2013年6月3日月曜日

第13回研鑽句会 結果発表


(最高得点句)

(6点)杜若(かきつばた)にたりやにたり水の影○○○○○○○●

(6点)夕顔にみとるるや身もうかりひょん◎◎○○


(3点)春やこし年や行けん小晦日(こつごもり)◎◎●
(3点)年は人にとらせていつも若(わか)夷(えびす)◎○
(3点)京は九万九千くんじゆの花見哉○○○○●
(3点)盛なる梅にす手引(でひく)風も哉◎○
(3点)春風にふき出し笑う花も哉◎○
(2点)あち東風(こち)や面々さばき柳髪◎○●
(2点)降音(ふるおと)や耳もすう成(なる)梅の雨◎
(2点)岩躑躅(いわつつじ)染むる泪やほとどき朱○○
(2点)七夕のあはぬこころや雨中天○○○●
(2点)萩の声こや秋風の口うつし○○
(1点)花は賎(しず)のめにもみえけり鬼莇(おにあざみ)◎●
(1点)時雨(しぐれ)をやもどかしがりて松の雪○
(1点)うかれける人や初瀬の山桜○
(1点)秋風の鑓(やり)戸(ど)の口やとがりごゑ○
(0点)姥(うば)桜(ざくら)さくや老後の思い出(いで)○●
(0点)月ぞしるべこなたへ入(いら)せ旅の宿
(0点)花の顔に晴(はれ)れうてしてや朧月
(0点)餅雪をしら糸となす柳哉
(0点)花に明ぬなげきや我が歌袋
(0点)糸桜かへるさの足もつれ
(0点)風吹けば尾ぼそうなるや犬桜
(0点)五月雨に御物(おんもの)遠(どお)や月の顔
(0点)しばしまもまつやほととぎす千年○●
(0点)たんだすめ住めば都ぞけふの月
(0点)影は天の下てる姫か月のかお
(0点)寝たる萩や容顔(ようがん)無礼花の顔
(0点)月の鏡小春にみるや目正月○●
(ー1点)なつちかし其(その)口たばへ花の風●

 (以上、30句)
※特選(◎)2点、並選(○)1点、逆選(●)-1点として集計。

(作者発表)

・全部 松尾芭蕉

1.春やこし年や行けん小晦日(こつごもり)
2.
(うば)(ざくら)さくや老後の思い出(いで)
3.
月ぞしるべこなたへ入(いら)せ旅の宿
4.
年は人にとらせていつも若(わか)(えびす)
5.
京は九万九千くんじゆの花見哉
6.
花は賎(しず)のめにもみえけり鬼莇(おにあざみ)
7.
時雨(しぐれ)をやもどかしがりて松の雪
8.
花の顔に晴(はれ)れうてしてや朧月
9.
盛なる梅にす手引(でひく)風も哉
10.
あち東風(こち)や面々さばき柳髪
11.
餅雪をしら糸となす柳哉
12.
花に明ぬなげきや我が歌袋
13.
春風にふき出し笑う花も哉
14.
なつちかし其(その)口たばへ花の風
15.
うかれける人や初瀬の山桜
16.
糸桜かへるさの足もつれ
17.
風吹けば尾ぼそうなるや犬桜
18.
五月雨に御物(おんもの)(どお)や月の顔
19.
降音(ふるおと)やもすう成(なる)梅の雨
20.
杜若(かきつばた)にたりやにたり水の影
21.
夕顔にみとるるや身もうかりひょん
22.
岩躑躅(いわつつじ)染むる泪やほとどき朱
23.
しばしまもまつやほととぎす千年
24.
秋風の鑓(やり)()の口やとがりごゑ
25.
七夕のあはぬこころや雨中天
26.
たんだすめ住めば都ぞけふの月
27.
影は天の下てる姫か月のかお
28.
萩の声こや秋風の口うつし
29.
寝たる萩や容顔(ようがん)無礼花の顔
30.
月の鏡小春にみるや目正月

33 件のコメント:

  1. 夕顔にみとるるや身もうかりひょん(6点)

