2013年9月1日日曜日

第十六回鍛練句会

最高得点句
いいことつづきだ土をつかんだ

互選集計
(5点)いいことつづきだ土をつかんだ ◎○○○
(4点)のれんの奥の懐かしい声ひと呼吸置く ◎○○△△
(4点)なんか言って果てたセミ ○○○○
(3点)無頼派からお中元がきたよ ◎○△△△
(3点)アリの事が心配 ◎○△△△
(3点)星座に興味ある子の寝姿 ◎○△△△
(2点)別れを惜しむ二人の間を駆ける俺だ ○○△△△△
(2点)はじまりはかじったトマトのまぶしさ ○○△△△
(2点)誰に会おうと普通になった故郷だ ◎△△△
(2点)命預けた手が血管浮かせている ◎△△
(1点)失い終えた者から、もう帰ってよい ○△△△△△△
(1点)子の声して麩が散る池 ○△△△
(1点)話のネタ撃ち尽くしてハイボール ○△△△
(1点)着飾って股開いて眼が死んでる写真を見ている ◎○●●△△△(コンプリート句)
(1点)もうさっきの空ではない雲のもとみんな帰ってきた ○△△
(1点)月明かり泣いてばかりいる影を見ている ○△△
(1点)濁った夜の猫の目だけ明るい ○△
(0点)帰省して欲のない人よろこばせている ○●△△
(-1点)街の明かりに息する ●△△
(-4点)明け急ぐ骨を骨を隠しきれない骨が鳴る ●●●●△△
(無点)カフェに長々と居る冷茶ぬるくなる △△△△
(無点)花火の後の無言の僕ら △△△△
(無点)脚を怪我すれば歩兵 △△△
(無点)この家の誰かがずたずたに切り刻んだ凌霄花また咲いた △△△

※以上全24句。特選(◎)2点、並選(○)1点、逆選(●)-1点として集計。△は無点。


作者発表(全8名。投句順。編者除く)

【小笠原玉虫】
カフェに長々と居る冷茶ぬるくなる
帰省して欲のない人よろこばせている
着飾って股開いて眼が死んでる写真を見ている
 
【馬場古戸暢】
子の声して麩が散る池
街の明かりに息する
別れを惜しむ二人の間を駆ける俺だ
 
【松田畦道】
無頼派からお中元がきたよ
濁った夜の猫の目だけ明るい
命預けた手が血管浮かせている
 
【畠働猫】
失い終えた者から、もう帰ってよい
明け急ぐ骨を骨を隠しきれない骨が鳴る
月明かり泣いてばかりいる影を見ている
 
【中筋祖啓】
脚を怪我すれば歩兵
アリの事が心配
誰に会おうと普通になった故郷だ
 
【風呂山洋三】
のれんの奥の懐かしい声ひと呼吸置く
話のネタ撃ち尽くしてハイボール
花火の後の無言の僕ら
 
【シブヤTヒロ】
なんか言って果てたセミ
この家の誰かがずたずたに切り刻んだ凌霄花また咲いた
もうさっきの空ではない雲のもとみんな帰ってきた
 
【藤井雪兎】
はじまりはかじったトマトのまぶしさ
いいことつづきだ土をつかんだ
星座に興味ある子の寝姿
 

44 件のコメント:

  1. 以下、選評。

    ◎……特選
    ○……並選
    ●……逆選
    △……コメントのみ

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  2. いいことつづきだ土をつかんだ(5点)

    ◎「土に触れる生業を持つの人の句、と読みたい。いいこと、といってもほんの些細なのだと思う。なので仕事は変わりなく続けているが、ふと嬉しさを抑えきれなくなり、土をつかむ。読むほうまでも嬉しくなるような光景ではないか。このささやかな喜びを共にするために俳句はある、といってもいい。」(畦道)
    ○「並選。土をつかむ状況ならば、ひざまずいているのだろう。挫折や敗北のポーズだ。しかし『いいことつづきだ』と言う。どういうことだ。違和感があるが、この前向きさには惹かれる。思いがけず『ええ土』に出会えたということなのだろうか。笑い飯のネタで見た。」(働猫)
    ○「大抵『いいこと』があると浮き足立つものですが『土をつかんだ』という表現には安定感を感じさせます。綿密な計算の上で実践された計画が、着実に成果を上げているという、何やらおカタい文句を思わず並べてしまいたくなります。地に足を着けた、上手い句です。」(洋三)
    ○「実際はそうではないのでは?土をつかむって悔しいメージがある。」(Tヒロ)

