2012年12月27日木曜日

第八回 鍛練句会


最高得点句
窓ガラス冷たいから割らない

最低得点句
脱け殻の君よ禁欲を説くなかれ

互選集計
(5点)窓ガラス冷たいから割らない ◎◎○
(4点)同じ目の高さで昨日も聞いた話 ◎○○○●
(4点)株式欄を敷いて酔いつぶれていた ○○○○
(4点)また泣いているほっぺたの熱ささわる ◎○○
(3点)心のとなりで腹が鳴っている ◎○
(3点)イタチ轢き殺したやつにもしぐれ ◎○
(3点)ことばを出せぬ隣人のためにことばを超える何かをください ◎○○●
(2点)一人だけニコニコ笑っている会議 ○○
(2点)小腹減ったやかん鳴かせている ○○

(2点)少女の小さな頭蓋を掴む ◎
(1点)ポインセチアなければひとりの夜 ○
(1点)ラリっている波の光を追うばかり ○
(1点)菅笠の男の般若心経の白い息 ○
(1点)雀の長さんがのーぼった ○
(0点)ギター取り戻しに屋上へ ○●
(0点)女のうなじがマフラーの中 ○●
(-1点)そのまま冷めるにまかせ足の爪切る夜が深まる ●
(-3点)脱け殻の君よ禁欲を説くなかれ ●●●
(無点)朝が解けない
(無点)君と君のパスワードとすれ違う
(無点)歳末のジョンに包囲されている
(無点)きみがいた窓を開けて目が合ったけれど
(無点)無念の墓の土から薊
(無点)雪が降りそうな夜の窓をなぞる


※特選(◎)2点、並選(○)1点、逆選(●)-1点として集計。

作者発表

【渋谷知宏】
イタチ轢き殺したやつにもしぐれ
菅笠の男の般若心経の白い息
そのまま冷めるにまかせ足の爪切る夜が深まる

【白川玄齋】
心のとなりで腹が鳴っている
脱け殻の君よ禁欲を説くなかれ
ことばを出せぬ隣人のためにことばを超える何かをください

【天坂寝覚】
朝が解けない
また泣いているほっぺたの熱ささわる
きみがいた窓を開けて目が合ったけれど

【中筋祖啓】
一人だけニコニコ笑っている会議
ラリっている波の光を追うばかり
雀の長さんがのーぼった

【馬場古戸暢】
少女の小さな頭蓋を掴む
女のうなじがマフラーの中
雪が降りそうな夜の窓をなぞる

【藤井雪兎】
ギター取り戻しに屋上へ
君と君のパスワードとすれ違う
窓ガラス冷たいから割らない

【本間鴨芹】
小腹減ったやかん鳴かせている
ポインセチアなければひとりの夜
歳末のジョンに包囲されている

【松田畦道】
同じ目の高さで昨日も聞いた話
株式欄を敷いて酔いつぶれていた
無念の墓の土から薊

以上全8人。

※五十音順。

109 件のコメント:

  1. 以下、選評。

    ◎……特選
    ○……並選
    ●……逆選

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  2. 窓ガラス冷たいから割らない(5点)

    ◎「窓ガラスを割るってのは、反抗するっていう事だ。割らないという事は反抗しないって事だ。理由は『冷たい』から。なんとなく冷めた感情、クールな社会?作者の周囲なのかそうではないのか?とりあえず『つまらない』という事だ」
    ◎「なんとなく窓ガラスを割ることになったけど、本当は窓ガラスなんか割りたくもないから何か適当な理由を探しているのかもしれない。『割りたくない』ではなく迷わずに『割らない』としているのがいい」
    ○「最初どう読んだものか首を捻ったが、はなからガラスを割る気などなかったのだと気づいた。割るぞ、というのはあくまでポーズ。そうなると、どこかとぼけていて、味わいがある一句であることが分かった。尾崎豊の歌に出てくるような不良は、もはや時代遅れなのだろう」

