2014年4月28日月曜日

第二十三回鍛錬句会

最高得点句 

 

(7点)春めく道で拾ったナイフだ◎◎◎○ 風呂山洋三


(4点)花の色帯びて硬い雪である◎◎
(3点)食うためだけの煤けた電車だ◎○
(2点)苺くれたあの日の兄に金送る○○
(1点)春の雨飲んで別れ○
(1点)知らない子から石をもらう春の昼○
(1点)Ora Orade Shitori egumo(だれもわたしをゆるして呉れない)○
(1点)あまったあたまがチューリップ○
(1点)かなしい辛いものを食べる○
(1点)つついてくる女の指先の懐かしい白さ○
(1点)豚が豚殺して狼に仕事がない○○●
(1点)とんび鳴くこの身に夜が傾く○
(1点)独り言大きくなって鰆のうまい夜○
(1点)古いママチャリの鳴き声○
(0点)古いドア達の鳴き声
(0点)生きて帰ったばかがねむった
(0点)狂っても気付いてくれない野原
(0点)傘を盗られて春雨がやさしい
(0点)寝付けぬ面した女を喰らう
(0点)煮詰まる夜が唾液がぬるい
(0点)蕾桜の公園集う妊婦たち
(0点)窓開けておく春が入ってきた○●
(0点)魚類図鑑ひらくぶらんこ
(0点)サイコロの自立
(0点)また君のいない朝だ
(0点)おばあちゃんの鼻唄も青空
(-1点)やめろ沈丁花頭頭がいたい●
(-1点)自信が亡い●
(-1点)好きな食べ物はチョコだ●
(-1点)グーよりチョキに似て交尾●

【風呂山洋三】
・春めく道で拾ったナイフだ
・蕾桜の公園集う妊婦たち
・窓開けておく春が入ってきた
・独り言大きくなって鰆のうまい夜
・知らない子から石をもらう春の昼

【小笠原玉虫】
・食うためだけの煤けた電車だ
・かなしい辛いものを食べる
・生きて帰ったばかがねむった
・傘を盗られて春雨がやさしい
・やめろ沈丁花頭頭がいたい

【十月水名】
・春の雨飲んで別れ
・あまったあたまがチューリップ
・魚類図鑑ひらくぶらんこ
・狂っても気付いてくれない野原
・グーよりチョキに似て交尾

【馬場古戸暢】
・寝付けぬ面した女を喰らう
・つついてくる女の指先の懐かしい白さ
・とんび鳴くこの身に夜が傾く
・おばあちゃんの鼻唄も青空
・煮詰まる夜が唾液がぬるい

【畠働猫】
・Ora Orade Shitori egumo(だれもわたしをゆるして呉れない)
・また君のいない朝だ
・豚が豚殺して狼に仕事がない
・花の色帯びて硬い雪である
・苺くれたあの日の兄に金送る

【中筋祖啓】
・古いドア達の鳴き声
・自信が亡い
・サイコロの自立
・好きな食べ物はチョコだ
・古いママチャリの鳴き声

30 件のコメント:

  1. 4.春めく道で拾ったナイフだ (7点)
    ◎特選は迷わずこちらに。大変いいです。春が来て、なやましくあたたかく、花でいっぱいの夜道で拾うナイフ。小さくて汚れているけれど、切れ味の確かなナイフであることと思います。新しい武器を手に入れた詠み人の薄笑いが目に見えるようです。春という季節のあやしさ、あぶなっかしさ、みずみずしさを短い句の中に見事に詠み込みました。お見事。(玉虫)
    ◎「春」という季節をよく表している。のどやかさの中に、ぎくりとするような不穏なものが潜む。それが春である。見事です。
    ◎いい。ドーピング俳句だ。(祖啓)
    ○春めく道。花々が咲きはじめ、どこか潤いのある道だろうか。そこに落ちているナイフはまず錆びていると思う。何に使うのだろう。(水名)

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  2. 24.花の色帯びて硬い雪である (4点)
    ◎雪の下に花が咲いているという景でしょう。柔らかな「花」と「硬い雪」の対比が効いています。美しい句。(洋三)
    ◎雪をよく知っている人の句か。(古戸暢)
    △好きです。どういうことなのか、実はちょっと分からないのですが、固い根雪が残っていながらもどこか春の気配を感じている、というようなことかなと思います。花と雪の取り合わせがうつくしい。花の色を帯びた雪ってどんなだろうと想像が膨らみます。(玉虫)

