2014年3月11日火曜日

馬場古戸暢を読む その一

友の声遠く意固地
実際の景とは違うかもしれないが、ノスタルジアをくすぐられた句。小学生の頃、友達とケンカをして「もう絶交だからな!」などと離れた位置から互いに叫んだもの。もちろん翌日には、また仲良く遊ぶのだが。大人になると、そうもいかないから困ったものだ。


叫んだ夜道で目が合った
仕事の帰り道、独り言を呟いた後にふと顔をあげると、他人に見られていた。なんてこと、あった気がする。気を付けなければ。


俺のからだを作るがいい焼肉を喰らう
焼肉を食べる時、なぜだか気合いが入ってしまう。そんな心境を見事に言い表している。いつまでも肉食でありたいものだ。

夜のかたちに寝相を変える
面白い句。『草原』が届くと毎月必ず選句を行っている。この句も他の句同様、印が付けられていた。ただ他の句とは違うのは、なぜ選んだかを忘れたということだ。何度か音読するうちに、ようやく思い当たった。にんまり。得した気分。


ゴミ袋の匂いと眠る
これは私も経験がある。コンビニ弁当の空き箱を入れていると悪臭が漂うのだ。ぜひ蓋付きゴミ箱の購入をお勧めしたい。

不思議な動きの女のヒールが高い
なるほど、よく見ていると感心してしまう。何気ない日常の景を鋭く切り取り、なおかつシンプルに表現する。それが古戸暢さんの句の特徴であろう。見習いたいものである。


※『草原』H25年6月号~平成25年11月号より

2 件のコメント:

  1. 「叫んだ夜道で目が合った」

    これは世界中のありとあらゆる場所で、今もきっと起こっていることでしょう。
    そこから何が始まるかは当事者次第。

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  2. 鑑賞文をどうもありがとうございます。

    この中では、「友の声遠く意固地」が好きな句です。

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