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    1. 若さというか幼さというか、そういうところに起因する理不尽さを感じた。
      冷たくなくても割らないでください。

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    2. 動作主が浮かばなかったため、景を想像できず、とりませんでした。

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    3. 並選に頂きました。
      いちばん下の句評です。
      窓ガラスや壁といったものが目の前にあったときは、
      だいたい壊してしまうのが詩なんですが、本句は「割らない」。
      しかも理由は「冷たいから」。
      この無表情、無感動からじんわり沁みてくる悪意のようなものを新しく感じました。

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    4. 特選で取りました。
      一番上の句評です。
      僕が持ち得ない感情の発露。
      そこが新鮮でした。

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    5. 作者の雪兎です。皆様、選評とコメントをありがとうございます。

      これは実景ですね。
      最近の出来事ではないのですが、窓ガラスを割りたいほど頭に来ていた時がありまして、しかもその時は冬の寒い夜でした。
      で、割る前にちょっとそれに触ってみたんです。
      するともの凄い冷たさが手に伝わって来て、逆にガラスの存在の重さのようなものが感じられました。
      「ああ、こうして寒い中でも自分の役目を果たしているガラスを割る事はできない」と思い、割るのはやめました。
      もし冷たくも熱くもなかったらそのまま割っていたかもしれません。

      >若さというか幼さというか、そういうところに起因する理不尽さを感じた

      私自身はちゃんと理由があって割らなかったのですが、青春の景としては少し理不尽かもしれませんね。私はグレることもできませんでしたから。

      >動作主が浮かばなかったため、景を想像できず

      私はあまり動作主を気にしませんね。ただ、動作主が句の核であれば前面に出します。

      >この無表情、無感動からじんわり沁みてくる悪意のようなものを新しく感じました

      畦道さんありがとうございます。このような何とも言えない、けれど何か引っかかる感覚を追求してゆきたいです。

      >僕が持ち得ない感情の発露

      渋谷さんありがとうございます。渋谷さんの選評も正しいと思います。窓ガラスを割れるか割れないかで、反抗の才能がある程度わかってしまうのでしょう。
      また、喜怒哀楽の「喜」ひとつをとってみても、個人個人で違うと思いますので、そこも追求してゆきたいですね。

      それでは長文失礼致しました。

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  3. 同じ目の高さで昨日も聞いた話(4点)

    ◎「子供の頃の記憶かなと思いました。子を思う親の気遣いを子供ながらに感じた、そんな風に受け止めました」
    ○「一種のデジャブか。目の高さが同じであることに気付いたのがおもしろい」
    ○「こどもと会話するときはできるだけ同じ目の高さで、とかつて教えられたことを思い出しました。ただ、この句の話の相手はこどもではないような気がします。選挙があったからというわけではないですが、政治家が陳情を受けているような印象。この句のように陳情を聞く政治家はきっといい人。いい政治家かどうかはわからない」
    ○「聞いているような、聞いていないようなグダグダ感。これは、ある程度親しくなった人同士だからこそなせる、親しさの表れだろう」
    ●「ちょっと難解かと思う。同じ目の高さとは、同僚とかそういう立場なのか?昨日も聞いた話ってのは、同じ話でつまらないという事なのか?ストンと落ちない」

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    1. 子供に目線を合わせて話を聞いているのだと思う。
      “昨日も聞いた話”だけれども、話してくれることが嬉しいのだろう。

      そう思いました。

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    2. 作者、畦道です。
      子供であったり、お年寄りであったり、目線の高さを合わせて話を聞きたい人を念頭に作りました。
      解釈は様々でよいと思い、そこはあえて限定しませんでした。
      しかし実景を鮮明に詠むという選択もあったので、悩ましいところです。
      たくさんのご意見、ありがとうございます。

      寝覚さんへ

      >話してくれることが嬉しい

      その通りですね。
      ただ、その光景のほほえましさは読み手には委ねず、
      作者の責任でしっかり描くべきであったかとも思います。
      ちょっと好意的な解釈に甘えてしまった感じです。