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  3. のれんの奥の懐かしい声ひと呼吸置く(4点)

    ◎「大変いいです。今回お盆という季節のせいか、帰省を思わせる句をいくつか見かけましたが、故郷に帰る喜びをストレートに表現したこちらに一番惹かれました。のれんの奥という言葉から、向こう側は台所に思える。やっぱり懐かしい声はお母様なのでしょう。嬉しさをかみ殺してひと呼吸置く辺りが大人ですね。静かに心が通い合ってる感じが素敵。文句なしの特選です。」(玉虫)
    ○「冗長な感じもしたが、景を浮かべられたのでとる。何屋さんだったのだろうか。」(古戸暢)
    ○「寅さんのワンシーンを思わせる。『ひと呼吸置く』の部分は、彼の心境とシンクロしていないと書けないだろう。」(雪兎)
    △「脚本のト書きを一部抜き出したような句だが、頭の中でドラマを上手く再生できなかった。一読、心地良い調子は持っているだけに惜しい。」(畦道)
    △「今回帰省の句が多いような気がするが、これはそのうちでも出色。『ひと呼吸置く』が過不足なくその心情を言い表している。うまい。しかしこの繊細さ・上品さは今回の句群では埋没してしまうかもしれない。おしい。『のれんの奥の』が説明過多でインパクトをなくしているかもしれない。」(働猫)

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  4. なんか言って果てたセミ(4点)

    ○「類句はあろうが、この適当さはよい。」(古戸暢)
    ○「瀕死のセミが短く鳴いて、動きを止める。そこに『生きることの儚さ』を投影する詩歌俳句は山のようにあるのだろうが、本句は『なんか言って果てた』だけ。この素っ気なさはどうだ。なにを言い残したのだろう、と考える余地もなく掃き捨てられる亡骸。冷たい現実を突きつけられたようで、心に風が吹く。」(畦道)
    ○「並選。蝉に儚さを重ねる句にはもう食傷気味であるが、これはその逆でよい。蝉の末期になど注意をはらわない。『なんか言って』と無関心である様子がいい。しかし読みようによっては『バレ句』とも読めるね。」(働猫)
    ○「なんとなく、男らしい。」(祖啓)

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    1. 蝉が果てる瞬間を見たいのですがどうすればいいのでしょうか。

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    2. 地面で転がりまくっているところを観察し続ければいいのではないかと。

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    3. 地面で転がる蝉を見付けるのもまた難しそうですね(笑)

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  5. 無頼派からお中元がきたよ(3点)

    ◎「何とも拍子抜けするような句で、あぁ羨ましいなと思って鑑賞した。滑稽味があっていい句だ。」(Tヒロ)
    ○「恥ずかしがり屋だ。可愛いぞ。」(祖啓)
    △「礼儀正しい無頼派だなぁ(笑) 長く付き合いたいよい人にちがいない。」(玉虫)
    △「派閥に属している時点で『無頼』ではない。だからお中元を贈ってもおかしくはないか。なんとなくメタな感じ。形而上ですね。」(働猫)
    △「どうした風の吹きまわしでしょうか。『無頼派』からというのが面白いです。」(洋三)

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  6. アリの事が心配(3点)

    ◎「特選。これはやられた感じである。不条理と読むのもいい。なんらかの理由や状況を想像することもできよう。ともかく選評なんて無粋に感じるほど、いい句である。……疲れているせいだろうか。少し心配にもなってきた。」(働猫)
    ○「僕のことを心配してくれてありがとう。」(Tヒロ)
    △「『心配』の語を使わずに表せればあるいは。」(古戸暢)
    △「ゲリラ豪雨のときなど、確かに心配にはなる。」(畦道)
    △「まず想像したのは、夕立の際の蟻の巣のことでした。もしそうなら、確かに心配です。」(洋三)

