2014年11月3日月曜日

第二十八回 鍛練句会


(最高得点句)

海が薫る橋で泣く(4点)
【馬場古戸暢】


それぞれの傘でまっすぐな道 (4点)
【ロケッ子】




(4点)海が薫る橋で泣く◎◎
(4点)それぞれの傘でまっすぐな道◎○○△
(3点)ねじれて燃える秋の金魚だ◎○△
(2点)萩散ってそれでも笑っているしかない○○△
(2点)迷いは薄墨色の夜に溶く◎△
(2点)母娘さざめく風呂場の下を通る○○△
(2点)笑顔の頬へ陽射しやわらかい◎△
(1点)秋の夜へ花火鳴りよる○△△△
(1点)薬効いてくる部屋に水滴の音○△△△
(1点)火事じゃない火の燃え盛る○△
(1点)知らない子が返事する私の名前だ○△△
(1点)王様も俺も裸○
(1点)香水こぼれて時間○△
(1点)何も聞こえない闇にうなじの白い○
(1点)秋の満ちゆく俺でいる食卓○△△
(0点)君と同じ月に雨降る○●△
(0点)オカリナがオカリナを捨てたかたち○●△△
(0点)胸にくちづけて秋茜○●
(-1点)わらいころげなくてはならない校歌●△△
(-1点)たったひとはな残ったあさがお●△
(-1点)痛む手と手重ねてオリオン●△
(無点)お前の与太もさみしい満月△△
(無点)少年の秋キャッチボールを壁とする△△△
(無点)最後の喧嘩して自転車は速い△△
(無点)風の終わりに幻の犬△△△
(無点)黄ばんだ街路樹ぼくが咳をしている△
(無点)泣かず耐えたが犬は見ていた△△△
(無点)嵐の夜の信号を待つ足が冷たい△
(無点)こんなにも成つてゐるあけびの寂しさよ△△
(無点)金木犀にだれかいる△△△



(以上、30句)
※特選(◎)2点、並選(○)1点、逆選(●)-1点として集計。




◆招待者紹介
【ロケッ子 氏】
ロケッ子氏は、私こと働猫が敬愛する表現者の一人である。
自由律俳句の句会「千本ノック」主催。
同句会は私が初めて参加した句会でもある。
また、以前Twitter上で「百縛百句」という企画を行った際には、
「有能な美人秘書」を自称し、ブログ運営ほか実務的な面をすべて担っていただいた。
その句には特有の(特異な)青春の匂いが漂う。
時に思春期の少女そのもののように、
時に過ぎた少女時代を愛でるように。

 




◆作者発表(投句順 招待者、編者除く)

【馬場古戸暢】
秋の夜へ花火鳴りよる
薬効いてくる部屋に水滴の音
海が薫る橋で泣く
何も聞こえない闇にうなじの白い
笑顔の頬へ陽射しやわらかい


【風呂山洋三】
少年の秋キャッチボールを壁とする
黄ばんだ街路樹ぼくが咳をしている
知らない子が返事する私の名前だ
嵐の夜の信号を待つ足が冷たい
秋の満ちゆく俺でいる食卓


【小笠原玉虫】
お前の与太もさみしい満月
泣かず耐えたが犬は見ていた
たったひとはな残ったあさがお
母娘さざめく風呂場の下を通る
ねじれて燃える秋の金魚だ


【十月水名】
わらいころげなくてはならない校歌
風の終わりに幻の犬
オカリナがオカリナを捨てたかたち
香水こぼれて時間
金木犀にだれかいる


【ロケッ子】(招待)
萩散ってそれでも笑っているしかない
最後の喧嘩して自転車は速い
火事じゃない火の燃え盛る
それぞれの傘でまっすぐな道
こんなにも成つてゐるあけびの寂しさよ


【畠働猫】(編者)
君と同じ月に雨降る
迷いは薄墨色の夜に溶く
王様も俺も裸
胸にくちづけて秋茜
痛む手と手重ねてオリオン


以上6名

30 件のコメント:

  1. (4点)海が薫る橋で泣く◎◎

    ◎いいですね。今回の特選はこちらに。泣くってストレートに言っちゃってるところが非常にわたくし好みです。河口付近の橋なのでしょう。当然河の水は汽水でしょう。海と河の水が混じるところに詠み人の涙が落ちる。いいですね。スウィート&リリカルです。非常にいい意味で。好みすぎてコンチクショウ。今すぐボクと結婚してくれ!(玉虫)

