2015年1月30日金曜日

第三十回 研鑽句会



◇最高得点句

病いへずうつうつとして春くるゝ 放哉

◇互選集計

(4点) 病いへずうつうつとして春くるゝ ◎○○
(2点) 旅僧の樹下に寝て居る清水哉 ◎
(2点) 城郭の白壁残る若葉哉 ◎
(1点) 教場に机ばかりや冬休暇 ○
(1点) 新しき電信材や菜たね道 ○
(1点) 鯉錦を下して居るやにはか雨 ○
(1点) 門を入り門を入る日傘二つかな ○
(1点) 洞窟に頭にたるゝ清水かな ○
(1点) 石に踞して薬とり出す清水哉 ○
(1点) 木の間より釣床見ゆる若葉かな ○
(1点) 見ゆるかぎり皆若葉なり国境 ◎●
(1点) 月代や廊下に若葉の影を印す ○
(0点) 蚊帳釣って子に添乳する暑さかな
(0点) 水打て静な家や夏やなぎ
(0点) よき人の机によりて昼ねかな ○●
(0点) 古井戸や露に伏したる萩桔梗
(0点) 刀師の刃ためすや朝寒み
(0点) 露多き萩の小家や町はづれ
(0点) 虫送り鎮守の太鼓叩きけり
(0点) 湯所は白足袋穿いて按摩かな
(0点) 寒菊やころばしてある臼の下
(0点) 寒菊や鶏を呼ぶ畑のすみ
(0点) 行春や母が遺愛の筑紫琴
(0点) 行春の今道心を宿しけり
(0点) 欄干に若葉のせまる二階かな
(0点) 夕立のすぎて若葉の戦ぎ哉
(0点) 石階の半ばは見へて若葉かな
(0点) 山茶花の根もとに雪を掃きよせぬ
(-1点) 穴蜂の巣や別荘の花の下 ●
(-1点) 別亭に火をともしたる若葉かな ●

◇作者発表

尾崎放哉

明治33年から34年にかけて発表された句。
出典:尾崎放哉, 村上護ほか編『放哉全集I 句集』筑摩書房, 5-9.
※19番の句のうち、二つ目の「うつ」については、上記出典では繰り返し記号が用いられている。しかしこれは横書き表記に対応したものではなかったため、上記のように表した。

30 件のコメント:

  1. (4点) 病いへずうつうつとして春くるゝ ◎○○

    ◎そうでなくとも春という季節は、憂鬱な側面を持つものだ。始まりや変化を否が応にも求められ、またそれらへの適応を強いられる。まして病にあって、心身が弱っている身には、なおのことそうだ。自分にもそうして過ごした春の記憶がある。また、春に病で逝ってしまった人のことも思う。咲く花は好きだ。しかし季節としては好きではない。(働猫)
    ○晩冬らしい景。(古戸暢)
    ○病気に罹ると俳人の春さえ憂鬱。(圭一)

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  2. (2点) 旅僧の樹下に寝て居る清水哉 ◎

    ◎これだけで詠み手がどんな情景を見ていたかが一発で想像できる。それから単純にこの景が好きだ。(圭一)
    △牧歌的。(働猫)

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  3. (2点) 城郭の白壁残る若葉哉 ◎

    ◎若葉句のうちではこれが好み。(古戸暢)
    △白と緑の対比を詠んだものか。城は跡地であろうか。城跡もまた人為の尽きるところであり、興味深いモチーフである。(働猫)

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  4. (1点) 教場に机ばかりや冬休暇 ○

    ○冬休み、誰もいない教室に一人いる寂しさが伝わる。ただ、これだとどの時間帯にいたかも重要な気がする。(圭一)
    △学校の先生だろうか。冬休みのしんとした空気を感じる。寒そうである。(働猫)

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  5. (1点) 新しき電信材や菜たね道 ○

    ○春の訪れとインフラの整備されてゆく様を重ねて、未来への希望を詠んだものか。(働猫)

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  6. (1点) 鯉錦を下して居るやにはか雨 ○

    ○慌てていそうな感じが何だか微笑ましい。(圭一)
    △五月晴れから一天にわかに掻き曇るという感じか。鯉のぼり自体がすでに幸福すぎて辛い。(働猫)

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  7. (1点) 門を入り門を入る日傘二つかな ○

    ○シェイマルズの詩歌のような情景。(温)
    △門は二つあるのか。それともそれぞれの入り方に違いがある様子を詠んだものか。(働猫)

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  8. (1点) 洞窟に頭にたるゝ清水かな ○

    ○洞窟に潜りたくなる。(古戸暢)
    △洞窟というと、沖縄の玉泉洞やガマの経験しかないが、こんな呑気な感じではなかったな。(働猫)

