※鉄塊衆名簿自選五句より
天坂寝覚
どこまでも飛ぶ鳥もどこかに帰る
鳥たちが夕焼けの中を飛んで行く様を想像できる句。なかには一匹程度、どこかに帰らない鳥もいるのかもしれない。出会ってみたいものである。
昨日がまだ枕に残っていた
枕カバーの洗濯を、ついつい忘れてしまう。その結果気が付けば、昨日どころか過去が匂う枕となっていることがままある。気を付けたい。
錆びたような髭なでて暮れた
「錆びたような髭」とはどんな髭だろうか。決して明るい髭ではない気がする。
どこかが死んだような水の味する
この水は水道水だろう。世界のどこかが死ねば、どこかとつながっている世界全体に変化が生じる。その変化を、世界を駆けてきた水道水の味にみたのである。
心臓だけが夢をおぼえて居た
ブラック・ジャックか何かで、心臓にも記憶が宿るという話を読んだ記憶がある。掲句のようなことも、案外毎日起こっているのかもしれない。
―――――
地野獄美
食はせてもらつてけふの不機嫌
いい句だと思う。ただ、私自身が普段は現代語ばかりを用いているため、こうした表記をみると「どうしてあえて用いるのだろうか」という疑問が浮かぶ。
雷に怒鳴られまだ慰めてほしいか
「まだ」で詰まってしまい、いまいち句意をとれていない。「まだ怒鳴られてほしいか」であれば、まだ「まだ」の意味を理解できる。
抑える手も震へる手である
怒りか病気か老いかわからないが、面白い句。「える」と「へる」を使い分けるのは、何かそういう規則のようなものがあるためなのか。
屋上の階段届く空がある
五七五の韻律にもみえるが、「屋上の階段・届く・空がある」と読みたい。十代のあの頃を、どことなく想起させる。
もう忘れよ捨てられた森のこと
平成狸合戦ぽんぽこを思い出した。多摩の森は、外的要因の存在が大であったにせよ、狸たちに捨てられた森とみなすこともできよう。
2013年8月21日水曜日
2013年8月16日金曜日
「ユニットさ行」を読む
矢野錆助×天坂寝覚の自由律俳句ユニット、「さ行」が遂にそのベールを脱いだ。
津川智宏さんの「同人誌800」から、初の句集が出たところだ。
昨日いそいそとセブンイレブンに赴き、出してきた私は狂喜し、真っ暗い夜道をにこにこ笑いながら帰宅した。近隣住民の皆様、ごめん。
いい。実にいい。
以前TwitterのTL上で、錆助さんとおしゃべりしていた際、
「玉虫さんは何でやってみようと思ったの? 自由律のどこが好きなの?」
と、問われたことがある。
「嫋々としてないところ」
と、私は答えた。
「短歌のそういうところが非常に好きだったんですが、自由律俳句に出会ったら、
なんか嫋々としてない自由律のがずっとカッコイイなと思っちゃったんですよ。
カッコイイからやりたいのです、そういう不純な動機からです」
「そんなもんだよな(笑) 始める動機なんて、これカッコイイとかそのくらいでいいんだよ」
錆助さんはTLの向こう側で笑っておられるようだった。
で、「さ行」。
いいいですなぁ。自由律の、ぶっきらぼうな言い切りが、私は非常に好きなんですが、
もうこの男くささ! たまらないですね。
このような境地に、女の身であるけれど、私も至りたいと考えている訳です。
ひとつの理想のかたちを見せつけられたようで、大変興奮致しました。
どっちがどの句を詠まれたのか、明らかにされていないところもステキ。
その匿名性が、句を音楽に成らしめている。
ジャズのセッションのようなスリリングさに満ち溢れております。
錆助さんが吠えている。寝覚くんが重低音を奏でている。
(そう、明かしていないけれど、どちらが詠んだかほんのり分かっている)
そして両者が、調和しながらも譲り合っていない。ぶつかって火花を散らしている。
錆助さんが吠えている。寝覚くんが重低音を奏でている。
(そう、明かしていないけれど、どちらが詠んだかほんのり分かっている)