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  7. 星座に興味ある子の寝姿(3点)

    ◎「これには、やられました。ちなみにウチの子はオリオン座に夢中です。」(洋三)
    ○「天の川見るんだと張り切ってたのに寝ちゃいましたか(笑)。子、とあるけど兄弟・いとこなんかもいて、子供たちが力尽きたように雑魚寝しちゃってるイメージが浮かびました。そんなみんなを祝福するかのように夏の星空が広がっているのでしょう。可愛らしいのに宇宙的な広がりを感じる句。まさに俳句ですね。大好き。」(玉虫)
    △「体を丸めて寝ている子の姿に、星座のイメージが重なる。面白い着想。興味ある、にもうひと工夫あるとよかった。」(畦道)
    △「星座と寝姿がつながらなかったのだが、例えばオリオン座の形になって寝ているとか、フェニックス一輝の鳳翼天翔の構えで眠っているとかなのかと考えるとおもしろいですね。」(働猫)
    △「子どもの寝姿に愛を感じるのだろうが、星座に興味があるという情報ははたして必要だろうか?」(Tヒロ)

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  8. 別れを惜しむ二人の間を駆ける俺だ(2点)

    ○「並選。かっこいい。公共の場を自分たちの世界にしようとする者へ鉄槌を下す正義の使者かもしれない。『俺だ句』はこのように俺の正義を貫いていると清々しい。」(働猫)
    ○「この『二人の間』の物理的な距離がどれぐらいかで面白味が変わる。10メートルぐらい離れていたら何気なくて切ない良句なのだが、それが1メートルになると明らかにわざとなので、この『俺』の不遇さが際立ってくる。」(雪兎)
    △「分かったような分からないような光景。俺、を一匹の虫と解釈してみると面白い。」(畦道)
    △「何やってんスか(笑) いぢわるしちゃダメでしょ(笑)!」(玉虫)
    △「新幹線のホームで思わずやってしまいそうです。悪気はないんだけどね。いや、ホント。」(洋三)
    △「つまりは邪魔したかったということだね。気づかなかったとは言わせないよ。」(Tヒロ)

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    1. こちらはジョギング中でした。気付いた時には、もう遅かったんです。もう、遅かったんです。ちなみに、ふたりの間は1メートルほどでした。

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    2. 二度言う所がまた何とも…(笑)
      まあでも、ある程度離れた所から見てると、二人が何をしてるかわからないでしょうね。

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  9. はじまりはかじったトマトのまぶしさ(2点)

    ○「歌謡曲の歌詞のようでやや甘口だが、この『なんでもない』瞬間を共有しようという姿勢は好ましい。」(畦道)
    ○「夏の季語トマト。爽やかな酸味感じる佳句かと思う。」(Tヒロ)
    △「いいいです、大変ステキです。夏の始まりのトキメキ。摘んだばかりのトマトはあったかくて、一瞬ぎょっとしますよね。太陽の味って感じがする。」(玉虫)
    △「恋のはじまりだろうか。小道具によって恋に落ちることはある。若ければね。」(働猫)
    △「句意は図れませんが、なんか好きです。」(洋三)

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    1. 句の雰囲気自体は好きだったのですが、句意をつかめず、とりそこないました。

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    2. たまに具体的な描写を避けて、言葉の響き合いだけで一句作りたくなる時があるのです。人によってはイメージに頼り過ぎと批判する方がいらっしゃるかもしれませんが、音楽ってそういうものではないでしょうか。

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  10. 誰に会おうと普通になった故郷だ(2点)

    ◎「故郷へのUターン後のことだろうか。『普通』で何よりだ。これが『恐怖』になることもあるのだから。」(雪兎)
    △「普通の故郷、を詠むのは難しい。」(畦道)
    △「羨ましい。時が解決してくれたのかな。大人になった、という感じがしますね。シンプルなよい句だと思います。」(玉虫)
    △「よくわからないが。帰省が長引いてだれも特別扱いしてくれなくなった、ということか。それとも都会で夢破れて故郷に暮らすようになって長いのか。いずれにせよ日々の倦みを感じる。」(働猫)

