2015年3月28日土曜日

第三十二回 鍛錬句会

◇最高得点句


いちぬけて青い空  畠働猫

夕暮れ迫る部屋に親指の爪  馬場古戸暢

夜猫がそっと触れてくる花びら  畠働猫


◇互選集計


(2点)いちぬけて青い空 ○○
(2点)夕暮れ迫る部屋に親指の爪 ○○
(2点)夜猫がそっと触れてくる花びら ○○
(1点)ハルハクルハルハクルクルユルシテドウカハルハクル ◎●
(1点)喜びと悲しみと春の水門の開け流る ○
(1点)男の霊は右に憑く南無降三世尊明王 ○
(1点)パンを喰らう寝入る ○
(1点)塗りたくる絵の穴があいている ○
(1点)薬ふやして平日押し流している ○
(-1点)ボードレールだ! こんな夜には ●
(-1点)ためいきできえたマッチ ●
(-1点)凝っと見ていた海にloversに笛 ●
(-2点)どこにもいないわたしはわたしだけでわたしとなってここにおることにはおる ●●
(-2点)冴え返る夕陽が垂れてきた ●●
(無点)春爛漫糞で滑った痕がある
(無点)メガネ拭く背中にハロゲンヒーター
(無点)みんなが癒えたあとで転んだ
(無点)虹色の首のドバトの不衛生
(無点)内へ収束する蒲団
(無点)マァリアマァリア黒いマァリア空爆が始まる
(無点)袖を引っ張る女に傾く
(無点)接吻を待つまっすぐ月へのびるくびすじ
(無点)上弦の月へ猫背を伸ばします



以上23句。
※特選◎(2点)、並選○(1点)、逆選(-1点)として集計。



◇作者発表 ※50音順


【小笠原玉虫】
春爛漫糞で滑った痕がある
みんなが癒えたあとで転んだ
薬ふやして平日押し流している
虹色の首のドバトの不衛生
男の霊は右に憑く南無降三世尊明王

【小澤温】
喜びと悲しみと春の水門の開け流る
冴え返る夕陽が垂れてきた
塗りたくる絵の穴があいている

【武里圭一】
どこにもいないわたしはわたしだけでわたしとなってここにおることにはおる
内へ収束する蒲団
ボードレールだ! こんな夜には
ためいきできえたマッチ
凝っと見ていた海にloversに笛

【畠働猫】
マァリアマァリア黒いマァリア空爆が始まる
いちぬけて青い空
接吻を待つまっすぐ月へのびるくびすじ
夜猫がそっと触れてくる花びら
ハルハクルハルハクルクルユルシテドウカハルハクル

【馬場古戸暢】
メガネ拭く背中にハロゲンヒーター
夕暮れ迫る部屋に親指の爪
パンを喰らう寝入る
袖を引っ張る女に傾く
上弦の月へ猫背を伸ばします

23 件のコメント:

  1. (2点)いちぬけて青い空

    ○春ですし。(古戸暢)
    ○ 一人定時で上がってまだ暮れていない時、本当に清々しい気分。(圭一)
    △いいですね。きっとあまり気のすすまない何かに参加中だったのでしょう。とても清々しい。短くスパッとまとまっているところも好みです。(玉虫)

    返信削除
  2. (2点)夕暮れ迫る部屋に親指の爪

    ○爪切りのときに飛んだ爪をふと発見したのか。四畳半のアパート。すでに醒めた二人。万年床の上で惰性の性を交わす。どちらの視線か、心は行為から離れ、畳に刺さるように残っていた爪に注目している。やがて二人は別れるだろう。理由は「夕暮れ迫る部屋に親指の爪」を見たから。(働猫)
    ○いいですね。自由律俳句のお手本的なきりっとした孤独感を感じます。日曜のイメージ。一人きりで何をするともなく終わってしまった日曜日の夕方に、部屋にじっと座っている景が目に浮かびます。(玉虫)

    返信削除
  3. (2点)夜猫がそっと触れてくる花びら

    ○花びらをどこに見るか。(古戸暢)
    ○かわいい。(小澤温)
    △いいですね。文字通り猫が花に触れながら通り過ぎるってことかもしれないけれど、わたしは猫がそっと詠み人を舐める夜をイメージしました。猫の舌はピンクで薄くて、花弁そっくりですね。でもザラザラ痛くて、なかなか鋭い凶器でもあります。(玉虫)

