2012年8月24日金曜日

近作と小文

『鉄塊』畦道、近作です。

『赤色灯』五句 



友達が刺され太った女が駆けつける


実柘榴のような拳で悔しい


一斉に包囲され百日紅だけ白かった


この墓に入るか迷う


ねだったシャツに袖通した先が秋




 二十年ほど前、ちょっとした刃傷沙汰に巻き込まれたことがあった。ひとりが軽傷を負い、加害者は逮捕された。現場が片付いた頃、顔見知り程度のある女性が所在なく辺りをうろうろしているのを見た。偶然通りかかった、という風ではない。私は、何故きみがここに、と尋ねた。加害者の恋人だった。加害者と私は古い付き合いだったが、彼女と交際しているのは知らなかった。その場に居た数人と彼女とで、喫茶店に行ったのを覚えている。テレビゲームの上で、アイスコーヒーを飲んだ。しかし何を話したのかは全く記憶にない。加害者とも彼女とも、それきり会っていない。
 
  
 ご高覧、感謝致します。

 松田畦道拝


11 件のコメント:

  1. 散文は実話とのことですが、例えそうでなくても、
    「一斉に包囲され百日紅だけ白かった」の鮮烈さに変わりはありません。
    この「百日紅」は現場から少し離れた所に咲いていたのでしょうか。
    近かったらパトカーの赤色灯で赤くなったり白くなったりを繰り返すでしょうから。

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  2.  白百日紅、ってなんだが矛盾したような花ですよね。ものものしい雰囲気から少し離れ、落ち着き払った花の佇まいが、妙にぴったりとはまりました。
     それにしても、こういう形で作を出すのは、句会とはまた違った緊張がありますね。
     次、どなたかに続いて頂きたいです。

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  3. 百日紅の句がいいですね。
    対比が見事。
    臨場感があり、紅なのに白いというのもなんらかの意味を感じます。
    『赤色灯』というタイトルも踏まえて、この句がメインなのでは⁉

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    1. あ、なるほど!
      周りが赤色灯で染まる異常な事態の中、
      落ち着き払って白いままでいる役割を与えられたのが、
      普通は紅い花である百日紅という所に、
      この句の世界の危うさを感じますね。

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    2. 渋谷様

      対比、取り合わせがうまくいったようで、嬉しいです。
      どの句がメイン、というのは作るときは考えませんでしたが、結果として百日紅が一番真ん中で威張ったような出来になったようです。

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    3. 藤井様

      再びありがとうございます。

      近作発表、さてそろそろ、次の方に名乗りを上げて頂きたいですね……。

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    4. あ、じゃあ今度の鉄塊句会の後に、
      アクセス数の落ちて来たあたりで私がやらせて頂きます。
      畦道さんありがとうございました。

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    5. 畦道さん
      句会よりも緊張したとか。
      どうも、ありがとうございました。

      そして、雪兎さん
      よろしくお願いいたします。
      楽しみにしております。

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    6. 雪兎さんの近作発表、楽しみです。
      引き続きみなさんも、ぜひ。

      渋谷さん、いい機会をつくって頂き、こちらこそありがとうございました。


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  4. ◎一斉に包囲され百日紅だけ白かった
    子供の頃見ていた、火曜サスペンスのひとこまが浮かびました。はぐれ刑事っぽいかもしれません。ただ、前の句や小文なくして、景を想像できるかどうか。ひとつの勝負ですね。

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  5. koto様

    確かに一句ずつ鑑賞した場合はどうか、というのは今作の問題点ですね。連作であることを特別に意識せずとも、自然とドラマが浮かび上がる……そんな仕上がりを目指しましたが、なかなか難しいようです。

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