    ◎「海が薫る橋」でもうすばらしく美しい。こうした情景は想像では描けない。そしてそこでは何をしても絵になるだろう。「泣く」。泣いてしまうのである。涙や悲しみはやがて海へと流れてゆくだろう。美人であってほしい。いや、この景は美人でしか成り立たないものだ。(働猫)

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  2. (4点)それぞれの傘でまっすぐな道◎○○△

    ◎「それぞれ」が効果的。それぞれがそれぞれに孤独を抱えて同じ道を行くのでしょう。(洋三)

    ○駅前か。(古戸暢)

    ○いいですね。退勤時間に雨が降る景なのでしょう。たくさんのひとがいて、それぞれの人生と孤独がある感じ。そして同時にそれぞれに帰る場所があるというほっとした感じも漂っています。自由律のお手本みたいにお見事。大好きです。(玉虫)

    △「それぞれ」は便利。こんなにも寂しさをうまく表現できる言葉はあるまい。これも思春期の記憶を呼び起こす。相合傘で帰りたいのに、という感じか。つきあってはいないのだろう。たまたま行く方角が一緒で。道はまっすぐで。またはもっと主語が大きく、人間だれしも孤独であるということか。一人で生まれて一人で死んでゆく。せめてその人生の一瞬でも、こうしてともに歩く相手と巡り合えれば、それは幸せなことなのだろう。(働猫)

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  3. (3点)ねじれて燃える秋の金魚だ◎○△

    ◎たしかに金魚はねじれていますね。迫力あります(水名)

    ○模様のことか。(古戸暢)

    △美しい景だ。「ねじれて」が効いている。ただこの言い切る形が最良かどうか。自分が同じ景を詠むなら「きんぎょきんぎょねじれてもえる」こんな感じが好みである。(働猫)

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  4. (2点)萩散ってそれでも笑っているしかない○○△

    ○いいですね。萩の花ってぱらぱらよく落ちますよね。白か薄紫の細かい花びら。それらが涙のイメージに重なります。詠み人は泣いてはいけない立場なのでしょうか。物悲しい秋の風景で、非常に美しいと思いました。(玉虫)

    ○花が散ることは関係の変化や終わりを表すものと考えるべきだろうか。その瞬間を「笑って」やり過ごさなければならない。大人はとても大変だ。(働猫)

    △「散る」と「笑う」との対比。植物に心情を託す技法が効果的です。ただ、「しかない」を削って「笑っている」と止めた方が余情を覚えると思いました。あと「って」が二つあるのも気になります。(洋三)

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  5. (2点)迷いは薄墨色の夜に溶く◎△

    ◎雰囲気が好みだったので。(古戸暢)

    △「薄墨色」「溶く」で、これは泣いているのだなと思いました。泣き止む頃には答えが出ずとも腹が決まることでしょう。人生には答えの出ない苦しい迷いが多いものですよね。ぐっときました。ちょっと雪兎さんみたいな感じだな。どなたの句だろう。(玉虫)

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  6. (2点)母娘さざめく風呂場の下を通る○○△

    ○昔、商店街に面したアパートに住んでいた頃を思い出しました。「さざめく」が何だか母娘の会話にリンクしている感じがします。(洋三)

    ○「さざめく」という言葉をさらっと使えてしまう作者さんに、尊敬とジェラシーを同じくらい感じました。(ロケッ子)

    △「さざめく」の発見がすばらしい。なんとも幸福そうな景である。他人の幸福を描けば描くほど、それに気づいてしまう詠者の孤独、哀しみが際立つ。(働猫)

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  7. (2点)笑顔の頬へ陽射しやわらかい◎△

    ◎素直さに。 景にぴったりの表現だなあと思いました。ともすれば衝撃的かつ意外性のある句が良句と評されがちな自由律俳句ですが(個人的感想)、こういう柔らかさのある句の良さを忘れずにいたいものであります。誰の笑顔であるかによって癖のある句へとも変化できそうなのですが(例えば「年老いた母の」とか「苦労ばかりした父の」とか)、そこを敢えて省いているところにも好感をもちました。(ロケッ子)