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    3. 逆選で取りました。
      どうも僕には難解でした。
      みなさんの評を読んで、こういう読みがあるのかと感心しました。

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  4. 株式欄を敷いて酔いつぶれていた(4点)

    ○「一見、株で失敗したのか?と思わせつつ、きっとこの作者は、株なんてやらないだろう」
    ○「『つぶれていた』と過去形なので自分自身の出来事を反省している場面と読みました。世界と繋がっている無機質な数字の羅列に『クソったれ』とでも思ったか。とはいえ『敷いて』が場にそぐわず上品な感じがします」
    ○「新聞紙を身体に巻くと、結構暖かいですね。その中でも『株式欄』、当人には一見無用な数字に効用はなくて、その新聞紙で暖を取るという役割しか持たない、ある程度学ばないとわからないものが新聞紙に何の説明もなく載っていることへの諷刺、そんな風に思いました」
    ○「新聞紙の利用価値を最大限に引き出している。まさか、布団になるとは。新聞の上で目覚めるって、なんかいい」

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    1. “株式欄を敷いて”に何かしら味があるのかもしれないが、分からなかった。
      自棄酒ということではないと思うのだが。

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    2. 作者、畦道です。

      駅構内で寝ちゃってる人と、素っ気ない数字の羅列との取り合わせに感じるところがありました。
      これも実景をもう少し、描くべきだったかと思います。

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    3. 並選で取りました。
      一番上の句評です。
      畦道さんは、ストーリーテラーですね。
      自身では無く、他の人を詠んだと知り、いろいろ納得しました。
      物語性があります。

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    4. 渋谷さん

      コメントありがとうございます。
      風景や物語が一読にして拡がる、そんな俳句を目指しています。
      なので仰って頂けたことは嬉しいです。
      ただ、その物語性を『虚構』と批判される場合もあります。
      それでも私としては実景、写生一辺倒ではなにか、作句する上で物足りなく感じるんです。
      実景からある要素を取り除く(省略する)、あるいは全く別の経験や風景、さらに物語性といった要素を付け加える。
      そうして、一行の物語が完成するというのが理想です。
      本句のように、説明的にならないようにと省略が過ぎると、分かりにくくなってしまうこともあるのですが。

      俳句と虚構、というテーマには各論あろうかと思います。
      私は、あってよい、むしろ積極的に取り入れる立場をとります。

      皆さんは如何でしょうか。

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    5. >畦道さん

      実家からこんにちは。
      私も物語性が無いと物足りなくなる方ですので、虚構を取り入れる事に抵抗はありません。
      ただ、読者に「嘘っぽい」と思われたら負けですよね。
      かと言って実景を描いてもそう思われる場合もありますが…
      私も自句を「嘘っぽい」と批判された事がありますので、いかにしてそれを回避するか思案中です。

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    6. >畦道さん、雪兎さん

      僕も昔は「作った」と言われた事ありました。
      実景でしたが、詠み方というか表現に注意がいるなと思い知らされましたよ。

      さて、俳句においての物語性についてですが、ありだと思ってます。
      ただ、やっぱりやり過ぎは良くないとも感じています。

      作り方は人それぞれあって良いと思います。実際僕も畦道さんのように実景に何かをプラスしたりマイナスしたりというのはやりますしね。

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  5. また泣いているほっぺたの熱ささわる(4点)

    ◎「相手は女かそれとも子供か。赤く染まったほっぺたが、あまりに愛おしい。しかし『また』とは、相手が女であれば詠み手に問題大である。句としてはそれがよし」
    ○「ちょっとセンチメンタルすぎるような句だが、『まだ』ではなく『また』なのが肝。この人はいつも泣いているのだ。いい加減、慰めの言葉も尽きた。だから頬に触るぐらいしかすることがない。ちょっと持て余した感じが面白い」
    ○「男女の恋愛を詠んだ句かと思ったが、女性が泣いている時に不用意に触ったりすると、余計にこじれる場合があるので、ここで泣いているのは子供かもしれない。いずれにせよ韻律の流れが優しい句である」