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  9. (1点) 石に踞して薬とり出す清水哉 ○

    ○実景として想像しやすい。(古戸暢)
    △どうせ飲むならうまい水でということか。(働猫)

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  10. (1点) 木の間より釣床見ゆる若葉かな ○

    ○「釣床」が和室の一部のことかハンモックのことかわからないのだが、ハンモックだったらいいな。とります。(働猫)

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  11. (1点) 見ゆるかぎり皆若葉なり国境 ◎●

    ◎新天地。心うきうきの秀雄くん。(温)
    ●国境、どこの国境なのか。これが詠み込まれていないせいだろう、どう解釈すべきか検討がつかない。(圭一)
    △まあそういう季節なんだろうね。(働猫)

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  12. (1点) 月代や廊下に若葉の影を印す ○

    ○いと美し。(温)
    △「さかやき」と読んで、ちょっと何言ってるのかわかんない状態でしたが、「つきしろ」ね。夜、トイレにでも行こうとしたときの景であろうか。(働猫)

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  13. (0点) 蚊帳釣って子に添乳する暑さかな

    △因果関係がつかめないのだがそういうものか。(働猫)

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  14. (0点) 水打て静な家や夏やなぎ

    △古き良き日本の夏を思う。(働猫)

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  15. (0点) よき人の机によりて昼ねかな ○●

    ○中学の頃。給食当番だった私は、好きな子が使ったスプーンをいつも舐めてた。スイカが出た時は、残った部分をしゃぶり尽くした。青い春。(温)
    ●「よき人の机」がややわかりにくい。(古戸暢)
    △「よき人」の解釈によって読みが広がる。性格を表したものか、親密さを表したものか。ここでは「佳き人」と読み、佳人がうたたねしている様子ととる。絵になる女、句になる女と付き合いたいものだ。(働猫)

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  16. (0点) 古井戸や露に伏したる萩桔梗

    △古井戸は人為の尽きたところという感じがして好きなモチーフである。そこに美があるということに、自然と人間との関係性を考えたりするのだ。(働猫)

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  17. (0点) 刀師の刃ためすや朝寒み

    △刃と朝の空気の研ぎ澄まされた緊張感を詠んだものであろう。(働猫)

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  18. (0点) 露多き萩の小家や町はづれ

    △「町はづれ」はサトとヤマの境目。人とそれ以外との境界である。そしてそこにある家が小さい。なんとなく住むものの境遇が窺える。寝覚の句に「よく燃えそうな家の誰か出てきた」があるが、そういったシニカルな視点も感じる。(働猫)

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  19. (0点) 虫送り鎮守の太鼓叩きけり

    △お祭りか。風情があってよい。(働猫)

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  20. (0点) 湯所は白足袋穿いて按摩かな

    △そうですか句。(働猫)

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  21. (0点) 寒菊やころばしてある臼の下

    △小さい頃住んでいた家でも、木の臼を家の裏に放り出していた。正月に洗って餅をつくということを何度かした記憶がある。(毎年ではなかった)「ころばしてある」という表現に、古きよき日本の牧歌的な雰囲気を感じる。(働猫)

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  22. (0点) 寒菊や鶏を呼ぶ畑のすみ

    △とーとっとっと、とーとっとっと。餌の時間であろうか。(働猫)

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  23. (0点) 行春や母が遺愛の筑紫琴

    △人は喪われても、物は遺り、季節も巡る。ただ遺る物だけが悲しみとしてわだかまるのだ。(働猫)

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  24. (0点) 行春の今道心を宿しけり

    △出家か。(働猫)

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  25. (0点) 欄干に若葉のせまる二階かな

    △息吹くものの旺盛な生命力を感じる。(働猫)

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  26. (0点) 夕立のすぎて若葉の戦ぎ哉

    △夕立のあとの涼しい風を詠んだのだろう。(働猫)

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  27. (0点) 石階の半ばは見へて若葉かな

    △あとの半ばは若葉に隠されているということか。あまり使われていない道なのか。植物の旺盛な生命力を思う。(働猫)

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  28. (0点) 山茶花の根もとに雪を掃きよせぬ

    △赤い花と白い雪の対比を詠んだものであろう。人為的に美を作り出したヤラセ句とも言える。(働猫)

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  29. (-1点) 穴蜂の巣や別荘の花の下 ●

    ●写生句というやつなのだろうが、そうですか、としか。(働猫)

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  30. (-1点) 別亭に火をともしたる若葉かな ●

    ●退屈な句。(温)
    △萌え出ずるものを「火」と見たのだろうか。詩的な飛躍である。(働猫)

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