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  3. 3.食うためだけの煤けた電車だ (3点)
    ◎「電車」と「食う」とという取り合わせだけでも、それこそ人を食っているようで面白い。なにを食べるのか想像力をかき立ててくれる。(水名)
    ○子供の頃の電車は旅行に行くときに乗る楽しい乗り物っていうイメージでしたが、大人になって通勤電車に揺られるようになると、そのイメージはだいぶ損なわれますよね。また、車掌や運転手からの視点の句として捉えてみると、さらなるアイロニーを感じてしまいます。(洋三)
    △廃棄された車両を再利用した飲食店なのだろう。多くの場合、そうした店舗は店主が鉄道マニアであったり、もと鉄道職員であったりするものだ。つまり、その店舗は厳密には「食うためだけ」のものではない。鉄道への熱い思いやノスタルジアが表現されたものである。そこに「食うためだけ」に訪れたのだとしたら、とんだ場違いであり、気まずい思いもすることになる。以後気を付けるべきであろう。(働猫)

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  4. 2.春の雨飲んで別れ (1点)
    ○いいですね。この場合お別れをしたのは、遠くへ行く同僚とか、結構好きなんだけど、いまのつながりがなくなったらおそらくもう二度と会わない人って感じがする。飲んだあと、じゃあ、って別れた時は春の雨が降っていたのでしょう。このあと雨に紛れて少し泣いたのかもしれない。短くすぱっとまとまっているところも非常に好みです。(玉虫)
    △印象的で良いです。(洋三)
    △「春の雨」で切れるのかと思って読んだが、それでは送別会などの当り前の情景である。そこで、「雨を飲んで別れる」ととり、雨の中、涙を雨に隠して別れていく二人を想像することにした。(働猫)

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  5. 11.苺くれたあの日の兄に金送る (2点)
    ○まだ子供だった頃の優しい兄の思い出。現在の兄ではなく「あの日」の兄にお金を送るのだと自分に言い聞かせる。泣かせる句です。(洋三)
    ○いいですね。子供の頃優しくしてもらった記憶っていうのは案外あとまで残るものですよね。大きかったお兄ちゃんも今は苦境の只中。何も聞かずにそっとお金を送っている優しい弟なのでしょう。苺というのが甘酸っぱい子供時代という感じがしていい。ぐっとくる佳句です。(玉虫)

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  6. 18.知らない子から石をもらう春の昼 (1点)
    ○やや童話っぽいが、とろりとした春の昼と石の組み合わせがいい。この石は隕石か化石だと思う。(水名)
    △可愛い。おじちゃんこれあげるぅってくれたのでしょうか。ここでちょっと視線をずらしてみると、とんでもなくオカルトな物語も浮かべたり出来る句だなと。公園で出会った可愛い知らない女の子。あの子から石を貰ってからというもの……夜な夜なわたしの部屋には……なんてなったら面白いですね。(玉虫)
    △のちの石売りである。無能の人とならぬよう祈るばかりだ。(働猫)

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  7. 19.Ora Orade Shitori egumo(だれもわたしをゆるして呉れない) (1点)
    ○オラオラと言われると、なんか・・・、気になる。(祖啓)
    △個人的にはこういうのもアリだなと思います。(洋三)
    △最初に申し上げておきたいのは、個人的には非常に、非常に好きだということです。聖書的で、官能的で、言ってることも好きだし、俳句としても野心的と思う。でもなぁ何だろう、非常に引っ掛かるんですよなぁ。日本語の「だれも~」だけで勝負する気にはならなかったのかな?とか。聖書っぽい痙攣的な美を伝えたかったのかもしれないですが、ちょっと新しすぎたなかぁ。(玉虫)

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  8. 22.あまったあたまがチューリップ (1点)
    〇チューリップの花だけ落ちていたということか。(古戸暢)
    △可笑しい。音読して、さらに可笑しい。(洋三)
    △芸人の一発ギャグのようだ。流行るといいですね。(働猫)

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  9. 23.かなしい辛いものを食べる (1点)
    ○哀愁の漂う呑み方。(祖啓)
    △涙をごまかすためでしょうか。そういうやり方もアリですね。(洋三)
    △辛さは痛みと同じ刺激であるので、これは全く合理的な行動である。精神の疲労が蓄積したときには、運動し肉体を疲労させるとバランスがとれる。同様に、悲しみで心が傷ついたならば、肉体を傷つけるため辛い物を摂取することで心身のバランスをとることができるだろう。まったくもって普通の行動。合理的な行動である。(働猫)

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  10. 25.つついてくる女の指先の懐かしい白さ (1点)
    ○思い出したのは昔の彼女の指か、それとも母親か。いずれにしても「白さ」が純真な感じを引き出している気がします。(洋三)
    △かつて関係のあった女なのだろう。実にいやらしい句である。いちゃいちゃは見えないところでやってほしい。(働猫)

