2015年4月29日水曜日

第三十三回 研鑽句会

◇最高得点句

街はおまつりお骨となつて帰られたか 山頭火

◇互選集計
(4点)街はおまつりお骨となつて帰られたか◎◎
(3点) お骨声なく水のうへをゆく○○○
(2点)月のあかるさはどこを爆撃してゐることか◎○●
(2点)雪へ雪ふる戦ひはこれからだといふ○○
(1点)秋もいよいよふかうなる日の丸へんぽん○
(1点)冬ぽたんほつと勇ましいたよりがあつた○
(1点)その一片はふるさとの土となる秋○
(1点)馬も召されておぢいさんおばあさん○
(1点)ぢつと瞳が瞳に食ひ入る瞳◎●
(1点)足は手は支那に残してふたたび日本に○
(0点) これが最後の日本の御飯を食べてゐる、汗○●
(無点)日ざかりの千人針の一針づつ
(無点)ふたたびは踏むまい土を踏みしめて征く
(無点)しぐれて雲のちぎれてゆく支那をおもふ
(無点)ひつそりとして八ツ手花咲く
(無点)しぐれつつしづかにも六百五十柱
(無点)もくもくとしてしぐるる白い凾をまへに
(無点)山裾あたたかなここにうづめます
(無点)凩の日の丸二つ二人もだしてゐる
(無点)勝たねばならない大地いつせいに芽吹かうとする
(無点)いさましくもかなしくも白い凾
(無点)ぽろぽろしたたる汗がましろな凾に
(無点)みんな出て征く山の青さいよいよ青く
(無点)音は並んで日の丸はたたく
(無点)案山子もがつちり日の丸ふつてゐる

◇作者発表
種田山頭火
『銃後』全句

25 件のコメント:

  1. (4点)街はおまつりお骨となつて帰られたか
    ◎国のために命を投げ出した者への敬意が、ただその敬意というもの一点のみが受け継がれるべき美しいものかと思う。(働猫)
    ◎敬語のところもよい。(古戸暢)

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  2. (3点) お骨声なく水のうへをゆく
    ○よい。(温)
    ○妙に幻想的だ。(圭一)
    △小さな舟に安置され、滑るように水上をゆく様子を思う。戦地から遠く故郷へ御霊は帰る。(働猫)
    ○不思議な感じがする。(古戸暢)

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  3. (2点)月のあかるさはどこを爆撃してゐることか
    ◎ここから一歩も通さない。(温)
    ○月が美しいこんな夜も遠く戦地へとつながっている。(働猫)
    ●どこでもでしょうな。(古戸暢)

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  4. (2点)雪へ雪ふる戦ひはこれからだといふ
    ○降り積もる雪を、清く散らした命に見立てているのか。(働猫)
    ○雪国が有利でしょうな。(古戸暢)

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  5. (1点)秋もいよいよふかうなる日の丸へんぽん
    △穏やかな秋の日に日の丸がはためいている。遠い戦地にも冬が近づいている。(働猫)
    ○割と好きな景。(古戸暢)

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  6. (1点)冬ぽたんほつと勇ましいたよりがあつた
    ○さみし。(温)
    △検閲があった時代である。互いに本心は汲み取り、汲み取られることを願っているのだろう。(働猫)
    △戦地からか。(古戸暢)

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  7. (1点)その一片はふるさとの土となる秋
    ○全身は帰って来なかったのだろう。(圭一)
    △「国のため」とは大義ではなく、その「国」を構成するもの、すなわち「故郷」であり「家族」といった身近なものを慈しむ思想であろう。最後には、死んでも守ろうとした故郷の土になる。ただ悲劇である。しかしその尊さも忘れるべきではない。(働猫)
    △帰ってくることができました。(古戸暢)

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  8. (1点)馬も召されておぢいさんおばあさん
    ○徒歩。(温)
    △人だけでなく馬も徴発されて、田畑を守るのは老人ばかりとなってしまった。食を支える農作業ができなければ、その国は亡びる。自明の理である。(働猫)
    △残された人たちはどう生きたか。(古戸暢)

