2015年2月25日水曜日

第三十一回 鍛錬句会


◇最高得点句

子の声三つ駆けて行く夕暮れ 古戸暢

◇互選集計

(4点)子の声三つ駆けて行く夕暮れ ◎○○
(3点)冬空あおく湯気の向こう ◎○
(2点)遅れてきた訃報にいる ○○
(2点)ミシン目に沿って切り抜いて月光 ◎
(2点)錆びた手すりにふたり ○○
(2点)君をあきらめた部屋の夢見る ◎
(2点)赤子ほのほの乳をあそぶ ○○
(1点)酔う義務感じるコップ酒 ○
(1点)冬の日射しに寝入る遅刻 ○
(1点)冬椿めくりおとして終業す ○
(0点)糸電話手繰れど手繰れど故郷は遠く
(0点)証書捨て一瀉千里に春来る
(0点)いつかくる黒檀の日々
(0点)股引知らない子がヒートテックはいとる
(0点)目をそむけていろ枯木
(0点)失くしたもの思い出す夜が明ける
(0点)頬凍らして歩道橋で煙草吸うなど
(-1点)水面皆月夜 ●
(-1点)はや昔日の先月を羨む ●
(-2点)在ることだけを許した許された ●●

以上20句。
※特選◎(2点)、並選○(1点)、逆選(-1点)として集計。

◇作者発表

【小澤温】
赤子ほのほの乳をあそぶ
錆びた手すりにふたり
遅れてきた訃報にいる
冬椿めくりおとして終業す
水面皆月夜

【畠働猫】
糸電話手繰れど手繰れど故郷は遠く
在ることだけを許した許された
君をあきらめた部屋の夢見る
証書捨て一瀉千里に春来る
ミシン目に沿って切り抜いて月光

【武里圭一】
酔う義務感じるコップ酒
目をそむけていろ枯木
いつかくる黒檀の日々
頬凍らして歩道橋で煙草吸うなど
はや昔日の先月を羨む

【馬場古戸暢】
冬の日射しに寝入る遅刻
子の声三つ駆けて行く夕暮れ
股引知らない子がヒートテックはいとる
冬空あおく湯気の向こう
失くしたもの思い出す夜が明ける

20 件のコメント:

  1. (4点)子の声三つ駆けて行く夕暮れ ◎○○

    ◎どこか昭和の懐かしさを感じさせる。そして寂しさも感じるのは郷愁か、私自身の孤独のせいか。(働猫)
    ○聴覚と視覚を同時に刺激する秀句。(圭一)
    ○帰宅か。(温)

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  2. (3点)冬空あおく湯気の向こう ◎○

    ◎感覚も言葉も、今回では最も純粋な自由律俳句。(圭一)
    ○あります。(温)
    △露店風呂かな。気持ちよさそうですね。(働猫)

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  3. (2点)遅れてきた訃報にいる ○○

    ○「にいる」がよい。(古戸暢)
    ○第一報に名前が無く、ほっとしていたが、続報の中に知人の名が含まれていたのだろう。大きな事故や災害の記憶であろうか。まもなく東日本大震災から4年が経過しようとしている。(働猫)

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  4. (2点)ミシン目に沿って切り抜いて月光 ◎

    ◎詠もうとする詩情は良し。(温)

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  5. (2点)錆びた手すりにふたり ○○

    ○よいです。(古戸暢)
    ○まったく新しくはないが、よい情景である。(働猫)

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  6. (2点)君をあきらめた部屋の夢見る ◎

    ◎部屋で夢を見たのか、部屋の夢を見たのか。いずれでもよい。(古戸暢)

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  7. (2点)赤子ほのほの乳をあそぶ ○○

    ○取らざるを得ない。(古戸暢)
    ○「ほのほの」の愛らしさ。(圭一)
    △「ほのほの」はほのぼのであろうか、それともやわらかさを表すオノマトペか。幸福そうな情景である。あえてとるほどではないが。(働猫)

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  8. (1点)酔う義務感じるコップ酒 ○

    ○コップ酒だって悪くない。(温)
    △そんな酒もあるのでしょうね。(働猫)

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  9. (1点)冬の日射しに寝入る遅刻 ○

    ○春眠なんかより気持ちいい。(圭一)
    △気持ちはわかるが時間を守れないのはくずである。(働猫)

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  10. (1点)冬椿めくりおとして終業す ○

    ○「終業す」と、口語ではない言い回しを用いて定型に寄せていった意図はなにか。自分は定型も自由律の一部分と考えているので、自然と575のリズムとなることについては全く抵抗が無い。選択されるもっとも美しいリズムがそれであるならば。しかしこの句ではまず定型在りきで寄せていってしまっている。そのように感じる。それがよくないと言ってしまえば、「自由」を否定することになってしまうので自己矛盾に陥るのであるが、もっといろいろなリズムを試すべき、冒険すべき、とは思う。ただし「わい、今日はもう終業すやでー」と普段から口語で用いている言い回しであるならばこの限りではない。(働猫)

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  11. (0点)糸電話手繰れど手繰れど故郷は遠く

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  12. (0点)証書捨て一瀉千里に春来る

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  13. (0点)いつかくる黒檀の日々

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  14. (0点)股引知らない子がヒートテックはいとる

    △時代の移り変わりですね。(働猫)

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  15. (0点)目をそむけていろ枯木

    △枯れ木に対してこう呼びかけるような何事が行われているのだろうか。あるいは過去に行われた事象に対して目を背けたまま風化してゆく様子を揶揄しているものか。(働猫)

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  16. (0点)失くしたもの思い出す夜が明ける

    △なにもかも当たり前過ぎる。これでは日記だ。(働猫)

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  17. (0点)頬凍らして歩道橋で煙草吸うなど

    △「など」が何なのかさっぱりである。余韻あるいは想像をさせる効果を狙ったのかもしれないが、「など」の前に全て言い尽くしてしまっている。(働猫)

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  18. (-1点)水面皆月夜 ●

    ●平凡すぎるように思う。(圭一)
    △幻想的な光景であるが、様々な条件が一致しなければ実現しないものだろうな、と思う。たぶん現実にはないのだろうけど。スカイリムならあるかもしれないね。タムリエルには月が二つあるから。(働猫)

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  19. (-1点)はや昔日の先月を羨む ●

    ●漱石辺りが書いた散文の一節を抜き出したようだ。現代人が言っているとすれば、句っぽいような気もするが。この句も、言っている以上のことが何も無い。(働猫)

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  20. (-2点)在ることだけを許した許された ●●

    ●「在ること」だけを一要素として取りだすことができるか。(古戸暢)
    ●言葉足らず。(温)

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