    ◎『今回は鉄塊史上最も難しい選句だったと思う。本句は(うかりひょん)の語感
    で特選とした。ぬらりひょんみたいで面白い。』(畦道)
    ◎)『「うかりひょん」がいいよね。ははは。この「夕顔」は源氏物語の夕顔(あるいはそれに類する女性)だと思うのだがどうだろうか。夕顔の花では「うっかりひょーん」とはならない気がする。』(働猫)
    ○『夕顔に見とれていた様子。身もは身も心もということだろうか。どんな夕顔だったのだろう。』(鴨芹)
    ○『よく分からないけど、妖怪っぽい』(祖啓)
    △『こちらも意味はよく分からないんですが、うかりひょんがものすごくいいです。うかりひょん!!いいじゃないかうかりひょんだもの。うかりひょん!!(^〇^)』(小笠原玉虫)

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  3. 春やこし年や行けん小晦日(こつごもり)(3点)

    ◎『この頃の暦の問題もわかって面白い。季節は自然が作るもので、暦は人が作るもの。今も昔も変わらない。』(雪兎)
    ◎ 「行く年来る年シンプルでよい。」(古戸暢)
    ●「なんか読み方からリズムからうまく理解できなかった。この句がというか、他にもそういう句はありました。」(T宏)

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  4. 年は人にとらせていつも若(わか)夷(えびす)(3点)

    ◎『人間がえびすさまをうらやましいと感じているのか、うらやましいと感じているのはむしろえびすさまなのかもしれない。』(鴨芹)
    ○『才気走った若者の作といった雰囲気が好ましい。面白いかつまらないかでいえ
    ば、つまらないが。』(畦道)

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  5. 京は九万九千くんじゆの花見哉(3点)

    ○「言葉ありきの句だろうが、京での花見を言い表すにはもっとも適当だろう。「哲学の道」を思い出した。」(古戸暢)
    ○『数字のインパクトがすごい』(祖啓)
    ○『賑わっている様子は伝わる。作者もしかしてイライラしているのかな。』(鴨芹)
    ○『音読すると心地いいです。盛大な花見を思い馳せます。』(洋三)
    ●『掛詞は現代の視点、とりわけ字数にとらわれない自由律の立場からすると、遊戯としては面白いが、一生を賭けるほどの表現ではないような気がする。」(雪兎)

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  6. 盛なる梅にす手引(でひく)風も哉(3点)

    ◎『水戸っ子なのでつい梅の句に反応。満開の梅林を冷たい風がさぁっと通っていく感じがして、スゴく好きです。「梅にす手引」「風も哉」の音の響きもいいな。今回の研鑽句会の句は、とっつきにくい感じのが多くて正直戸惑っていたのですが、こちらはリズムも、言葉が想起させる光景も爽やかで、素直にいいなと思いました。好きです。』(小笠原玉虫)
    ○『風は梅の香りを運ぶが、同時に梅の花を散らす。常に「滅び」が含まれているのが季節というものなのだと実感させられる。』(雪兎)

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  7. 春風にふき出し笑う花も哉(3点)

    ◎「この句好きですね。花もというのが作者も笑っているのではないかと理解しました。」(T宏)

    ○)『「ふき出し」がうまい。固い蕾が春の暖かさに次々咲いていく様子を、芽吹く、噴き出すと表現しているのだろう。』(働猫)

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  8. あち東風(こち)や面々さばき柳髪(2点)

    ◎『あちこちという言葉の使い方がなんかいい。』(祖啓)
    ○「美人女将がてきぱきと指示をしている旅館かなと思いました。
    川沿いの旅館かなと思いました。」(白川)
    ●『駄洒落ですね。大好きです。ですが、ここは逆選でいただきます。』(洋三)

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  9. 降音(ふるおと)や耳もすう成(なる)梅の雨(2点)

    ◎『梅雨の句。現代とは違い、雨の日には他の音が聞こえなくなったのかもしれません。』(洋三)

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  10. 杜若(かきつばた)にたりやにたり水の影(6点)