    △これはかわいらしい。今回の古戸暢句はすべていい。(働猫)

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  8. (1点)秋の夜へ花火鳴りよる○△△△

    ○口語表現を上手に使うなぁ、と。「鳴っている」だとここまでのインパクトはありませんよね。自分と外部との適度な距離感もスコーンと伝わってきました。(ロケッ子)

    △学園祭の最後にあがる花火でしょうか。甘い思い出が湧き上がってくる感じがして好きです。(玉虫)

    △秋の花火。いい景です。「夜」は要らないかもしれません。(洋三)

    △「夜」を「よ」と読むか、「よる」と読むか。リズムで考えれば「よ」であるが、「鳴りよる」との押韻と考えれば「よる」でもおもしろい。「鳴りよる」という表現は、おそらくは方言であるが、なんとなく「鳴っていやがる」というような意味であろうかと思う。方言の使用はこのように客観的事実に主観をするりとすべりこませる効果がある。(働猫)

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  9. (1点)薬効いてくる部屋に水滴の音○△△△

    ○睡眠薬だろうか。いよいよ眠りに就こうとしたところで「水滴の音」が気になり出してしまう。やれやれ、僕は覚醒した。(洋三)

    △この寂しさは胸にこたえます。(水名)

    △静かな時間の流れ。点滴の薬が少しずつ落ちるさまにも合っていますね。基本的に病弱人間なので、この景はリアルに感じられて惹かれました。(ロケッ子)

    △薬は睡眠薬と読むべきであろうか。やっとさしてきた眠気を破るように水滴の音が聞こえる。この句の寂しさは、これが孤独の句であるからだ。水滴が気になるのは独り身だからである。家人があれば気にせずに眠れるのだ。(働猫)

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  10. (1点)火事じゃない火の燃え盛る○△

    ○「火事じゃない」と非常を常とする視点がおもしろい。大きな災害で痛みを受けた人の句であろうか。火は恐ろしいものであるが、それを用いずに我々の生活はもはや成り立たない。原子力をはじめとした科学技術全般にも言えることであるが、こうした視点の背景には、詠者の経験や思想が表れるものだ。そしてそれこそが自由律俳句の特徴と言えるのではないだろうか。(働猫)

    △単純ですが、気持ち、思いが燃え上っているのかなと思いました。そして秋のいろんな葉っぱもとてつもなく赤い。これから冬に向かう中で死を前にして燃え上る葉っぱたち。詠み人の中で燃え盛っている気持ちも非常に気になります。(玉虫)

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  11. (1点)知らない子が返事する私の名前だ○△△

    ○どこか不気味さを感じました。(水名)

    △可愛い。あ、あの子も玉虫ちゃん、みたいな感じですね。病院とかでよくありますよね。(玉虫)

    △うぐいすさんの句で「同じ名の子が叱られている」がある。週刊俳句で古戸暢が取り上げた中にもある。似たような景であるが、比べるとうぐいす句の方がリズム、衝撃とも上であるように感じる。(働猫)

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  12. (1点)王様も俺も裸○

    ○みんな裸なら喧嘩もおきないかも。(水名)

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  13. (1点)香水こぼれて時間○△

    ○どうしようもない。(古戸暢)

    △後朝であろうか。別れがたく求め合う激しさが香水の瓶を倒したのだろう。(働猫)

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  14. (1点)何も聞こえない闇にうなじの白い○

    ○「うなじ」はフェティシズムを強く刺激する。並ぶ語句は月並みかもしれないが、この景の美しさはとらざるを得ない。とります。(働猫)

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  15. (1点)秋の満ちゆく俺でいる食卓○△△

    ○いいですね。今回の投句群のなかで非常に好きな句。ひとりで食事しているんだろなと思うんですが、ひとりでいながら満ち足りてるって感じがします。休日の遅いランチ。庭の見事なレストランで窓からぼんやり木々を見ながら食事をしている景が浮かびました。この静かさが非常に俳句っぽいと思います。ちょっとぽつんとさみしい感じ。でも満たされている。いいですね。こういう瞬間を、わたしも詠みたいものです。(玉虫)

    △どんなときもしっかりと我をもっているという自信と、そう宣言せずにはいられない不安定さと、その両方が感じられてぐっときました。(ロケッ子)

