2012年12月27日木曜日

第八回 研鑽句会


最高得点句
食う物を裸で取り囲んでそれが旨くねえんだ

最低得点句
愚かしや生ビール旨しと思わざる者は死ね

互選集計
(6点)食う物を裸で取り囲んでそれが旨くねえんだ ◎○○○○
(3点)よその人の食べものを見るな花ふぶき ○○○
(3点)七十年も働いて何かが祟っておるとわめく母 ○○○
(3点)恋のなやみもちメーデーの赤旗を見まもる ◎○
(3点)兵隊の時この顔でこいつはずるい奴だと軍曹にいわれた ◎○○●
(2点)ひょうきんもの衣食住即ちひょうきん ◎
(2点)死ぬ前近所に生まれた仔犬を一匹欲しがった ◎
(2点)『たわしはいりませんか』どの台所も日あたらぬ家 ◎
(2点)何も見たくないという両眼の眼帯がとれぬ子でにこりともせぬ ◎
(2点)母よもう一年生きよと云えば「たった一年か」と ◎
(2点)わかれてしまってからのプラットホームのつくづく自分というもの ○○
(1点)二百万円損失す宝くじのばば既に帰りし為 ○
(1点)爪のほかはどこからでも汗が出てくる ○
(1点)へんな弁当が出来て花見に路地を出る ○
(1点)鶴の美しい目ふり向けば妻が手を握る ○
(1点)芸術もすこしは解し妻に叱られてねる ○
(1点)全身で下痢して下痢より寧ろ不安な下痢休暇 ○
(1点)欲しい物目の前にあれどわれらは笑い去る ○
(0点)『こうもり傘の直し』くらしの修理は出来ぬであろうか ○●
(-1点)地を敷くデモ東西の訛り怒りに結集し ●
(-4点)愚かしや生ビール旨しと思わざる者は死ね ○●●●●●
(無点)たとえ大工でも娘がパン助になる世とは何んのこっちゃい
(無点)卵よ卵よどんな世にお前はどんな位置にいる
(無点)ろくな子がないとこぼしこぼし大工の女房また妊る
(無点)変哲もない味噌壺より朝はわが家に抒情起る
(無点)新緑に鶏卵かっと砕りてのむ
(無点)さんま食いたしされどさんまは空を泳ぐ
(無点)蛇嫌いの吾に賀状の蛇めが二百匹
(無点)時々いい酒でとんかつが食いたいと君は僕にうったえた
(無点)娘にここ打れたと告げに来る母に少し酒酌ぐ


※特選(◎)2点、並選(○)1点、逆選(●)-1点として集計。

※句の作者は30句全て橋本夢道。出句原本は「橋本夢道全句集(1977年、未来社刊)」。

46 件のコメント:

  1. 以下、選評。

    ◎……特選
    ○……並選
    ●……逆選

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  2. 食う物を裸で取り囲んでそれが旨くねえんだ(6点)
    ◎「真夏の飯場の光景がありありと浮かんだ」
    ○「裸で囲むということは、夏、それも連中は男だろう。そりゃ旨くなかろうて」
    ○「海辺のバーベキューのような催しを想像した。クソ暑いなか砂まみれになって、 生焼けだったり黒こげだったりする肉や野菜の切れ端を食う。アホじゃないかと思う。それを『旨くねえ』とばっさり斬った本句、痛快である。『へんな弁当』の句も同様に気持ちいいが、本句のほうがより直接的に伝わってくる」
    ○「みんなに貧しさを強要させようとする政府への諷刺、そんな風に思いました」
    ○「リアルな現実。けど、なぜか、この仲間になりたいような中毒性を感じる。どことなく、農村のお祭りみたいなものを感じた」

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  3. よその人の食べものを見るな花ふぶき(3点)

    ○「子どもの時分、親に言われた気がする。しかしおそらく花見での一幕。気持ちはわかる」
    ○「花ふぶきと言えば『桜』。貧乏な作者が、桜を見に来たのでしょうか。花見をしてる他のグループの食べ物が美味しそうで美味しそうで、たまらなかったのだと思います。余所を羨むな。自分の務めを果せ。そんな意地も感じました。そして『桜』はこの国の象徴。日本人の意地である」
    ○「正しい花見のあり方だと思います。どことなくコントっぽい」