    ○『なんとなく口ずさみたくなる良さがあります。』(祖啓)
    ○)「何に似ているのかわからないが、水面に杜若が映っているところとみた。」(古戸暢)
    ○『似たりや似たり。いずれ菖蒲か杜若、ということなのだとすると、(にたり)
    を助平な男の笑みと解釈しても通じるか。だとしても、(水の影)とは 品がよ
    い。』(畦道)
    ○「にたりやにたり、笑い顏かと思いますが、「似たり」かなと思いました。水に映る影が杜若に似てるのは当たり前ですが、にたりやにたりの表現が良いです。」(T宏)
    ○『「にたりやにたり」には「似ている」と「にやにや笑う」の両方が掛けられているのだろう。杜若に似ていると言えば菖蒲だが、水の影ということは水に映った影なのか。影が似ているのはあたりまえだ。あたりまえのことを言われてもおもしろくない。ではあたりまえではないことなのか。「杜若」は女か。女が水に映る自分に見とれてにやにや笑っている姿か。そう思うとおもしろくなってきた。』(働猫)
    ○『音読の楽しい句。「にたり」は「似たり」でしょうか。狂言の台詞のようです。』(洋三)
    ○『いいですね。すっとした美女を連想させる杜若のような花を、思いっきり妖怪みたいに詠んでる。水辺の妖怪みたいで気色悪い程です!こういう視点いいなと思いました。「梅にす手引」と、どっちを特選にとろうかギリギリまで悩みました。』(小笠原玉虫)
    ●「単純な着目点を、わざわざもったいぶって言っているように思いました。
    少し鼻につくなと思いました。」(白川)

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  11. 岩躑躅(いわつつじ)染むる泪やほとどき朱(2点)

    ○『時鳥は血を吐くといわれることから「ほとヽぎ朱」と掛けたか。私はあまり掛詞は好きではないが、俳句、それも十七字と限定されている場合、表現に幅を持たせるために必要な技巧だったのだろう。』(雪兎)
    ○『いいですね。個人的に躑躅系の花に非常に弱いのと、先日初めて聞いて感激したホトトギスも出てきて、ちょうどいまくらいの季節の夜の物思いって感じがして、非常に好みです。落涙って意外に詠みづらいんですが、「染むる泪やほととぎ朱」ってうまいですね、やりおる…こんなふうにスッと詠みたいものです。』(小笠原玉虫)

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  12. 七夕のあはぬこころや雨中天(2点)

    ○『今回非常にとっつきにくい句が多いなという印象の中でスッと入れた句。雨中天ってカッコイイ。今度真似して使ってみよう。そう、七夕って雨多いんだよなー。そこがまたロマンティックなのかもしれないなと思いました。ちょっと悲劇の方が詩歌向き。』(小笠原玉虫)
    ○)「「雨中天」は、面白い語だと思う。」(古戸暢)
    ○「七夕に雨が降ったのか七夕にもかかわらず楽しくないのか、
    気分の空模様の方かなと思いました。」(白川)
    ●『これはひどいなあ。恋を知らない人が七夕を詠んだような。雨降ってても二人は逢うだろう。』(働猫)

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  13. 萩の声こや秋風の口うつし(2点)

    ○『私は擬人化もあまり好きでないが、この表現は好きだ。こうして季節ごとの音楽が奏でられてきたのだ。』(雪兎)
    ○『秋に相応しいロマンチックな句。擬人化に、さらに比喩を用いるあたりは情熱的というべきでしょうか。』(洋三)

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  14. 花は賎(しず)のめにもみえけり鬼莇(おにあざみ)(1点)

    ◎「どんな言葉よりも花が咲く方が人の心を明るくする、
    そんなことを示しているのかなと思いました。」(白川)
    ●『「鬼莇(おにあざみ)」がよくて最初並選にとろうとしてたんですが、賎(しず)ってなーんかイヤだし、いろんないい花あるのに賎(しず)には鬼莇、ってなーんかヒドくね?とイヤな気持ちを抑えきれなくなったので、実は句の意味よく分かってないんですが逆選とさせていただきました。個人的にはあざみの花は好きです。』(小笠原玉虫)