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    1. 並選にてとらせていただきました。最後の評が私です。
      泣いている理由次第でこの後の展開が決まってくるでしょうね。

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  6. 心のとなりで腹が鳴っている(3点)

    ◎「“心のとなりで”が素晴らしい。心がどうであれ腹は鳴る。鳴るけれど、その空腹を隣室の出来事のように感じることが確かにある。『悩めるわたし』を詠う上で、一つの到達点だと思う」
    ○「何か心配事か、哀しい出来事でもあったのだろうか。にも関わらず、腹は鳴る。この肉体のどうしようもなさを『心のとなり』と表したのは巧みだった。ついでに言うと、どんなに悩んでも哀しんでも、排泄はやってくる。心のとなりで、もう一人の自分がトイレのドアをノックするが如く」

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    1. 「心のとなり」がわかりませんでした。句評を読んでようやく納得しました。

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    2. 並選に頂きました。
      今月は特選も逆選も玄齋さんでした。
      そして本句も。
      持ち点まるごと差し上げてしまったようなものです。
      お見事でした。

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    3. 説明不足でした。
      すいません。
      やはり「心のとなり」これが読めませんでした。
      みなさんの句評が教えてくれました。

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  7. イタチ轢き殺したやつにもしぐれ(3点)

    ◎「不可抗力で動物の命を奪ってしまった者にも自然は等しく語りかける。彼はそれにどう答えるのだろうか」
    ○「取って付けた感もあるしぐれだが、イタチを轢き殺したやつにはちょうどよいようにも思えた。どんな顔して濡れていたのだろうか」

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    1. “イタチ轢き殺した”が目を引くけれど、目を引いただけ。
      詠み手なり当事者なりのための句だと思うが、こちらが読みきれていないだけかもしれない。

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    2. 特選でいただきました。
      イタチをわざと轢き殺す人はいない(と信じたい)ので、おそらく不可抗力だと思うのですが、
      不可抗力で自分以外のものを傷つけてしまうのは、日常茶飯事です。
      そんな時に話し相手というか感情の置き場所となってくれるのが自然なのでしょう。良い句です。

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    3. 作者の渋谷です。

      この句は、ちょうど愛宕山ハイクの時の句です。
      この日は、雨が降ったり止んだり、晴れたりまた降ったりと、時雨模様。
      京都は時雨の本場だと高浜虚子の句について書かれた本に載ってた事もあり、たっぷり味わいながら、途中向井去来の墓など参りつつ楽しんでおりましたところ、帰りの道で轢死したイタチがありました。

      途中すれ違った車の内に轢いたやつがいるのかも知れないし、いないかも知れない。これが人なら事故事件の類いとなるが、イタチなら何ともないのか?
      イタチを轢いただけで罪なのか?
      などと考えてはみるが、答えはない。
      その間も空は時雨れて降ったり止んだり、はたまた晴れたり。
      そういう状況を詠んだものであります。

      結局、答えは無いのだな。

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  8. ことばを出せぬ隣人のためにことばを超える何かをください(3点)

    ◎「二十代の頃ほんの短い間、入院したことがある。同室の老人は糖尿病で視力と片足を失っていた。話し好きな人だった。彼の話は消灯時間を過ぎても、 ずっと続いた。そのとりとめもない話へ、私は一心に耳を傾けたものだ。そうすると、よく眠れたからだ。思えば彼も、視力を超える光を探していたのだろう」
    ○「ことばを出せないのは隣人だけではなく自分自身も。故に『ことばを超える何か』を求めている。言いたい事を言い出しにくい状態、例えば告白のような場面を想像しました」
    ○「このような状況に陥っている隣人は、言葉どころかもう動くこともままならないのだろう。言葉を超える何かとは何か。隣人を思うあなたの心だ」
    ●「共感の仕方がわからなかった」

