2012年9月3日月曜日

言葉のバカップルの誕生


言葉のバカップルの誕生について  記者 (中筋 祖啓)

趣味 すばやさ 
かつて、海紅の句会にて、「趣味 すばやさ」という句を投句したのですが、
その時は、さほど、目立つことなくそれなりに終わってしまいました。

が、しかし、やはりこの句が何故か異常に心地よく、
ここ最近、「うーん、やっぱり、趣味 すばやさだ。」
と、一人で思い出し笑いをする習慣が抜けきれなくなってしまっていました。
なぜか、「趣味 すばやさ」については、思い出し笑いが留まる所が無い。
その原因について、今回のVT句会に参加して、皆さんの句評を読むにいたり、
「どうやら、これは、言葉のバカップルを発見したようだ!」
と、さらに笑いはじめる事態になってしまいました。

「趣味」という概念と、「すばやさ」という概念が組み合わさることは、通常ありえないので、
これは、あきらかにバグなのですが、
しかし、もしも、本当に、すばやく動くこと自体を趣味だと定義してしまうことができたなら、
これは、尋常でなく、楽しい毎日が続く事になります。

・服を素早く着替えるのが、趣味
・階段を素早く駆け上がるのが、趣味
・人との打ち合わせを素早く確認するのが、趣味
・排便を素早く行うのが、趣味
・早歩きが、趣味

どこもかしこも、趣味だらけ、こんな面白い事は無い。
「長所 すばやさ」としなかった原因は、私自身は、他人と比較すると、
実は大変にドンくさい人間で、全くすばやくなど無いので、とても「長所 すばやさ」とは言えないからです。
あえて意識して急いでいないと、周りのスピードについていけないのです。
基礎スピードが人よりも遅いため、素早く動く事を、あえて意識し続ける必要があった。
それならいっそのこと、素早さを趣味にしてしまえば、あら不思議!尋常でなく楽しい毎日。

さて、句の解釈はここまでで、これからが本題です。

・言葉のバカップルの誕生とは?

ちょっとおかしな組み合わせだが、何故か、腐れ縁と言いますか、無性にはずすことができない言葉のカップル。

いきなり話が飛びますが、ちょうど、お笑い芸人のオードリーって、すごいバカップルだなあ、と日ごろ思っていたのです。
春日と若林は、普通の概念で考えてみると、はたしてコンビとしてちゃんと機能しているのかどうなのか?
理屈では測れないおかしな状態になっているのですが、
「このコンビは、バカップルだ!」
と、解釈するならば、こんなに腐れ縁で仲の良いお笑い芸人も他にいなさそうだな、と思いました。
お互いの長所よりも、むしろお互いの短所のほうが上手い具合に相性よく通じ合っているような構図になっていて、だから、漫才の能力云々とかよりも、お互いの性格の短所を補いあう相性の良さから、オードリーは別れないのだろうと。

以前、私の詠みました
・大食卓帝国陸海軍
という句も、やはり、言葉のバカップルであることになります。

大日本帝国陸海軍 + 食卓 = 大食卓帝国陸海軍

という組み合わせは、表面上は、バグっていて、なんのこっちゃ?となるわけですが、
しかし、これが、どうも、腐れあう。腐れあう。

食卓が広大に、帝国のように、栄えている様。
軍事国家のように、安定することなく、栄えては滅び、栄えては滅びる。食卓が。一日三回も。火に焼かれ。欲に食らわれ。金を掛け。生き物を犠牲にして。

食卓が・・・!!

うーん、これは、やはり、バカです。
けれども、たしかに、「大食卓帝国陸海軍」なんとなく、そう呼びたくなるのです。
この現象が、言葉のバカップル。

言葉のバカップルとは、表面上の相性の悪さを補うくらいに、
裏の腐れ縁の部分での相性の良さから、言葉と言葉がくっついてしまって離れなくなった、
なんとも、滑稽かつ真剣な状態をさすようです。
言葉達も、文体の秩序を維持するためや、読み手の思いを伝えたいといったため、色々と大変なようで、時として、バカップルにならざるを得ない。

滑稽かつ真剣。真剣かつ滑稽。

よって、ここに、言葉のバカップルの誕生を認めたいと思います。

バカだけど、くっついちまったんだから、しょうがあるまい、祝ってみようか!と、こうなりました。

関係ないけど、最後に「洒落男」という名曲を添付いたします。

4 件のコメント:

  1. その発想は無かった。

    確かに「言葉のバカップル」が生まれることはあるんですが、その名称は勿論、中身についても、ここまで真剣に考えたことはありませんでした。
    面白かったです。

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  2. 祖啓様

     拝読しました。
     まず、一般的な『よいカップル』とは如何なるものか。
    例えば、長所を伸ばし合う、短所を補いあうといったように、お互いの持つ要素が、その関係性において共鳴しあうということがひとつ。
    (祖啓さんはオードリーを『バカップル』としていましたが、短所を補いあえる関係であれば、私はよいカップル、コンビであると解釈します)

     では本題の『バカップル』とは?

     お互いの持つ様々な要素が、何か一定の方向性に依って共鳴するのではなく、好き勝手に鳴り響く、野放図に暴れまわる。その上で、誰もが予想しえないような『化学反応』を起こし、爆発する。
     そんなイメージです。

     言葉のバカップルもまさに予測不能の化学反応であり、爆発です。

     >滑稽かつ真剣。真剣かつ滑稽。

     この姿勢があればこそ、祖啓さんは爆発を起こせる人だと思います。
     何よりも、面白い、楽しいというのが作句の原動力になっているのが頼もしいです。

     今後益々のご健吟を。

     畦道拝

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  3. 祖啓さんの感性に注釈をつけると句になるような気がする今日この頃です。
    今月またお会いしましょう(´∀`)

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  4. 了解です、今月お会いしましょうね!

    畔道さんの解釈への返答も、その日に上手い具合に進むような気がします。


      ・コメント保留の、時間だよ 時間だよ   祖啓

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