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  11. 26.豚が豚殺して狼に仕事がない (1点)
    ○室内ばかりで、革命を起こす人間がいないという事の提示なのか?(祖啓)
    ○いいですね。暗喩的すぎて何を言ってるのかよく分かんない部分もあるし、たぶん自分が狼、自分以外が豚って視線で、傲慢にも程があるって感じですけど、こういう傲慢さ、露悪趣味が大好きなわたしです。(玉虫)
    ●何を言っているのか、意味がわからなかった。(古戸暢)

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  12. 27.とんび鳴くこの身に夜が傾く (1点)
    △いいです。春の物憂い夕方の景ですね。このひとりぼっち感がたまりません。実に自由律俳句って感じがします。(玉虫)
    ○夜に聞こえてくるとびの声は非常に不気味なものである。「この身に」鳴くということは、とびに餌として認識され、狙われているということである。通常とびが人間を襲うことはない。作者はとびの捕食対象となるほど弱っているということだろう。死にかけているのかもしれない。宮沢賢治の「眼にて云う」のような状態なのかもしれない。今夜が山か。(働猫)

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  13. 28.独り言大きくなって鰆のうまい夜 (1点)
    〇一人鰆もまあよかろう。(古戸暢)
    △「うまいうまい」という独り言だろうか。木の芽時という感じがする。(働猫)

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  14. 30.古いママチャリの鳴き声 (1点)
    ○あのなんともいえないきしみ音は季節を問わないが、どこか悲哀を帯びている。泣き声よりもたしかに「鳴き声」だ。(水名)
    △ブレーキの音かそれともベルの音か。いずれにしても部品を換えれば済むことかも。(洋三)
    △いいですね。油差してなくてブレーキのうるさいママチャリなのでしょう。持ち主のママさんは前と後ろに一人ずつお子さんを乗せて大奮闘しているのかもしれない。ちょっと余裕のない感じ、ああもうと悲鳴をたまにあげたくなる感じ、そして何よりたくましく生きてる感じが大変いいです。ママに幸あれ。(玉虫)
    △1「古いドアたちの鳴き声」と30「古いママチャリの鳴き声」とを最初と最後に配置したところに今回の編集担当のこだわり(椎名林檎のアルバムのような)を感じる。これらの「古い~鳴き声」句は同じ作者のものかと思う。冬の間雪に閉ざされていたドア、ママチャリの錆びた音を表しているのだろう。この鳴き声は冬の終わりを告げるものであり、これらの句は紛れもなく春の句であると言える。(働猫)

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  15. 1.古いドア達の鳴き声 (0点)
    △なるほど、面白い句です。(洋三)
    △古い木造のアパートを想起。それぞれの部屋の玄関と、あと部屋の中の、部屋と台所を区切るドアの、両方の音がしていそうですね。隣人同士はほとんど挨拶もしない。けれどお互いの生活音で、ああ、隣りが帰ってきたな……おや、今日は友達が来ているのかな? などとひっそり観察し合っていそうです。こういう生活のふとした瞬間を詠んだ句には非常に惹かれるものがありますね。(玉虫)
    △1「古いドアたちの鳴き声」と30「古いママチャリの鳴き声」とを最初と最後に配置したところに今回の編集担当のこだわり(椎名林檎のアルバムのような)を感じる。これらの「古い~鳴き声」句は同じ作者のものかと思う。冬の間雪に閉ざされていたドア、ママチャリの錆びた音を表しているのだろう。この鳴き声は冬の終わりを告げるものであり、これらの句は紛れもなく春の句であると言える。(働猫)


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  16. 5.生きて帰ったばかがねむった (0点)
    △音が気持ちのいい句である。「ばか」への愛情も感じられる。(働猫)

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  17. 6.狂っても気付いてくれない野原 (0点)
    △いいですね。これぞ木の芽時って感じのあやうい雰囲気ですね。お天気のいい春のある日、真っ裸で「俺はナポレオンの生まれ変わりだ!」と叫ぶ。野原にはほかの人間は誰いない。ただぶんぶんと蜂がうなり、お日様が優しく照らすのみなのでした。(玉虫)
    △誰もいない森で倒れた木は音をだすのか?「音」として認識するものがいないときに、果たしてその音は存在するのか。この問いかけに似た問題をこの句は提起している。誰も気づいてくれない狂気とは、果たして狂気と言えるのだろうか?その狂気を「異常」として認識する他者が存在しない「野原」で、「狂気」は存在し得るのだろうか?そう考えたとき、この句では、「狂っても」と判断しているのは作者自身である。狂気を自称するのは、満たされない承認欲求の表れであろうか。(働猫)

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  18. 7.傘を盗られて春雨がやさしい (0点)
    △雨が癒してくれた、というところでしょうか。雰囲気のいい句です。(洋三)
    △失わなければ気づけないやさしさであった。作者の人の好さが垣間見える。(働猫)