    △なんのことかわからないが、リア充という言葉が浮かんだ。(働猫)

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  16. (0点)君と同じ月に雨降る○●△

    ○ロマンチックです。(水名)

    ●「君と同じ~」「~と同じ月」「月に~」「~に雨降る」等、詠まれやすい語や表現のせいか、誰かがどこかで既に詠んでいそうな句という印象を受けました。自分への戒めも含めますが、その人にしか詠めない句が生まれてほしいと思います。(ロケッ子)

    △月が見えて雨も降ってる。夜のお天気雨ですね。そして二人は泣いているのでしょう。これは別れようとしてるとかじゃなく、ひとりの悲しい話にもうひとりが同調して泣いてるみたいな気がします。ありがちっちゃありがちだけど、好きです。(玉虫)

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  17. (0点)オカリナがオカリナを捨てたかたち○●△△

    ○好きです。好きなだけでは選ぶまいと強く決意して選句にあたりましたが、この句には逆らえませんでした。とる側の状態によって、寂しくも思えるし楽しくも思えますねえ。(ロケッ子)

    ●うまくイメージできませんでした。(洋三)

    △奇妙なかたちのオカリナ、あるある。家のかたちとか。そういうものを見て「ええーっ」と思うの楽しいですよね。そして、オカリナって素朴なればこそ哲学を感じる気がする。実存主義って感じのする面白い句です。(玉虫)

    △「オカリナ」はその奏者を指して言うのであろうか。それともオカリナ存在が自らの名前を捨てるという観念的な話であろうか。(働猫)

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  18. (0点)胸にくちづけて秋茜○●

    ○官能的。「秋茜」としたところが秀逸。(洋三)

    ●おっぱいにトンボが止まったというまんまな景しか浮かばず、ふむ、どうとったものか、と考え込んでしまいました。真っ白いおっぱいに真っ赤な赤トンボ、綺麗は綺麗だけどどうしたものか。そういうことってあるかな? 秋の日差し指す刈り取りの済んだ田圃の畦で青姦、と思えばアリなのか。バレ句にしてもあんまりすっと入ってこない感じで引っ掛かってしまったので逆選でいただきました。これはほかのかたの意見を伺ってみたい。皆さんはどうお考えでしょうか?(玉虫)

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  19. (-1点)わらいころげなくてはならない校歌●△△

    ●状況を想像しがたい。(古戸暢)

    △学校で予定調和の笑いを要求されることってありましたありました。それをちょっと白けた目線で見ている賢い子って感じがしますね。笑わなくてはならない校歌って、狙って微笑ましい感じの校歌だったのかな? これは困りますね(玉虫)

    △たぶん、各聯の末に「(笑)」と入っているのでしょうね。「雲青き(笑)阿寒の峰に(笑)われらの学び舎(笑)歌声響く(笑)」みたいな感じでしょうか。(働猫)

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  20. (-1点)たったひとはな残ったあさがお●△

    ●今回明確な逆選が特になく、可能性が感じられるこちらをとる。まずこのままでは素材に過ぎないのではないか。「たった」の部分に主観が表れているともとれるが、イメージは広がりも着地もしない。「残った」は余分だろう。「たったひとはなあさがお」。これだけでもいい。さらにここに何かをぶつけるか、あさがおの象徴するものについて方向性を示す語句を入れてほしい。たとえば色を示すだけで花言葉を言外に意識させることができる。大きさを示せば育てたものの愛情を示すことができるだろう。「たったひとはなあさがお」。うーん。これが完成形かもしれない。(働猫)

    △綺麗ですね。少し手を加えたい衝動にかられますが、これはこのままが最良なのでしょうね。(ロケッ子)

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  21. (-1点)痛む手と手重ねてオリオン●△

    ●美しい句。ただ「痛む手と手重ねて」が読みきれませんでした。(水名)

    △歌詞になりがちな匂いもしていますが、心情と景との上手な組み合わせに拍手を送りたくなりました。(ロケッ子)

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  22. (無点)お前の与太もさみしい満月△△

    △「満月」を持ってきたところがいいと思いました。欠けている月だと付きすぎですものね。(洋三)

    △二人の関係はもう終わりに近づいているのでしょうね。(働猫)