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    1. 調味料だけを食べている感じ。
      ここまで来ると、それこそ好き嫌いの世界。

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    2. 特選に頂きました。
      「言葉を超えるなにか」を求める饒舌。
      この矛盾が、人間だと思いました。
      あと、並選にとられた方の二番目の評が素晴らしいです。

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    3. ちょっと観念的で取れませんでした。

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    4. 並選にていただきました。上から三番目の評が私です。
      「ことばを超える何か」はもう見つかっていると思いますよ。
      このような「叫び」のような句は好きですね。

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  9. 一人だけニコニコ笑っている会議(2点)

    ○「論功行賞の会議の場でその当人だけが笑っている、この『だけ』が怖いなと思いました」
    ○「意外とこういう人がすごい事を口走るのが会議だったりする。それか何も思いつかないので笑ってごまかしているだけかも」

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    1. 我関せずを決め込んでいるのか、あるいは活発な会議の様子をほほえましく見ているのだろうか。
      世間一般で言うところの「会議」に参加したことが無いのでこれ以上は読めないが、ニコニコ笑っている一人に少し苛ついた。

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    2. 取ってはいませんが、なんと平和なんだろうと思いました。
      でも、共感とまではいきませんでした。
      現実離れしてるこ感じたから。

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    3. 並選にて取らせていただきました。二番目の評が私です。
      何も思いつかないので笑ってごまかしているのは私がよくやる作戦ですので共感しちゃいました(笑)

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    4. 一人だけとあるので他の出席者は険しい表情をしているのでしょう。そんなシリアスな雰囲気の会議でニコニコしている人がどのような立場かわからないですが、曲者の雰囲気を感じます。

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  10. 小腹減ったやかん鳴かせている(2点)

    ○「少し伝わりにくくもあった。『小腹減らして』であれば、よりわかりやすいか。ともかく、家に一人でいる様子が浮かんでくる」
    ○「独身男性を詠んだものだと思った。恐らく傍らにはカップ麺辺りが控えているんだろう。おかしみに包まれたかなしみがここにある。かなしみという言葉では大げさになってしまうけれど」

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    1. 質素な景が見えてきて好感持てる句です。
      取りませんでしたが(笑)
      すいません。

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  11. 少女の小さな頭蓋を掴む(2点)

    ◎「おそらくは、幼稚園くらいか。プニプニの宇宙がそこにあるようで、魅力的。地球儀をつかんでいるような、神秘だ」

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    1. 感覚が伝わってくる。その感覚は命に触っている感覚だろうか。
      言葉の重さ、硬さも、命の触感を伝えるためと思えば丁度いい。
      “頭蓋の小ささ”があるので“少女の”は無くて良い気もするが、実感のためには必要なのかもしれない。

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    2. 取りませんでした。
      少女の頭蓋を掴む行為が逆に恐ろしく感じました。

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    3. 取っておりませんが好きな句ですね。
      特選の評がまた素晴らしいです。
      地球儀の比喩はいいなあ。

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    4. 僕も頭蓋を掴むという行為が怖く感じました。一方で「小さな」には愛おしさのような感情も見えました。

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    5. 皆さま、ありがとうございます。

      知り合いの三歳くらいの女の子と遊んでいた際に浮かんだものです。句にある通りに、彼女の頭をなんとなくつかんでいたのです。

      さて、私は何を思って彼女の小さな頭蓋をつかんだのでしょう。
      そこに、口では言い表せないような愛おしさ以外の感情がなかったとは言えないのかもしれません。

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  12. ポインセチアなければひとりの夜(1点)

    ○「ひとりという主題は、少し食傷気味だ。しかし、この句の取り合わせの『ポインセチア』これが活きている」

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    1. “ひとりの夜”と言いながらも、ひとりではない。
      友人か恋人か家族かは分からないが、誰かがポインセチアを買ってきて、その誰かと過ごしている、と読んだ。
      その喜びは、この句のように静かなのだろう。