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  4. 七十年も働いて何かが祟っておるとわめく母(3点)

    ○「知人のお祖母様が最近、九十で亡くなった。知人の結婚にあたっては『犬が祟る』との理由で、挙式を一年先へ延ばさせたという。何事にも我が侭を言い、それが通らなければ僻みに僻む。その挙げ句、陰では糞婆と呼ばれ笑いものになって死んだ。それが彼女の、九十年生きた結果だった。ただ空しい。合掌」
    ○「老いというものは寂しくて悲しいものですが、それを冷静に受け止めているような、そうでもないような。素直な感じがします」
    ○「理不尽な状況に対する女性のわめきは何回か聞いたがあれは凄い。まるで人生の全てをそのままぶつけているようだった。ましてこの句の場合七十年だ。その凄さは容易に想像できるだろう」

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  5. 恋のなやみもちメーデーの赤旗を見まもる(3点)

    ◎「主体は女とみた。恋でもメーデーでも、一歩引いてたたずむのみである」
    ○「労働紛争や学生運動が盛んな頃の句でしょうか。多感な若者の本音かと見受けます」

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  6. 兵隊の時この顔でこいつはずるい奴だと軍曹にいわれた(3点)

    ◎「業の深さを感じました。一見、ズルい男のヒガミや愚痴かと思いましたが、この作者なかなかの反骨心をお持ちだと思います。よほど悔しかったのだろうと思います。兵隊の頃といえば、激しい戦いもあったのではないでしょうか。俺はそんな奴では無い!そういう憤りだと思います」
    ○「貧しい身分から明の初代皇帝になった朱元璋も相当な悪人面だったそうです。この俳人も後々ひとかどの人物になったのかなと思いました」
    ○「軍曹の顔を想像することが楽しい。こういう軍曹がいつつ、教育勅語や軍人勅諭があったことを想像すると、深い」
    ●「冗長で、そのことによって解りにくくなっているように感じました。面白いけれど」

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  7. ひょうきんもの衣食住即ちひょうきん(2点)

    ◎「ひょうきんものとは作者自身であると読んだ。衣食住、全てにおいてひょうきんな私です、笑ってください、誰にも危害はくわえません。そう言う人ほど、侮れないものだ。人を刺す言葉の刃を隠し持っている。自称ひょうきんものをひょうきんものとしか見ず不用意に近づくと、いつかぐさっとやられる」

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    1. この句は「ひょうきん譚(ものがたり)」という連作の中の一句です。
      他の句に「ひょうきんもの猿にぴかりと見破らる」など。

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  8. 死ぬ前近所に生まれた仔犬を一匹欲しがった(2点)

    ◎「仔犬を欲しがるほど優しい人が死んだ事を容赦無く突きつけられるようで辛い。辛いが、このぐらいの力が無くては表現ではない。私の『死ぬ前』は他人からどう詠われるのだろうか」

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  9. 『たわしはいりませんか』どの台所も日あたらぬ家(2点)

    ◎「日あたらぬ家を回っている自分も日陰者。罪悪感やら世の中への不満やら、様々な感情が凝縮されている」

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  10. 何も見たくないという両眼の眼帯がとれぬ子でにこりともせぬ(2点)

    ◎「これは、見事なまでのリアリズム!『にこりともせぬ』のインパクトは強烈だ。よく、空襲の写真とかで子供の顔が映っている時と、同じ顔を想像した。うーん、、、、強烈だ!」

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  11. 母よもう一年生きよと云えば「たった一年か」と(2点)

    ◎「子にとってはその一年は長く感じられても、母親にとってはあっという間の一年という、お互いの数字に対する感覚の違いが、少しユーモラスな風に描かれているのが良いなと思いました。
    数字の受け止め方の違いということから次のような話を思い出しました。
    北宋の儒学者の程明道(ていめいどう)は弟子の『論語』の『吾は日に吾が身を三省す』の弟子の解釈を聞いていました。