    返信削除
  4. (1点)ハルハクルハルハクルクルユルシテドウカハルハクル

    ◎大変いいです。カタカナって狂おしくて大好きだな。水ヲクダサイオーオーオーオーみたいな。これは字余りの定型句だなと読みました。ハルハクルハルハクルまでが上五、ユルシテドウカが中七でハルハクルが下五なんだなと。春に亡くなった人がいて、そのかたに対して激しい罪悪感がある、みたいな状況かなと思いました。春はこういう、恐怖に裏打ちされた、駆け出したくなるような狂気が似合う季節。詠み人の心が穏やかになる日が一刻も早く来ますようにと心よりお祈り申し上げます。(玉虫)
    ●ラノベみたいだ。(圭一)

    返信削除
  5. (1点)喜びと悲しみと春の水門の開け流る

    ○心情と情景がうまくリンクしている句である。寒さや雪を耐え忍ぶ季節が過ぎて、出会いと別れの春が訪れる。感情の迸りを水に喩えてよく表現している。(働猫)
    △美しい情景だけど、ちょっと言い過ぎ感があるかな。「春の水門の開け流る」の部分の、女子と送り仮名も何かちょっと気になる。(玉虫)

    返信削除
  6. (1点)男の霊は右に憑く南無降三世尊明王

    ○おもしろい。ムーとか恐怖新聞で育った世代だからな。宜保愛子とか織田無道とかの世界観だよね。(働猫)

    返信削除
  7. (1点)パンを喰らう寝入る

    ○好き。これも一人暮らしの誰とも口をきかなかった一日の終わりって感じがしますね。一人だし食事も適当でいいや、みたいな、寂しい感じがして大変好みです。スパッバサッと終わっちゃうところも好き。自分で詠むときもこのくらい簡潔にしたいけど、これで伝わるかな~とつい迷ってしまって余計なこと足しちゃうんだよなぁ。(玉虫)
    △シンプルな生活がよい。(働猫)

    返信削除
  8. (1点)塗りたくる絵の穴があいている

    ○あ、これ、好きです。油絵具を情熱的に塗り重ねているキャンパスが破れているイメージ。絵の世界と、絵の穴の向こうに見える現実の世界って感じで、イメージの重なりが面白い。(玉虫)
    △気づかなかったのか。忘我の境地ですね。(働猫)

    返信削除
  9. (1点)薬ふやして平日押し流している

    ○社会なう。(古戸暢)
    △わかります。(働猫)

    返信削除
  10. (-1点)ボードレールだ! こんな夜には 

    ●俳句としてあまい。(小澤温)
    △はるちゃんはシェイマルズを薦めるだろう。(働猫)
    △悪の華!!(玉虫)

    返信削除
  11. (-1点)ためいきできえたマッチ

    ●ムード歌謡かマッチ売りの少女か。あたりまえすぎないか。(働猫)
    △ちょっと当たり前すぎるかなと思いました。あとひとこと何か入れると面白くなりそう。(玉虫)

    返信削除
  12. (-1点)凝っと見ていた海にloversに笛

    ●「lovers」って。寺山修二とかなんかその辺の影響かな。違和感があり過ぎで気持ちが悪い。「笛」がオチなら面白かったのに、「lovers」が台無しにしている。チャンイーモウも「HERO」がすごく良かったのに「lovers」で台無しにしていたでしょう。「lovers」は鬼門なんですよ。(働猫)
    △loversがちょっとスウィートすぎてポッ///ってなります。(玉虫)

    返信削除
  13. (-2点)どこにもいないわたしはわたしだけでわたしとなってここにおることにはおる

    ●何にもない。(古戸暢)
    ●うむー。言いたいことは分かるんだけど、もっと落とし込んでから言ってみよう!って気持ちにちょっとなるな。(玉虫)
    △春の混乱がよく表れているか。木の芽時という感じがする。(働猫)