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    2. 並選で取りました。
      一人ネタに加わったポインセチアの赤がちょっと鮮烈な感じだった。
      もらい物かと思いました。

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  13. ラリっている波の光を追うばかり(1点)

    ○「若い句だなと思う。ラリってるのは、酒よりもシンナーなんかが似合う。まあこの句ではラリってるのは『波』なんだけど…」

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    1. 「酔っている」と言う以上に酔っていて、「狂っている」と言うほどには狂っていないのだろうか。
      “光”、“ばかり”の押韻(と言うほどでもないけれど)が理性的なので、酔っ払い・狂人の振りをしているということかもしれない。

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    2. 「ラリっている」という言葉を久しくきいていなかったため、ぴんときませんでした。「ラリっている」を波にかけないで読みたいです。

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    3. 「ラリっている」は確かに古いですね。
      でも、並選で取りました。
      酒に酔って海にいるのかと思い、懐かしく感じました。

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  14. 菅笠の男の般若心経の白い息(1点)

    ○「寒い冬に菅笠の僧の男が読経をしている、般若心経は最後の陀羅尼の一節が悟りを賛美する内容ですから、この寒さの厳しい中での読経がその僧をさらに高みへ導いていく、そんな風に思いました」

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    1. 一分の隙も弛みも無く、ピシッと張り詰めた冬の景色が心地いい。
      ちょっと整え過ぎとは思うが、この画は好きだ。

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    2. とりませんでしたが、いい句だと思います。

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    3. とりませんでしたが、好きな句です。
      「白い息」の「先」を描いていただけたらとっていたかもしれません。

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    4. 「の」の連続によるリズム感が良いと思いました。

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    5. 渋谷です。
      皆様、ありがとうございます。
      この句はイタチと同じ日の景です。
      ただし、一つフィクションがあります。
      それは般若心経かどうかは、分からないまま作ったという事です。
      格好いいように見えますが、実際はめっちゃ寒そうでした。
      白い息の先…
      僕の中では、六波羅蜜寺の空也像のイメージはありましたね。
      口から仏様が出てくる像です。

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  15. 雀の長さんがのーぼった(1点)

    ○「まったく分からないのだけれど、とてものどか。そののどかさが分かればそれでいいのかもしれない」

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    1. 迷ったのですが結局取りませんでした。取らなかったのは評をどう書いてよいやら思いつかなかったから。
      でも気になる句ですし気に入っている句です。

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    2. あくまでも、ほく自身の意見でいうなら「感情」を加味されていたら取っていたと思います。
      感情と言いましたが、決定的なアクセントとも言えます。
      この句はこの句で、ほんわかしてて良いとは思いますが…

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  16. ギター取り戻しに屋上へ(0点)

    ○「本宮ひろ志の漫画の世界みたいで良い。この熱血っぷりは、クラスメイトに一人欲しい」
    ●「なぜギターなのか。なぜ屋上なのか。なぜ取り戻さなければならないのか。いろんなことが疑問のまま残る。想像が膨らんで面白いけれどもう少しヒントが欲しい」

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    1. このコメントは投稿者によって削除されました。

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    2. 世代や性別で異なるだろうが、ギターは青春を象徴するアイテムだと思う。それを取り戻しに行くのだという。
      しかも青春の舞台としてこの上ない屋上へ。
      これでもかと言わんばかりの筋立て道具立て。
      けれど青臭さが鼻につかないのは、この句がそのまま一つの比喩として機能しているからだろうか。
      リスタートのうたとして読んだ。

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    3. 状況を浮かべられなかったため、とりませんでした。想像の幅が広すぎるうえに、作った感が強い気がしました。

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    4. ビートルズのゲットバックみたいな感覚。
      でも、取りませんでした。
      一発で共感できるタイプでは無いと思います。

