

【中村安伸】
恐竜のもっともくらきミュージアム
向日葵やあたまのなかは鏡張り
秋立つや原稿用紙束厚し
発泡スチロールの甲冑のアイドルらと孔雀と
およそ天下のすべての男らのてのひらと手の甲とを消毒せよ

【馬場古戸暢】
夏空を恐竜二匹が流れ行く
蝉が鳴く根元で弟泣いている
おじさんの団扇の裏に松浦亜弥
汗ばむ夜の薬二錠
炭酸はじける入道雲

【藤井雪兎】
喧嘩に負けて恐竜図鑑読む
くわえてくトースト焼いて遅刻する
見つけたぞ宝の地図の地図の地図
ラストシーンに蜘蛛の降りる
偽名も一緒に眠っている

【松田畦道】
冷麦や朴訥として恐妻家
或る頃はジョニーと呼ばれ生身魂
人型に黴生えておりいつも留守
家族はあなただけになりましたと真夜中にぽつり
きみが空蝉を見せるかわりのなにかがない

【矢野風狂子】
恐ろしき世界へ座敷犬の吠え狂う
遠花火まどろみのなか悪夢に入る
昼座敷蚊遣り香のみ減り続け
陽を縋り蔓草のどこまでもどこまでも
四十女の陰部を弄る夜が蒸す

※五十音順。

2012年9月1日土曜日

第四回 研鑽句会

最高得点句
石になってとんぼうとまらせている

最低得点句
樹の下へ夏が馬のしつぽ
雑踏のエスコルク街の舗道をぬらした雨
青葉の山の湯にわが手わが足

互選集計
(5点)石になってとんぼうとまらせている◎◎○
(3点)きれいな指が字を書いて病んでゐる◎○
(3点)炎天日日丘を伐りひらいてゆく◎◎●
(3点)まっくろなからだ土つけてきた◎◎●
(3点)きょういのちありあすの時計まいておく○○○
(2点)劫火のかがやきの海へ先あらそうて跳ぶ◎
(2点)まいた種が芽を出すたしかさ雨ふる○○
(2点)思うて言わず二人がひとりとなる日のこと○○
(2点)月さすてのひらをあはせる○○
(2点)生来の無器用な手つき仏へ花を挿す○○
(2点)あなたが逝ってからもこんないい夕ぞらの蜘蛛が巣を◎
(2点)あさひ蚊がへやをでてゆく○○○○●●
(2点)ぴよぴよ箱からぴよぴよ網の中あるいてきいろ○○
(1点)夜のつめたい日本の水のむ○
(1点)熱もどうやらあけがたの雲がうごいている○
(1点)台風一過あかるい月です精霊さんお立ちです○
(1点)最後の別れとも窓の白衣の君へ手をふる○
(1点)いのち海に浮き母が朝起せらるるころか○
(1点)うちの正月に子の墓の梅の一枝もらう○
(0点)少女ら縄とびするスカートがすこしみぢかくて夏の日○●
(0点)友の戦死の、そんな句もって句会にきた○●
(-1点)樹の下へ夏が馬のしつぽ●
(-1点)雑踏のエスコルク街の舗道をぬらした雨●
(-1点)青葉の山の湯にわが手わが足●
(無点)きけば石になっている石にあいにゆく
(無点)仕合せというどうみてもかなしい女のうなじ
(無点)ゆきのはらゆきのやねのおじぞうさん
(無点)ちちははのとほく月のよい寝床もしいてもらつて
(無点)船が着いたので女は朝の口紅もさしをえた
(無点)話せば娘四人をもつ悩みをこの母親の白髪

※特選(◎)2点、並選(○)1点、逆選(●)-1点として集計。

作者発表

【岡野宵火】
船が着いたので女は朝の口紅もさしをえた
少女ら縄とびするスカートがすこしみぢかくて夏の日
きれいな指が字を書いて病んでゐる
月さすてのひらをあはせる
ちちははのとほく月のよい寝床もしいてもらつて
ぴよぴよ箱からぴよぴよ網の中あるいてきいろ
樹の下へ夏が馬のしつぽ
あさひ蚊がへやをでてゆく
あなたが逝つてからもこんないい夕ぞらの蜘蛛が巣を
友の戦死の、そんな句もって句会にきた