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  9. (1点)ぢつと瞳が瞳に食ひ入る瞳
    ●少ししつこいように思う。(圭一)
    ◎小さな子供であろうか。戦場へゆく父の瞳をじっと見つめている様子を思う。別れの意味を幼いながらも感じ取っているのか。(働猫)
    △それぞれの想いが交差する。(古戸暢)

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  10. (1点)足は手は支那に残してふたたび日本に
    ○戦争に対する傍観的な姿勢がこの句の客観的描写にもよく表れている。(働猫)
    △帰ってくることができただけでも。(古戸暢)

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  11. (0点) これが最後の日本の御飯を食べてゐる、汗
    ●嫌いではないです。(温)
    ○遠い戦地に送られることが決まっているのだろう。汗はただ暑さのためばかりではなかろう。(働猫)
    △夏。(古戸暢)

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  12. (無点)日ざかりの千人針の一針づつ
    △戦地へ送る人への思いは美しく悲しい。(働猫)
    △「千人針」にぴんとこない世代。(古戸暢)

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  13. (無点)ふたたびは踏むまい土を踏みしめて征く
    △出征する若者たちを送る風景か。(働猫)
    △結末句が、この選句表中に散見する。(古戸暢)

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  14. (無点)しぐれて雲のちぎれてゆく支那をおもふ
    △これもまた傍観的な句。戦地ははるかに遠い。(働猫)
    △この時代の中国で詠まれた句はないのか。(古戸暢)

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  15. (無点)ひつそりとして八ツ手花咲く
    △大きく広がる葉の間で白く小さな花が寄り添うように咲いている様を人気のない静けさと対照的に見ているものか。(働猫)
    △この選句表の中では目立たなくなる。(古戸暢)

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  16. (無点)しぐれつつしづかにも六百五十柱
    △戦死者の数であろうか。墓、あるいは桐の箱に納められた遺骨を前に詠んだものか。(働猫)
    △なんのことか。(古戸暢)

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  17. (無点)もくもくとしてしぐるる白い凾をまへに
    △遺骨を前に停止した心をよそに雲は速いのだろう。(働猫)
    △帰還か。(古戸暢)

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  18. (無点)山裾あたたかなここにうづめます
    △埋葬であろうか。寒さや飢えで苦しんだ者をせめてあたたかな場所へ葬ろうというのか。(働猫)
    △結庵の時の句か。(古戸暢)

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  19. (無点)凩の日の丸二つ二人もだしてゐる
    △「二人もだして」は出征する人の数であろうか。(働猫)
    △久しく日の丸を見ていない。(古戸暢)

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  20. (無点)勝たねばならない大地いつせいに芽吹かうとする
    △戦争はあってはならない。しかしそれが避けられないならば、負けてはならない。(働猫)
    △作者にどれほどの当事者意識が実際にあったのか疑問。(古戸暢)

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  21. (無点)いさましくもかなしくも白い凾
    △ほとんど無縁である作者にして、「いさましくも」と言わざるを得なかった世相を思う。(働猫)
    △ふむ。(古戸暢)

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  22. (無点)ぽろぽろしたたる汗がましろな凾に
    △炎天、遺族へ届けるための箱を前抱きにして歩く帰還兵を思う。(働猫)
    △夏でしたか。(古戸暢)

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  23. (無点)みんな出て征く山の青さいよいよ青く
    △若者はみな徴兵されてゆくのだろう。今生の別れとなることをみな予感しながらも口には出せず見送る。そんな灰色の人の営みとは別に山は青く色づいてゆく。(働猫)
    △初夏。(古戸暢)

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  24. (無点)音は並んで日の丸はたたく
    △戦意高揚のための旗がそこかしこに立っているのだろう。(働猫)
    △みなで日の丸を出してきて見送ったのでしょう。(古戸暢)

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  25. (無点)案山子もがつちり日の丸ふつてゐる
    △徴兵が進み、送り出す側も数が減った。畦道を通り征く者を案山子も見送っているのか。(働猫)
    △烏避けも兼ねていそう。(古戸暢)

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