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  11. 命預けた手が血管浮かせている(2点)

    ◎「この『手』は医者のものだろうか。それも老いた外科医、これから執刀してもらうところか。無事に執刀され、快癒することを。」(古戸暢)
    △「医師や看護師の手が細いことへの不安なのか。それとも山で滑落してとっさに仲間がのばしてくれた手につかまったもののその仲間ももう限界らしいという状況か。ファイト一発リポビタンDでのりきってほしい。」(働猫)
    △「普通、必死さは伝わらない。」(Tヒロ)

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  12. 失い終えた者から、もう帰ってよい(1点)

    ○「なんとなく、ギャグとしても鑑賞できる。」(祖啓)
    △「『失い終え』たという日本語に違和感を感じた。」(古戸暢)
    △「句意は掴みかねたものの、不思議な魅力がある。」(畦道)
    △「正直どういう状況なのかよく分からないけど、ズキッときて気になる句であります。私も帰っていいっぽいけど、帰らずに待っていたい感じ。」(玉虫)
    △「どんな状況なのか想像しましたがわかりませんでした。でも気になる句。」(洋三)
    △「誰かに試験されているような感覚で好きではない。」(Tヒロ)
    △「従来の自由律俳句にはあまりない作風。期待してます。」(雪兎)

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    1. このコメントは投稿者によって削除されました。

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    2. コックリさんのような魅力の一句でした。

      集団心理における、謎の不可抗力。
      そのような、着眼点なのか。

      不可抗力そのものに対する、親近感。友情的なコニュニケーションともとれます。

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    3. 宗教的な響きがある句ですね。何かの礼拝の最中のような。

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    4. そうか、聖書風の文体ですね。

      「汝~なかれ」

      的な。

      そういえば、昔、スーパーファミコンで『ダンジョン・マスター』って、ゲームがありましたが、あれがまさに、こんな感じの世界観でした。

         ダンジョン・マスター的、俳句


      うーん、これは、珍しいですね!

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    5. 宗教を思わせる文体ってありますよね。
      「ダンジョン・マスター」に関しては、ス―ファミを持ってなかったので知らないんです、すいません(笑)

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  13. 子の声して麩が散る池(1点)

    ○「いいいいです。子供たちの賑やかな声と、池の水面に浮かんでくる鯉の鮮やかな色彩が目に見えるよう。夏休みのわくわくするようなひとこま。母方の祖父の実家に錦鯉がたくさんいる池があってものすごく羨ましかったっけなぁ、と、個人的な思い出にも浸ることが出来ました。これだけ短いのに実に鮮やか。好きすぎる。」(玉虫)
    △「野暮なことは言いたくないが、池にいるのが鴨なら、餌をやってはいけない。」(畦道)
    △「子供が鯉にえさをやっている。その状況以外に何も見えない。」(働猫)
    △「餌やりですね。」(Tヒロ)

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    1. ベンチに腰かけて座っていたもので、餌やりそのものは、視界にはいっていませんでした。池には鯉と亀がおりました。鴨にあげてはいけない理由って何でしょうか。

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    2. koto様

      人間に餌を与えられることに慣れてしまった鴨は、北へ渡るのをやめてしまいます。渡ろうとしても太りすぎて、旅の途中力尽きてしまう場合もあるようです。なので、なるべく自然に近い形で渡り鳥と共存するなら、人はあまり餌をやらない方がいいのです。

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    3. どうもありがとうございます。勉強になりました。渡り鳥がいる池には、麩をやらないようにしなければなりませんね。

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  14. 話のネタ撃ち尽くしてハイボール(1点)