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    5. 作者の雪兎です。

      これは自分のギターを奪われた学生が屋上にギターを取り戻しに行く景を描いたつもりでしたが、
      古戸暢さんや渋谷さんが仰る通り、想像の幅が広すぎるのと、一発で共感できる句ではないのは確かです。
      俳句であまり描かれない景を句にして行きたいのですが、
      寝覚さんのように読んでいただける方ばかりではないので、
      その辺のバランスをどうするかですね。精進致します。

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  17. 女のうなじがマフラーの中(0点)

    ○「隠れているから気になってしまうのです。それはもう男の性なのです」
    ●「女のうなじがマフラーの中にあるだけでは私は満足できない。とりあえずこのマフラーを取ってみたい。そして彼女がどんな反応をするのか見てみたい」

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    1. 20そこそこの女の子でしたが、マフラーをとったら通報されていたと思います。

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    2. 取りませんでした。
      マフラーの中がうまく理解できませんでした。

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    3. 逆選にて取らせていただきました。
      選評にもあるように物足りなさが先に立ってしまいました。

      >20そこそこの女の子でしたが、マフラーをとったら通報されていたと思います

      そこは想像力で何とかお願い致します(笑)

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    4. 見えないけれどそこにはうなじがある。僕はそこには気づけないかもしれない。うなじフェチじゃないからかもしれない。

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  18. そのまま冷めるにまかせ足の爪切る夜が深まる(-1点)

    ●「いろんな情報を詰め込みすぎているのではと思いました」

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    1. 悩んだが取りきれず。
      “深まる”よりも合う言葉があるように思うのだが、代替案が思いつかない。申し訳ない。
      いっそ“そのまま冷めるにまかせ足の爪切る”で十分とも思うが、いやしかし、うーむ。

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    2. 「冷めるにまかせ足の爪切る」で十分かと思いました。

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    3. 作者の渋谷です。

      皆様どうもありがとうございます。
      この句は風呂上りの眠る前の時間を詠んだものです。
      句材的には、これでも行けると自分では思ってます。
      結果を見ても、表現はもう一工夫いるかなと感じました。
      koto氏の句まで削ると、またちょっと句意が変わると思います。

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  19. 脱け殻の君よ禁欲を説くなかれ(-3点)

    ●「俳句とは格言や標語ではない。なので『君よ~なかれ』はないと思う。作句における視点の高さを、作者は間違えているのでは。どんなに真っ当な言い分であっても、命令調になっては台無し。いい発見があるのに、惜しかった。並選よりも特選に近い逆選。例えば『禁欲を説いて抜け殻』なら、あるいは」
    ●「“脱け殻の君”に対して何か思うところがあるのかもしれないが、それが何なのか全く分からない」
    ●「この場合、『禁欲』について、もっと深く掘り下げる必要がある。一体、何をもって、『禁欲』とするのか?」

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    1. 「禁欲を説く君は抜け殻」とかでしょうか。そうしても結局、禁欲とは?君とは?抜け殻とは?という疑問が残り、とるにはいたらなそうです。

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    2. 逆選にとりました。
      一番上の句評です。
      今回、無点だった句と比べても、優れたところがあり、可能性のある素材だったと思います。
      惜しい、というのは正直な気持ちです。

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    3. 逆選の方の句評にある「禁欲を説いて抜け殻」この句のような姿を目指すべきです。目線は面白いと思いました。

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  20. 朝が解けない(無点)

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  21. 君と君のパスワードとすれ違う(無点)

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    1. “君のパスワード”とはなんなのだろう。
      そこが分かればもっと味がする句だと思うのだけれど、今のところはさりげない喪失感くらいしか読めない。

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    2. これはわかりませんでした。解説をお願いいたします。

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    3. 迷った挙句取りませんでした。
      「君」のあとに「君のパスワード」とすれ違ったんですよね。
      つまりあらかじめ「君のパスワード」を知っていれば君にアクセスすることができたのに、と悔やんでいる風に読みました。

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    4. すんなり入ってこなかった。
      ゆえに取りませんでした。
      自解が欲しいです。
      いま、思うのは、ネット上での事かな…IDとか、そんな感じかな?