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  19. 9.寝付けぬ面した女を喰らう (0点)
    △眠れないのよ……なんて弱味を見せると、どうでもいい男に喰われたりするから注意が必要です。(玉虫)
    △寝つけない顔ってどんな顔だろうと思うとちょっと怖いです。(水名)
    △ハードボイルドである。(働猫)

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  20. 12.煮詰まる夜が唾液がぬるい (0点)
    △議論ににつまった夜でしょうか。唾液にまで注意したことはありませんでした。確かに口の中は気持ち悪いですね。(水名)
    △気まずい沈黙が続く夜なのだろう。飲み込むつばもぬるくのどを流れる。ペッティングの句ともとれなくはないが、そうだとしたら気持ち悪い描写なのでいやです。(働猫)

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  21. 14.蕾桜の公園集う妊婦たち (0点)
    △蕾と生まれ来るものとの対比に注目したものと思う。しかし自分にはその光景への悪意が感じられる。「集う」「妊婦」という硬質で共感を排した語選びに、客観視あるいは恐怖を感じるのである。これは、自分ならば避けたい情景であるという主観的な読みかもしれないが、おそらく作者にもそうした気持ちはあるはずである。(働猫)

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  22. 15.窓開けておく春が入ってきた (0点)
    〇この春は、なんであったか。(古戸暢)
    ●非常に分かりやすくて、春のやわらかさ、風も伝わってくるのですが、既視感はぬぐえませんでした。逆選とさせていただきました。(水名)
    △どこかで見たような句である。作者自身の過去作の再投句なのであれば、佳句と思うが、今回は判断できず保留。(働猫)

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  23. 16.魚類図鑑ひらくぶらんこ (0点)
    △可愛い。公園にまで図鑑を持って行って開く。わたしもそういう子供でした。魚類図鑑だから、これは男の子かな。魚って太古の面影があってカッコいいですよね。(玉虫)
    △ぶらんこに揺られながら、海原を揺蕩う自身を想像しているのか。鉄塊の過去の句会でもあったが、「図鑑」と「子供」のとり合わせは、放置や孤独を想起して辛い。(働猫)

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  24. 20.サイコロの自立 (0点)
    △どんなふうに自立するのか気になりました。(水名)
    △サイコロは投げられるものであり、ついに自立することはないだろう。つまりこれは比喩ととるのが正しい。投げられ、据えられる受動的な存在をサイコロに喩えているのだ。春の投句であることから、思春期における自我の目覚め、あるいは新しい環境への旅立ちを表現しているのであろう。(働猫)

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  25. 21.また君のいない朝だ(0点)

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  26. 29.おばあちゃんの鼻唄も青空 (0点)
    △「二人は若い」という曲を思い起こしました。朗らかな句です。(洋三)
    △いいです。春らしいさわやかな一句。こういう可愛いおばあちゃんは幸せに長生き出来ますようにと願って止みません。(玉虫)
    △「も」がうまくとれなかった。しかし「青空」をブルーハーツの曲と考えるとすっきりした。ヒロトも50歳になった。鼻歌がブルーハーツのおばあちゃんだって存在するだろう。「ふふふんふんふふふふふうん、ふっふふふふふふふふふー、ふんふふふんーふー、ふふーふーふふふー」(働猫)


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  27. 8.やめろ沈丁花頭頭がいたい(-1点)
    ●このインパクト、特選にしようかと一瞬思いました。ですが、やはり「頭」がどうしてもひっかかってしまいます。一つで十分なのでは。ここは逆選でいただきます。(洋三)
    △とろうかどうしようか迷いました。沈丁花ってきらいな人は嫌いなんですよね。周囲にも結構います。頭の繰り返しは好きです。(水名)
    △「にいさん頭が痛いよ」と言えばナイトヘッドであるが、なんとなく沈丁花による寄生を想像した。「バオー来訪者」とか「寄生獣」の世界ですね。「頭頭」と二回言ってしまうあたりに作者の混乱した状況が見て取れる。(働猫)

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  28. 10.自信が亡い (-1点)
    ●(´・ω・‘)ソッカー 「亡い」ってことは、元はあったけど失ったのかな? うむー。それにしてもまんますぎるかなぁ。(玉虫)
    △最上級ということであろうか。(働猫)

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  29. 13.好きな食べ物はチョコだ(-1点)
    ●これはいただけない。チョコはうまいかもしれないが。(働猫)
    △自句だが、コメントがもらえて嬉しかった。(祖啓)

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  30. 17.グーよりチョキに似て交尾(-1点)
    ●なんか悔しい。(祖啓)
    △松葉崩し!!(玉虫)
    △松葉崩しであろう。(働猫)

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