    ○「『ハイボール』を頼むのは、一通り飲み終わった後なのだろう。無言でハイボールが飲まれていく様を想像した。しかし『撃ち尽くす』とは、もしや合コンか。」(古戸暢)
    △「推敲して十七音にした方がいいような気がした。『話すこと尽きて真夏のハイボール』。」(畦道)
    △「ハイボール飲んでひと呼吸。大丈夫大丈夫。話し続けなくても楽しい相手と飲んでいるなら大丈夫。さ、続けようか(笑)」(玉虫)
    △「よく喋る人なのか。マシンガントーク(死語)。自分は口下手なので自然ハイボールの方が頻度が高まる。ジンジャーエールで割ってくれって言うとだいたいどこもやってくれるのでおすすめ。」(働猫)

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  15. 着飾って股開いて眼が死んでる写真を見ている(1点)

    ◎「心霊写真よりも、リアルすぎる写真のほうが、さらに奇怪。うーん、すごく奇怪だ。」(祖啓)
    ○「おそらく『を見ている』の部分が余計だという評もあろうが、写真の描写だけに終わってもつまらない。この部分があったからこそ、内容に広がりが出ている。『見ている』と無表情な感じにしたのも良かった。」(雪兎)
    ●「逆選。『写真を見ている』は説明過多だったか。『~眼が死んでいる』とすれば客体であることは伝わる。それを見ているのは自分であろう。自分の状況を説明されても『そうですか』としか言えない。共感も想像もする余地がない。と、ここまで書いてからすぐ次の自分の句(『月明かり~』)を見る。なんてこった。自戒。」(働猫)
    ●「写真の人物だけに字数を取り過ぎだと思いました。」(洋三)
    △「構造が難解なためか、何を言っているのかよくわからない。」(古戸暢)
    △「どこかを省略したい。『死んだ目をして股開いた一枚』。」(畦道)
    △「現在の心理状況で写真を見ているのか、それとも当時がくそのような状況だったのか、どちらとも取れる。その分メッセージ性が消えている。」(Tヒロ)

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  16. もうさっきの空ではない雲のもとみんな帰ってきた(1点)

    ○「不安定な夏空は、つい先程まで晴れていても一瞬にして黒雲が垂れ込めたりする。みんな帰ってきた、という穏やかな余韻には、雨に降られる前に間に合ってよかった、というニュアンスが含まれるか。あるいは、帰ってきた『みんな』とはお盆にあの世から帰ってきた人たち、という解釈もできそうだ。」(畦道)
    △「時期的な気分か、帰ってきたのは死者たちのように読んだ。『あああ帰ってきた。黄泉の国から戦士たちが帰ってきた』という乙事主のセリフを思い出した。」(働猫)
    △「夕立の後の一場面でしょうか。雰囲気の好きな句です。」(洋三)

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  17. 月明かり泣いてばかりいる影を見ている(1点)

    ○「優しく美しい。慰めの言葉もみつからずに、月じゃなくて月が浮かび上がらせた影ばかり見ているのですね。途方に暮れているとか慰められなくてやるせないとか、そういうマイナス感情ではなく、黙ってそばにいて見守っている作者の包容力を感じます。好きです。月明かりはこういう状況によく似合うと思う。」(玉虫)
    △「やや感傷的すぎるか。どうせ泣くならもっと意外な場所で泣きたい。」(畦道)
    △「冒頭の『月明かり』が最後まで効いています。哀しい余韻。」(洋三)

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  18. 濁った夜の猫の目だけ明るい(1点)

    ○「『濁った夜』が、かっこいいです。具体的には蒸し暑い夜と解釈しました。澄んだ空が乾燥した空のことなので。いずれにしても、とにかく、けだるい句。」(洋三)
    △「これも当たり前すぎるか。猫の目も濁っていたなら、句になると思うが。」(働猫)

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    1. 好きな句ですが、今一歩何かが欲しいところでした。

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  19. 帰省して欲のない人よろこばせている(0点)

    ○「『こうして元気な姿をみせてくれるだけでいい』と、そんな声が聞こえてきそうな句です。」(洋三)
    ●「今月は『ささやかな瞬間を共有する』といったテーマで特選並選をとった。本句もその流れに属するとは思うのだが、あえて逆選に。私の実家は自転車で十分の場所にあり、妻の実家とは結婚以来、絶交している。そんなわけで私は帰省とは縁遠いからだ。我ながらつまらない理由だが致し方ない。」(畦道)
    △「ちょっとあたりまえ過ぎないか。あまりに散文。」(働猫)
    △「絆が感じられる。ただ、『人』とあるので、親ではない気がする。」(雪兎)

