2013年9月9日月曜日

風呂山書房を読む②

※風呂山書房「―43―百句夜行「百二句」より。
※風呂山書房はこちら

まずは授乳室さがす動物園
以下六句にわたって、動物園を訪れた際に詠まれた句が続く。親でなければ詠めない掲句は、実に面白い。

席替えしたくない君の隣だ
席替えしたくないのは、僕か君か両方か。しかし仮に君が席替えしたくないと思っていたとしても、その理由が「横に僕がいること」ではない可能性があるのが悲しい。

大人の味分からず煙草ふかしている
私がはじめて煙草を吸ったのは、高校を卒業して以降のことだった。継続的に吸うことをやめて久しいが、未だに大人の味についてはわからないままである。

嘘をつきました汗ばむ夜でした
「君と寝ました他人のままで~♪」を思い出した。この汗は、なんの汗だったのか。そして何の嘘を吐いたのか。気になる、気になる。

密談する上司の視線の先にいる
いやな汗がでてきそうな状況だ。密談の中身については、一切考えないでおこう。

霊より熊の怖い街の夕暮れ
熊出没注意の看板が立っているのだろう。実際問題、そんな街を夕暮れに歩きたくはない。

丸々肥えた赤子だ食ってやろうか
実際に、太股あたりにかじりついたものと思われる。やつらの肉付きは、食欲をそそるのである。

赤子のかわいい手で痛い
赤子だからといって、なめてはいけない。結構な力を持っているので、つねられると痛いのだ。

冷や麦すする夫婦です外は雨
私自身、冷や麦を食する習慣を持たない。そのためか、画面の向こうの夫婦の生活を盗み見ているように思えて、面白いのである。

部屋響く雨妻と子は出掛けた
この句は、続く「雨音小さくなって妻と子の帰ってきた」の句と続けて味わいたい。雨の中自宅に取り残された父親の(夫の)感情が、滲み出ているようだ。

スマホを狙う悪い顔した赤子だ
これは相当に気を付けなければならない。油断すると拙句の「赤子私の携帯を喰らう」の状態になってしまう。

1 件のコメント:

  1. 「密談する上司の視線の先にいる」

    これは嫌ですね~…言いたい事があるんだったらはっきり言ってほしいですね。
    こちらには何の関係もない話という可能性もありますが。
    実にうまいところを捉えたと思います。これぞ生活の詩。

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