    返信削除
  14. (-2点)冴え返る夕陽が垂れてきた

    ●「垂れてきた」がよい。実際の自然現象として、海に沈む夕日が四角く垂れて見えることがあるが、そのことであってもなくてもよい。夕日とは一日の終わりに垂れてくるものだ。しかし「冴え返る」はよくない。夕日が冴え返るとはどういうことだ。夕日の持つ温かさと矛盾した表現である。冬の日のまばゆいままに落ちてくる夕日もある。それは「冴えた」と言えなくもないだろう。しかしそうした夕日は「落ちる」ものであり、「垂れてきた」とは矛盾するのだ。どのような情景を見て、この表現を選んだのか。実際にこのような情景に立ち会ったならば、その異常さに対する驚きが句には拭えずに残るはずである。しかしそういった驚きは感じられない。(働猫)
    ●何か雰囲気はいいんだけど、夕陽が垂れるってどういうことなのかちょっと分かりづらい。西日に眩しく照らされる背中って感じでいいのかな。(玉虫)

    返信削除
  15. (無点)春爛漫糞で滑った痕がある

    △春らしいと言えなくもない景。痕を残した者も発見した者も、それぞれの飲み会の帰りであろうとはじめは考えたが、いまどき街中では糞には出会えないものかもしれない。そうするとこれは牛馬の糞。牧歌的な田園風景を詠んだ句であるのかもしれない。(働猫)

    返信削除
  16. (無点)メガネ拭く背中にハロゲンヒーター

    △ぼんやりと赤い光を受けている情景だろうか。その光と、眼鏡を外した視力の弱さから、どことなく不安定な心情を描写しているようにも思う。(働猫)
    △もうちょっとひねって面白く出来そうな気がする!(玉虫)

    返信削除
  17. (無点)みんなが癒えたあとで転んだ

    △古代日本には「持衰(じさい)」とよばれる役割を担う者があった。魏志倭人伝に次のような記載がある。「倭の者が船で海を渡る時は持衰(じさい)が選ばれる。持衰は人と接せず、虱は取らず、服は汚れ放題、肉は食べずに船の帰りを待つ。船が無事に帰ってくれば褒美が与えられる。船に災難があれば殺される。(現代語訳:Wikipediaより引用)」 このように周囲の穢れを引き受けるものは現代においても自然と存在するように思う。この句において「転んだ」者もまたそういった者なのであろう。(働猫)

    返信削除
  18. (無点)虹色の首のドバトの不衛生

    △ああ、「糞で滑った痕」はこの句とセットであったか。糞を残したものも滑ったものもドバトであったと。(働猫)

    返信削除
  19. (無点)内へ収束する蒲団

    △宇宙の 法則が 乱れる!(働猫)
    △全てを受け止めてくれるオフトゥンのイケメンぶり……!! 俳句としてはちょっと言いっ放し感がある。もう少し踏み込むと面白くなりそうだな。(玉虫)

    返信削除
  20. (無点)マァリアマァリア黒いマァリア空爆が始まる

    12.マァリアマァリア黒いマァリア空爆が始まる
    △いいですね。童謡みたいでありながら凄く不穏な感じがする。マリア様は人類のために涙を流し続けるのでしょう。(玉虫)

    返信削除
  21. (無点)袖を引っ張る女に傾く

    △ うらやましい。(圭一)
    △「傾く」は姿勢と心情なのだろう。好きでないので読んだことがないのだが、あだち充の描く女にはこういうあざとさを感じる。(働猫)
    △ちょっと強引な彼女という感じがしていいです。(玉虫)

    返信削除
  22. (無点)接吻を待つまっすぐ月へのびるくびすじ

    △非常に映像的。しかし「接吻を待つ」を前に持ってきたせいか、リズムが悪く分断された感じ。(圭一)
    △いいです。「接吻を待つ」を後ろに持ってくる方がわたくし好みではあります。(玉虫)

    返信削除
  23. (無点)上弦の月へ猫背を伸ばします

    △「ます」がかわいらしい。ラジオ体操第五くらいの歌詞にあってもよい。「次は両手を振って上弦の月へ猫背を伸ばしまーす」(働猫)
    △絵本みたいで美しいイメージ。五七五のリズムも気持ちよくて好きです。(玉虫)

    返信削除