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  20. 街の明かりに息する(-1点)

    ●「圧倒的に足りない。」(Tヒロ)
    △「すっきりし過ぎていて、『雰囲気』の域を出なかったという印象。もっとしつこい方が好みだ。」(畦道)
    △「当たり前な気がするが。息を止めていたのか。息していたことに気づいたのか。感動・発見の源がよくわからない。」(働猫)

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    1. 今回の自句の中では、これが一番好きでした。毎回、自分の好みと皆さんの選がずれる不思議。

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    2. どんな明かりかがわかれば、引っかかったかもです。

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  21. 明け急ぐ骨を骨を隠しきれない骨が鳴る(-4点)

    ●「句意を理解できない。たとえば、『骨を』を直接目的語とする動詞を想定できない。」(古戸暢)
    ●「なんか勢いがあってスゴく好きです。でもどう解釈したらいいのか分からなかったので皆さんにも問うてみたい。そういう意味での逆選です。私は抑え切れないワクワクみたいなもの、でも痛みを伴うような感情を詠んだのかなと思いました。逸る心、成長の痛みみたいな。皆さんはどうお感じになりましたか?」(玉虫)
    ●「自律神経失調症なのかもしれない。読み手の健康状態が気になるので逆選にしてみた。」(祖啓)
    ●「『隠しきれない骨が鳴る』の部分は最高なのだが、やはり『骨を骨を』と続けた効果が今一つ出ていない。前の『明け急ぐ』と呼応して切迫感を出したかったのかもしれないが、それならば『骨が骨が』とした方が良かったのでは。句意は良いだけに残念。」(雪兎)
    △「読みきれなかった。骨を骨を、という繰り返しに何かが込められているのだとすれば、いっそ三回四回と増やしてみても面白かったのでは。」(畦道)
    △「親族の死を隠して年金を不正受給しているのでしょうか。」(Tヒロ)

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  22. カフェに長々と居る冷茶ぬるくなる(無点)

    △「『長々と』は不要か。」(古戸暢)
    △「カフェ、が苦手。ヒゲのマスターが高校野球観ながらコップを磨いているような喫茶店のほうが好きだ。」(畦道)
    △「ドリンクバーおすすめ。」(働猫)
    △「居る、なる、と『る』でつなぐのがもったいない。」(Tヒロ)

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  23. 花火の後の無言の僕ら(無点)

    △「よくある。なんでだろう。」(古戸暢)
    △「の僕ら、が必要だったかどうか。『花火果てて無言』。」(畦道)
    △「花火の余韻を楽しんでいるときに言葉はいらないですよね。いいです。好きな句。」(玉虫)
    △「花火が終ったらもうやることは一つですか。いやらしい。」(働猫)

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  24. 脚を怪我すれば歩兵(無点)

    △「怪我しても、のほうがすっと意味が入ってきたような気がする。」(畦道)
    △「脚を怪我すれば歩けないと思うのだが、ツイッターでのつぶやきで状況は飲み込めた。ママチャリ兵が歩兵になったということなのですね。安静にしてください。」(働猫)
    △「残念ながら言葉のつながりだけで作った感がある。」(Tヒロ)

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  25. この家の誰かがずたずたに切り刻んだ凌霄花また咲いた(無点)

    △「再び咲いたということは、『ずたずた』ではなかったのではないか。」(古戸暢)
    △「切っても切れない家族の絆、という暗示が怖い。」(畦道)
    △「『切り刻まれた凌霄花また咲いた』でいいのではないか。『切り刻んだ』ことと『また咲いた』ことの両方を入れるとぼやけてしまう気がする。」(働猫)

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  26. 以上でございます。
    自句自解も大歓迎です。活発な議論を戦わせてください。
    ご参加いただいた鉄塊衆の皆様、誠にありがとうございました。

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