    弟子:「私は日に三度、以下のようなことを反省します。それは…」
    この時に 明道は次のように言いました。
    明道:「あなたの反省はたった三度で済むのですか? この場合の『三』は具体的な数字ではなく、『しばしば、常に』という意味です。この後に述べられている項目を常に念頭において事あるごとに反省していくことが大切なのです」

    という話です。数字の意味をどれだけ切実にとらえているか、その違いを感じた一句でした」

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  12. わかれてしまってからのプラットホームのつくづく自分というもの(2点)

    ○「自己嫌悪やら自己憐憫やらなんやらかんやら色々混ざった挙句のこの女々しさ。これぞ男」
    ○「『つくづく』な感じが、よく出ていて気持ちよく読める。そうだよなあ、と」

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  13. 二百万円損失す宝くじのばば既に帰りし為(1点)

    ○「この身勝手さ!このくらい業を肯定してくれると気持ちいい」

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  14. 爪のほかはどこからでも汗が出てくる(1点)

    ○「この汗は夏の暑い日にじわっと出る汗ではなく、労働によって吹き出す汗なのでしょう。爽やかさの欠片もない感じが良いです」

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  15. へんな弁当が出来て花見に路地を出る(1点)

    ○「『へんな弁当』で笑った後に『花見』で少し切ない気持になる。このような辛い状況でも家族で花見に行こうとする姿勢が美しい」

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    1. 昔、母親がやっつけで作った弁当を周りに見られるのが恥ずかしかった。そんな僕は鍵っ子だった。
      思い出す事がいろいろあった。
      でも、取らなかったけど(笑)

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    2. >渋谷さん

      この句は時々思い出して一人で笑っています。
      まさに思い出し笑いです。
      ちなみに私も鍵っ子でした。懐かしいなぁ。

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  16. 鶴の美しい目ふり向けば妻が手を握る(1点)

    ○「実際の事実でしょうか、想像の句でしょうか。事実を例えて詠んだ句かも知れません。妻は居るけど、今まさに他の女性に惹かれている。しかも、抑えきれないぐらいに…」

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    1. この句評を書かれた方の家庭が心配です。
      でも素晴らしい読みですね。

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    2. 私の評でございます(笑)
      家族の事はご安心を!
      でも、このシチュエーションに惹かれたのは事実ですね。

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    3. >渋谷さん

      安心しました。
      何だか評に妙な生々しさを感じたので(笑)
      「鶴の美しい目」というのは盲点でした。

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  17. 芸術もすこしは解し妻に叱られてねる(1点)

    ○「俳句だけで身を立てている俳人はあまりいないので、この句のような日々を送っている方が殆どではないだろうか。もし違うというのなら、あなたは幸福な俳人だ」

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  18. 全身で下痢して下痢より寧ろ不安な下痢休暇(1点)

    ○「病気自体よりも病気による休暇で職場に居場所がなくなるのではないかというところがより心配、というところに共感しました」

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  19. 欲しい物目の前にあれどわれらは笑い去る(1点)

    ○「このやせ我慢っぷりが素晴らしい。“われら”だから笑って去れるのかもしれないが」

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  20. 『こうもり傘の直し』くらしの修理は出来ぬであろうか(0点)

    ○「つまらなくて、やがて哀しい冗談。さてこれが俳句かといわれると、ううむと唸ってしまうのだが、厳しい生活の現実は読者の胸に生々しく迫ってくる。その点において、共感の詩たり得ている。こういう作風は好きだ。しかし安易に真似ようとしては躓いてしまうだろう。一本筋の通った貧乏に尊敬の○を」
    ●「できないと思う」

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  21. 地を敷くデモ東西の訛り怒りに結集し(-1点)

    ●「個人的に共感できないだけで、文句は特に無い」

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  22. 愚かしや生ビール旨しと思わざる者は死ね(-4点)