そして両者が、調和しながらも譲り合っていない。ぶつかって火花を散らしている。
これは惚れるなと言っても無理です。
四季をそれぞれ詠んでおられる。
自由律は季語を必要としない表現形式ですが、敢えて詠むこのやり方に、俳句そのものへのリスペクトを感じます。このさらりとしたリスペクトが、ニクい。
白熱のライブを観てきたような興奮に包まれる読後感。最高です。
ただ熱いのではない。自由律かくあるべし、とでも言いたくなるような「ぽつん感」。
これがまたたまらんですね。
私は自由律にはさみしそうであってほしい。
二人でいてもさみしい。
さみしさこそが存在意義というか、実在とか、そういう難しい言葉をふと思い出してしまうような
人間としての根源的さみしさが、自由律的カッチョヨサだと、不肖玉虫は考えております。
以下、特に惹かれた句と、その感想を述べ…と思っていたんですが、これはアレだ。
私の感想なんて、蛇足でしかない。
なので、私が特に惹かれた句を並べるだけにしておきますね。
この熱と、逆説的に、冷たい水が押し寄せてくるようなさみしさとを、
そのまま皆さんに感じてほしいのです。
俺はここに居てはいけない海風
舌絡み合って熱帯夜
鱗粉残し蛾の失せて夜明け
泣き止んだ子のまた泣く月がまるい
言葉無くなった道の終わり
ちょっとそこまでの靴がおもい雪夜
夜歩くさびしさが二つ続く
別れる角についた木枯らし
夜のしじまに君を見つづける
2013年8月5日月曜日
鉄塊CM大賞
この度、鉄塊の宣伝も兼ねて、鉄塊CM大賞という企画をしました。
鉄塊衆の中で、各自が鉄塊の趣旨に最適だと思うキャッチコピーを書き、
お互いを選評しあった結果、以下の言葉がCM大賞へと選ばれました。
馬場古戸暢
「これは確か古戸暢さんでしたか、句会に出されたものですね。その
とき「鉄塊のキャッチフレーズのよう」と選評に書いたのを覚えていま す。今
回、新しいものを色々と拝見しましたが、結局これが一番しっくりくると思い、
選ばせて頂きました。」(畦道)
「まさしく、鉄塊のカラーそのものを表現しえた的確な言葉。」(祖啓)
・詠め。 (1票)
「シンプルでいいなと思いました。
鉄塊の文字はありませんが、詠むことが第一ですよねということで。
ごちゃごちゃ言わないのが力強い。好きです。」(玉虫)
・それぞれの句欲に溺れている (0票)
藤井雪兎
・「そこになんかあるっぽい。」 (0票)
風呂山洋三
・撰ばれてあることの硬骨とファンふたつ我らにあり (0票)
働猫
・心に鉄を抱け――鉄塊 (1票)
「シンプルかつ心を穿つフレーズです。(洋三)
・お前の肉を裂けば鉄塊 (0票)
・ここから、はじまる。鉄塊 (0票)
松田畦道
・いろいろいかれてたのしいたんぽぽ (1票)
「こちらに投票します。清き一票です!よろしくお願いします。」(T宏)
小笠原玉虫
何者でもない、叩かれる前の熱い塊。 (0票)
渋谷T宏
・「鉄塊」という名ですが句会です。 (0票)
・こころを鉄にしろ! (0票)
中筋祖啓
・溶かせば固まる 鉄塊で、働こう (0票)
鉄塊衆の中で、各自が鉄塊の趣旨に最適だと思うキャッチコピーを書き、
お互いを選評しあった結果、以下の言葉がCM大賞へと選ばれました。
馬場古戸暢
大賞・若気の至りの上限にいる (3票)
「このフレーズ、できれば一生言い続けたいですね。」(雪兎)「これは確か古戸暢さんでしたか、句会に出されたものですね。その
とき「鉄塊のキャッチフレーズのよう」と選評に書いたのを覚えていま す。今
回、新しいものを色々と拝見しましたが、結局これが一番しっくりくると思い、
選ばせて頂きました。」(畦道)
「まさしく、鉄塊のカラーそのものを表現しえた的確な言葉。」(祖啓)
・詠め。 (1票)
「シンプルでいいなと思いました。
鉄塊の文字はありませんが、詠むことが第一ですよねということで。
ごちゃごちゃ言わないのが力強い。好きです。」(玉虫)