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  15. 時雨(しぐれ)をやもどかしがりて松の雪(1点)

    ○『色の対比が美しい。時雨は雪にも言うのだろうか?早く松葉に積もれともどかしく見ているのか。』(働猫)
    △「しぐれをもどかしがる、までは好きなのですが、なんか松の雪でアレレとなりました。雨に打たれて溶けちゃうのがヤダってことかな??ちょっとぴんとこないなぁ。」(小笠原玉虫)

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  16. うかれける人や初瀬の山桜(1点)

    ○「初瀬は奈良ですね。春に長谷寺詣でをされてる人々を詠んだ句ですね。」(T宏)

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  17. 秋風の鑓(やり)戸(ど)の口やとがりごゑ(1点)

    ○「秋風が遣り戸のすきまから抜けて甲高い音を出した。秋の淋しさがでてると思います。」(T宏)

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  18. 姥(うば)桜(ざくら)さくや老後の思い出(いで)(0点)

    ○「姥桜を見ながら将来の心配をする、
    そんな心配をしたくないなと思いました。」(白川)
    ●『姥桜から老後への連想では、あまりにありきたり。老人会の余興レベル。』
    △『老後の思い出は咲いている姥桜自身のものだろう。花咲いている瞬間はすでに老後の一歩手前ということか。』(鴨芹)
    △『姥桜そのものを見て老後を思うことなどあるだろうか?』(働猫)

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  19. 月ぞしるべこなたへ入(いら)せ旅の宿(0点)

    △『「旅の宿」って言葉を使っちゃうと、スッゲありきたりに見えるな、どっかできいた風だなーと生意気にも思いました。この句が元祖だったりして。』(小笠原玉虫)

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  20. 花の顔に晴(はれ)れうてしてや朧月(0点)

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  21. 餅雪をしら糸となす柳哉(0点)

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  22. 花に明ぬなげきや我が歌袋(0点)

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  23. 糸桜かへるさの足もつれ(0点)

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  24. 風吹けば尾ぼそうなるや犬桜(0点)

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  25. 五月雨に御物(おんもの)遠(どお)や月の顔(0点)

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  26. しばしまもまつやほととぎす千年(0点)

    ○『信号待ちのようなものか。イライラしているわけではないのだろうけど。』(鴨芹)
    ●『言葉が古くて分かりにくい』(祖啓)

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  27. たんだすめ住めば都ぞけふの月(0点)

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  28. 影は天の下てる姫か月のかお(0点)

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  29. 寝たる萩や容顔(ようがん)無礼花の顔(0点)

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  30. 月の鏡小春にみるや目正月(0点)

    ○『月を鏡にたとえただけが手柄という気もするが、こういう句を(素直でよろし
    い)などと褒めたりすると、自分が偉くなったようで気分が良い。だか ら褒め
    る。』(畦道)
    ●『小春というのだから季節は秋なのだろう。目正月は眺めがめでたいという意味だろうか。季節感が今ひとつつかめない。』(鴨芹)

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  31. なつちかし其(その)口たばへ花の風(ー1点)

    ●「特に何か問題があるわけではない。「たばへ」の意味がわからなかっただけである。時の流れとともに、言葉も変わって行くのだろう。私たちが詠んだ句は、数百年の後の人びとの心に響くのだろうか。」(古戸暢)

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  32. これにて完了です。

    作業ミスで、6点の句が、2点のコメントのところに混ざってしまいました。

    また、今回は、松尾芭蕉の意外な一面を見ることができた句会でした。

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  33. 編集作業をしていて、たまたま並んだ言葉、

    ・全部 松尾芭蕉

    って発音するのが、なんか好きになってきました。


    いろんな意味で・・・・、


    ・全部 松尾芭蕉・・・

    ・全部 松尾芭蕉!

    いい、響きです。


    逆に、「反芭蕉」を追求する事が、大変に難しいと感じました。

    反芭蕉的な人生とは、一体どんなんでしょう???

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