    ○「最近の若者の多くが死に行くことになりそうである」
    ●「面白いけど無茶苦茶。無茶苦茶だけど面白い。いずれにせよ、こういう句に出会ったら『てめーが死ね!』と言い返してやるのが正しい礼儀作法だと思う。 なので逆選。ちなみに昔通っていた居酒屋は、生ビールがママレモン風味だった。それを旨いといって飲んでいたら、その方が命に関わる」
    ●「僕の事を言われたような気がしました。ドキッとする句です。恐らくは労働後の句ではないかと思います。こんな美味いものを否定するか?イコール、俺のクラスを否定するのか?そんな誇りを感じます。ただ、僕はビールを旨いとは思わない」
    ●「心底ビール好きな人が集まる場では良いけど、必ずしもそうでない人がいればその人にとっては気疲れのする句ですね」
    ●「『死ね』の部分を練り直したほうが良い」
    ●「私は痛風の気があるので生ビールは控えるように言われている。旨いとは思うが飲めない。この苦しみをどうしてくれよう。考えたら辛くなって来たので、八つ当たり気味に逆選とする」

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    1. みんなの評が面白すぎる!
      僕は酒が飲めたらこの句は間違いなく大特選でしたね。

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    2. >渋谷さん

      私はお酒が飲める故の逆選です。最後の評が私です。
      ビール好きなんだけどなぁ………
      皆さんも気を付けてください。
      それにしても逆選の句評は特選より面白いなあ(笑)

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  23. たとえ大工でも娘がパン助になる世とは何んのこっちゃい(無点)

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  24. 卵よ卵よどんな世にお前はどんな位置にいる(無点)

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  25. ろくな子がないとこぼしこぼし大工の女房また妊る(無点)

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  26. 変哲もない味噌壺より朝はわが家に抒情起る(無点)

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  27. 新緑に鶏卵かっと砕りてのむ(無点)

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    1. 「砕りて」は「割る」の意。

      夢道は定型句もいくつか詠んでおります。
      例えば、「ニワトリをかめば落葉の音がする」など。
      ちなみに掲句は、新俳句人連盟に加盟する頃の句です。

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  28. さんま食いたしされどさんまは空を泳ぐ(無点)

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  29. 蛇嫌いの吾に賀状の蛇めが二百匹(無点)

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    1. そういえば来年は巳年ですね。
      この句の光景が日本各地で再現されると思うと、
      思わず笑いがこみ上げて来ます。

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  30. 時々いい酒でとんかつが食いたいと君は僕にうったえた(無点)

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    1. とられるかと思ったのですが、無点でしたか。個人的には、酒ととんかつは合わないと考えるため、とりませんでした。

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    2. >古戸暢さん

      酒と聞くとどうしても日本酒を連想してしまうので仕方無いですね。
      むしろ酒に合うとんかつがあるのなら食べてみたいです。

      この句は「『辰』ちゃんの思い出」という連作の中の一句です。
      この後に「ぜいたく言うなと君にとんかつ屋を或る晩僕はふんぱつした」と続きます。
      辰ちゃんが誰かはわかりませんが、おそらく友達でしょう。

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  31. 娘にここ打れたと告げに来る母に少し酒酌ぐ(無点)

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    1. この句も悪くないと思いました。しかしバイオレンスな家庭です。

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    2. >古戸暢さん

      この句も「故郷の悲劇」という連作の中の一句です。
      どうやら夢道の妹さんが未婚の母となったようで、
      夢道のお母様と妹さんの軋轢が生々しく伝わって来ます。
      ちなみに「七十年も~」の句もこの連作の中の一句です。
      他の句に「夕べ不和の母娘も罵り飽きて腹一杯に食う飯」など。

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  32. 以上でございます。いかがでしたでしょうか。
    今回はプロレタリア俳句の代表的俳人で層雲人でもある橋本夢道の句を取り上げてみました。

    山頭火や放哉のように世を捨てるのはなかなかできることではありませんが、
    夢道のように世を捨てずに、その中で一生懸命生きることで、
    こんなにも生々しくかつ心に迫る句が書けるという事実を、
    鉄塊衆の皆様に知っていただきたかったというのが取り上げるきっかけでした。

    また、短律句より長律句を苦手としている方が最近多いように見受けられましたので、
    どんな反応が返ってくるか試してみたかったというのもありました。
    ちなみに夢道は「短律に飽きたから」という理由で長律に向かったそうです。
    句の長さは作者の心境に左右されるようですので、彼の心境に何らかの変化があったのかもしれません。

    この句会をきっかけにとてつもない夢道の句の世界にふれていただけたら幸いです。
    ありがとうございました。

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