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  23. (無点)少年の秋キャッチボールを壁とする△△△

    △いいですね。少年の不安定さを感じます。友達がいないとかじゃないんですよ。でも時として少年はひとりで黙々と壁キャッチボールをしたくなるものなのでしょう。大人に向かう繊細な季節の中で、いろんな思いが去来する。こちらも甘い何かが湧き上がってきて胸がぎゅっとする句です。(玉虫)

    △壁キャッチボールと秋はよく合いますね。(水名)

    △木枯らしが吹きほかの子供たちはもう家に入ってしまった。寒さに強い子なのか。まだ半袖なのだろう。(働猫)

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  24. (無点)最後の喧嘩して自転車は速い△△

    △喧嘩別れですね。自転車で帰るところからすると、非常に若い人なのかもしれない。高校生とか。ぐんぐん立ち漕ぎで帰り、いつもと同じに夕飯を食べて、お風呂に入ってやっと泣くのでしょう。物語性を感じる句ですね。(玉虫)

    △引っ越しかな。もう会えないのに素直になれずに喧嘩してしまう。背を向けて自転車に乗る。後ろ髪を引かれながらも意地になってしまって漕ぐ足は速くなるばかり。甘酸っぱいですね。(働猫)

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  25. (無点)風の終わりに幻の犬△△△

    △句意は図れないが気になる句。(洋三)

    △つかまえに行くべきなのか、ただただ目で追うのが正しいのか。いやそもそも、幻の犬って何だ! しかし、「風の終わり」という表現が効果的で効果的で。(ロケッ子)

    △喪った犬の幻であろうか。一緒に散歩した季節の風が今年も吹いてくる。記憶が蘇る。その風の中で愛した犬の幻を見るのであろう。(働猫)

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  26. (無点)黄ばんだ街路樹ぼくが咳をしている△

    △「黄ばんだ」は光化学スモッグが問題になったかつての排気ガスの名残りであろうか。そこで咳をするのではあたりまえすぎるか。「つきすぎ」とか言うやつだろうか。(働猫)

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  27. (無点)泣かず耐えたが犬は見ていた△△△

    △犬はいつだって僕らの傍にいてくれる。犬好きには堪らない景。ただ、前半が説明口調かも。(洋三)

    △好きです。犬好きなので犬を出されただけで食いついてしまいますが、犬の犬たる様子がダイレクトに表現されていて素敵です。短歌の後半にもってきたい雰囲気が。(ロケッ子)

    △見られたことを「恥」ととるか、「救い」ととるか。「救い」では当たり前すぎるので、「恥」ととり、「泣くのを見ていた犬に強請られる」景を詠めればなお面白いのではないだろうか。(働猫)

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  28. (無点)嵐の夜の信号を待つ足が冷たい△

    △これは言い過ぎの感がある。「嵐の夜」「冷たい」はどちらか省略できるのではないか。「信号を待つ」のは歩行者なのか。それなら足が冷たいのは当たり前になってしまう。また、車に乗っているのならただのわがままである。もっと違う景として読むならば、安アパートで薄いカーテンを透かして信号の点滅が部屋に入ってくる。ベッドで寄り添いながら、二人の足は冷えてゆく。こんな感じなら美しく貧しくてよい。でもそうではないのだ。「信号を待つ」ということはどこかへ向かっているのである。どこへ。嵐の夜に。足が冷たいのはサンダルだからだ。裏の畑の様子を見に行くのであろうか。だれかおじいちゃんを止めてあげてほしい。(働猫)

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  29. (無点)こんなにも成つてゐるあけびの寂しさよ△△

    △「あけび」がたくさん「成っている」にも関わらず「寂しい」。そう言われれば、何だかそんな気もしてきます。(洋三)

    △歴史的仮名遣いを選択した理由はなんだろうか。単に雰囲気の問題?それとも「あけびが成る」情景は今はなく(実際自分は見たことがない。北海道だからかな)、思い出の風景を詠んだものなのであろうか。懐古、望郷の情が表れていると考えると「寂しさ」にも説得力が加わる。(働猫)

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  30. (無点)金木犀にだれかいる△△△

    △誰でしょう。気になります。(洋三)

    △好きです。すべてを読み手にあずけた無責任さに惹かれます。(ロケッ子)

    △どうしよう。(働猫)

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