【松尾あつゆき】
熱もどうやらあけがたの雲がうごいている
ゆきのはらゆきのやねおじぞうさん
うちの正月に子の墓の梅の一枝もらう
生来の無器用な手つき仏へ花を挿す
石になってとんぼうとまらせている
台風一過あかるい月です精霊さんお立ちです
仕合せというどうみてもかなしい女のうなじ
思うて言わず二人がひとりとなる日のこと
きょういのちありあすの時計まいておく
きけば石になっている石にあいにゆく

【山田句塔】
雑踏のエスコルク街の舗道をぬらした雨
最後の別れとも窓の白衣の君へ手をふる
劫火のかがやきの海へ先あらそうて跳ぶ
いのち海に浮き母が朝起せらるるころか
青葉の山の湯にわが手わが足
話せば娘四人をもつ悩みをこの母親の白髪
炎天日日丘を伐りひらいてゆく
まっくろなからだ土つけてきた
まいた種が芽を出すたしかさ雨ふる
夜のつめたい日本の水のむ

※五十音順。

第四回 鍛錬句会

最高得点句
俺の願いの落ちとる七夕

最低得点句
真面目が過ぎて詩歌にならず

互選集計
(7点)俺の願いの落ちとる七夕◎◎◎○
(6点)鳴らない電話と胡坐かいてる◎○○○○
(3点)雨のまにまにアブラゼミ◎○
(3点)苦瓜をひとつ実らせる人生か○○○
(3点)皆出て行った花火の音○○○
(2点)全身を口にして黙っている◎
(2点)車の中の独り夢から覚める○○
(2点)チョークで書いた線路どこへも行けない○○
(2点)彼方からパンツと告げし乙女二人◎○●
(2点)賽銭箱から千円落ちポッケへしまう◎
(1点)時計草さるすべりと並び夏夜○
(1点)頑張らない君は頑張れと言うなかれ◎●
(1点)なかなか話さない口のくしゃみ○
(1点)針貫く黄金虫の硬質の輝き○
(1点)舌絡み合って熱帯夜○○●
(1点)風に吹かれて転がる蝉だ○
(1点)煙草の煙の向こうはスコール○
(1点)ドクダミのポンポン隊で応援します○
(1点)一日左利きのふりする○○●
(-1点)この蝉の声を俺はきいたか
(-4点)真面目が過ぎて詩歌にならず●●●●
(無点)空が青い風邪をひいたことにしよう
(無点)若い女の裸を愉しみ八月九日が来る
(無点)遮るくらい見上げた空に雲カーテン
(無点)大きな虫が入ってきた夏の天井
(無点)水の音して街は留守
(無点)ガム踏んで思い出す過去もある

※特選(◎)2点、並選(○)1点、逆選(●)-1点として集計。

作者発表

【渋谷知宏】
風に吹かれて転がる蝉だ
車の中の独り夢から覚める
この蝉の声を俺は聞いたか

【春風亭馬堤曲】
時計草さるすべりと並び夏夜
賽銭箱から千円落ちポッケへしまう
水の音して街は留守

【白川玄齋】
苦瓜をひとつ実らせる人生か
頑張らない君は頑張れと言うなかれ
真面目が過ぎて詩歌にならず

【天坂寝覚】
空が青い風邪をひいたことにしよう
皆出て行った花火の音
大きな虫が入ってきた夏の天井

【中筋祖啓】
遮るくらい見上げた空に雲カーテン
ドクダミのポンポン隊で応援します
彼方からパンツと告げし乙女二人

【馬場古戸暢】
俺の願いの落ちとる七夕
煙草の煙の向こうはスコール
雨のまにまにアブラゼミ

【藤井雪兎】
ガム踏んで思い出す過去もある
全身を口にして黙っている
なかなか話さない口のくしゃみ

【松田畦道】
鳴らない電話と胡坐かいてる
チョークで書いた線路どこへも行けない
一日左利きのふりする

【矢野風狂子】
針貫く黄金虫の硬質の輝き
舌絡み合って熱帯夜
若い女の裸を愉しみ八月九日が来る

※五十音順。