・それぞれの句欲に溺れている (0票)
藤井雪兎
・「そこになんかあるっぽい。」 (0票)
風呂山洋三
・撰ばれてあることの硬骨とファンふたつ我らにあり (0票)
働猫
・心に鉄を抱け――鉄塊 (1票)
「シンプルかつ心を穿つフレーズです。(洋三)
・お前の肉を裂けば鉄塊 (0票)
・ここから、はじまる。鉄塊 (0票)
松田畦道
・いろいろいかれてたのしいたんぽぽ (1票)
「こちらに投票します。清き一票です!よろしくお願いします。」(T宏)
・安住の地に非ず。 (2票)
「これがかっこいい。まさにこうでなくてはならないと思いました。」(働猫)
「お疲れ様です。直感で以下をとります。」(古戸暢)
・右や左のだんなさま自由律俳句でございます (0票)小笠原玉虫
何者でもない、叩かれる前の熱い塊。 (0票)
渋谷T宏
・「鉄塊」という名ですが句会です。 (0票)
・こころを鉄にしろ! (0票)
中筋祖啓
・溶かせば固まる 鉄塊で、働こう (0票)
2013年8月4日日曜日
青山茂根さんの句集感想文
VT句会において、なぜか自分(祖啓)が必ず句を取っている俳人として、
青山茂根さんの存在が浮上し、そこからの奇遇を感じ、
この度、句集を拝読させていただいた。
感想を一言でまとめると、これは、
・青山茂根の数式
であると、思った。
この一冊に、
「青山茂根の数式」なるものが存在しえている、とても不思議な句集になっている。
とても不思議な句集であったが、しかし、それは、人為的な作為から造られた、
不可解さではなく、茂根自身の引力から必然的に出会うべくして出会った、
地球上の法則としての神秘、遺産、ミステリーサークルであると思った。
そして、「無機質さ」
生活感が句の中に登場しない事も大きな特徴だ。
日常生活での、いろんな人間関係の感情のいざこざに巻き込まれることが一切無い。
これも、強い特色。
印象に残った句を並べてみると、以下のようになる。
・いはれなくてもあれはおほかみの匂ひ
・たわむれを墓の上
・偶像は捨てよニンジン太らせよ
飛びぬけた「知性」を感じる。
計画、計略、計算と、「計」を要する出来事は、この人に相談するのが正解であると思った。
最後に茂根さん自体の人物像をイメージしていくと、
・宇宙人・・・?
ということになるのだが、法則を正しく見ることが、
どうして、人間世界からかけ離れる結果になるのかについては、よく分からない。
さらに、読解をしていく必要を感じた。
青山茂根さんの存在が浮上し、そこからの奇遇を感じ、
この度、句集を拝読させていただいた。
感想を一言でまとめると、これは、
・青山茂根の数式
であると、思った。
この一冊に、
「青山茂根の数式」なるものが存在しえている、とても不思議な句集になっている。
とても不思議な句集であったが、しかし、それは、人為的な作為から造られた、
不可解さではなく、茂根自身の引力から必然的に出会うべくして出会った、
地球上の法則としての神秘、遺産、ミステリーサークルであると思った。
そして、「無機質さ」
生活感が句の中に登場しない事も大きな特徴だ。
日常生活での、いろんな人間関係の感情のいざこざに巻き込まれることが一切無い。
これも、強い特色。
印象に残った句を並べてみると、以下のようになる。
・いはれなくてもあれはおほかみの匂ひ
・たわむれを墓の上
・偶像は捨てよニンジン太らせよ
飛びぬけた「知性」を感じる。
計画、計略、計算と、「計」を要する出来事は、この人に相談するのが正解であると思った。
最後に茂根さん自体の人物像をイメージしていくと、
・宇宙人・・・?
ということになるのだが、法則を正しく見ることが、
どうして、人間世界からかけ離れる結果になるのかについては、よく分からない。
さらに、読解をしていく必要を感じた。
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