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    5. 皆様、コメントありがとうございます。作者の雪兎です。遅くなってすみません。

      これはですね、今のネット社会でパスワードを持ってない方はほとんどおられないわけですよね。
      ツイッターのようなSNSにも当然パスワードが必要です。
      「君」というのはざっくり言うと片思いの女性です。
      「君」という存在だけでも謎だらけなのに、その上「君」はパスワードさえ持って、僕の知らないところで何かをしている。
      そんな距離の遠さというか、二重の壁の隔たりを表現したかったのですが難しいですね。

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  22. 歳末のジョンに包囲されている(無点)

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    1. “歳末のジョン”とは「Happy Christmas(War is over)」のことだと思う。
      時期的に、確かに包囲と感じるくらいあちこちで聞こえるが、わざわざこの言い回しにする必要があるのだろうか。

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    2. 上の句評を読んでわかりました。解説なしでは気付けなかったと思います。

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    3. 歳末のジョンがナイスな表現。
      アーティスト、芸術家だったジョン・レノンもいまや風物詩。
      包囲されているというのは、悲しんでいるように感じました。

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    4. ジョンはむしろ包囲される側だと思うのでとりませんでした。

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    5. 作者鴨芹です。
      皆様コメントありがとうございます。
      今回の句会の締切の翌日がジョン・レノンの命日でした。この時期は彼の歌やエピソードに触れる機会が多くなります。
      僕はジョンもビートルズも好きですが、この時期は彼の存在が少々重く感じられることがあります。押し付けられているような感覚を「包囲」としてみたのですが、難しかったです。

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  23. きみがいた窓を開けて目が合ったけれど(無点)

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    1. 「けれど」はない方がひろがりがあるかと。

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    2. 頭の中で出来た句かと。
      状況と視点のバランスが映像として出てきませんでした。

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  24. 無念の墓の土から薊(無点)

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    1. “無念の”が惜しい。共感を押し付けられたように感じた。

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    2. 景は浮かんだのですが、とるにいたりませんでした。無縁仏でしょうか。

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    3. 作者、畦道です。
      これは投句直前に『無念の墓』としてしまったんですね。
      いかにも寂しい、小さな墓地に季節外れの薊が咲いていた、という実景なんですが。
      直す前は『暗くつめたい土から薊』。
      これも当たり前すぎて、いま見てもたいしたことありません。
      棘があって、どことなく陰気な花。
      その素材を生かすには至りませんでした。

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    4. 「暗くつめたい」よりはこちらの方が好きです。

      個人的には、「無念の」はよくもわるくもない感じでした。
      ただ、何が無念なのかがわからなかったのが、とらなかった原因かもしれません。

      「墓の土から薊」でも私は好きなのですが、他の方がどう思われるか。

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    5. 取りませんでした。
      皆さんおっしゃる通り「無念」が理解できなかった。
      作者が畦道さんと知り、納得です。
      やはりストーリーがあります。
      koto氏がいう「墓の土から薊」分かりやすいし、良い句ですね。でも、それだとうまくまとまりすぎてる気もしますね。

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    6. 非業の死を遂げた人の墓というイメージが浮かびました。薊は生への執着。結局取らなかったのですが悩みました。

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  25. 雪が降りそうな夜の窓をなぞる(無点)

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    1. そのまま読んだ。日常に寄り添ってゆく句だと思う。

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    2. ありがとうございます。こういう句を詠みながら、日々を過ごしていきたいです。

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  26. 以上でございます。
    できれば無点の句にもコメントをお願いいただきたく存じます。
    また、自句自解も大歓迎です。活発な議論を戦わせてください。
    それではご参加いただいた鉄塊衆の皆様、誠にありがとうございました。

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