2013年6月23日日曜日

鉄屑詩集を読む

※鉄屑詩集「子を連れて」より。

抱いた子が見付けた一番星
この句は私の記憶に強く残っている。夕暮れ時の家族との生活のひとこまが切り取られた、美しい句。

子を抱いて早く寝ろ寝ろうろうろおろおろ
なかなか寝付いてくれない子を抱いて、歩き回っている様が浮かんだ。最後の「おろおろ」が面白い。

乳吐いても微笑んでくれる
これも今だに諳んじることができる句。よくお子さんをみていないと詠めない。

雪待つ子の前にみぞれ
子どもの「あれー?」という顔が浮かんでくる。しかしすぐに気を取り直し、みぞれにはしゃいだことだろう。

洟垂れが私の胸に飛び込んでお出迎え
家庭を持つ人ならではの句だろう。こちらのシャツは涎まみれになっているだろうが、嬉しいものである。

サンタ知らない父でサンタになる
サンタの格好をしたのかどうかが気になるところ。そういえば私もサンタを知らない。そういう習慣を持たない家に育ったのだ。

子らがしがみついてきた外は雪だ
はしゃぎながらしがみついてきたのだろう。「雪やこんこん~」を皆で歌いたくなる。

皿に残ったサンタ欠けている
クリスマスケーキの上にのっている、サンタの砂糖菓子。少しかじったのは、お子さんだろうか。

得意気に見せる娘の掌に天道虫
愛しい生活詠だが、作者の胸中には思うところがあったようだ。詳しくは『草原』25-07号「特集 戦争俳句」を参照。

小さな傘と長グツ駆けてゆく大きな水溜まり
その後ろからゆっくりと後を追う詠み手まで想像できる。

8 件のコメント:

  1. 「皿に残ったサンタ欠けている」

    これはいいですね。ケーキの上に乗ってるので食べられるんだろうとかじってみると案外美味しくないという(笑)
    これ、かじったのがお子さんじゃなくて錆助さんだったらまた違った面白さですね。

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    1. 大人がかじった可能性も考えられますね。サンタの頭頂部を噛み砕いている様を想像しました。

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  2. 「抱いた子が見付けた一番星」

    一番良いなと思いました。抱いている赤ん坊が首を向けた先に一番星があった。その赤ん坊が成長して将来向かう場所、高い志を持って進んでいく将来を予見しているように思いました。私も高校の頃、天文部に所属しておりましたので、この句に最初に目が行きました。錆助さんのご家族を詠んでいるのがいいなと、この一連の句を読んで思いました。

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    1. 一番星を見るたびに、この句を諳んじてしまいます。あたたかくなる佳句だと思います。

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  3. 『乳吐いても微笑んでくれる』

    こちらを頂きます。実際に子供を育てていないと出てこない句ですね。赤ん坊はげっぷをするついでに、げほっと乳を戻したりします。慣れていない人間がそれを目の当たりにすると「大丈夫!?」と慌てたりするんですが、親は平気なんですね。当の赤ん坊もまったく平気。そういう、すくすくと育っていく子供と親の信頼関係、のようなものを微笑ましく感じました。

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    1. こういう場面を目にすると、私も慌ててしまいます。親句とでもいいましょうか、どっしりと構えていないと詠めなさそうです。

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  4. 「子を抱いて早く寝ろ寝ろうろうろおろおろ」

    この句には特に共感を覚えます。切り口がまた絶妙ですね。今日の私もこんな感じでした。

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    1. こういう句を読むと、ほのぼのしています。親は大変ですが、こうしたうろうろおろおろもまた、幸せの一部なのでしょうね。

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