2019年3月24日日曜日

第三十八回 鍛錬句会


※2019年3月開催

◇集計結果

(5点)母のない子がいぬ撫でにくる夕暮れ  玉虫 ◎◎○
(3点)空も海も墓の色している小樽   働猫 ○○○
(3点)春のここでころぶ  由紀 ◎○
(3点)夜の靴下のまっすぐ脱げる  由紀 ◎○○●
(3点)ぬくい子抱き寄せて春を待っている  古戸暢 ◎○

(2点)よそんちのピアノに泣いて日曜が終わってしまう  玉虫 ○○
(2点)誰にも言えないたんぽぽを踏む  かもせり ◎
(2点)かつての村の雪とける  働猫 ◎
(2点)私服の君が近道見つけた  雪兎 ○○
(1点)春が来た暁に死期を知る   造林鎌 ○
(1点)演奏前に吸いこむ春風  雪兎 ○○●
(1点)じいちゃんの匂いの枕と寝付けぬ  古戸暢 ○
(1点)ウグイスはなぞなぞ   造林鎌 ○
(1点)はるにちいさくうまれた  雪兎 ○○●
(1点)ウグイスが鳴いた時、生まれ変わる    造林鎌 ○
(1点)ゆっくりと流れる川底の怒り  かもせり ○
(0点)立ち話まだおわらない飛行機雲  かもせり ○●
(0点)傘すり抜け春ふれてくれる  由紀

(0点)黒々と雨横たわり富士の麓(ろく)まで  玉虫 △△
(ー1点)汗ばむ君の寝相に起きる  古戸暢 ●
(ー1点)人類の罪の袋は黒く被災地だけに積み上がる  働猫 ●

以上、24句。
※特選◎(2点)、並選○(1点)、逆選(-1点)として集計。

◇投句者(投句順)

【造林鎌】
春が来た暁に死期を知る
ウグイスが鳴いた時、生まれ変わる
ウグイスはなぞなぞ

【本間かもせり】
立ち話まだおわらない飛行機雲

誰にも言えないたんぽぽを踏む
ゆっくりと流れる川底の怒り

【藤井雪兎】
はるにちいさくうまれた
私服の君が近道見つけた
演奏前に吸いこむ春風

【畠働猫】
かつての村の雪とける
空も海も墓の色している小樽
人類の罪の袋は黒く被災地だけに積み上がる

【小笠原玉虫】
母のない子がいぬ撫でにくる夕暮れ
よそんちのピアノに泣いて日曜が終わってしまう
黒々と雨横たわり富士の麓(ろく)まで

【梶原由紀】
夜の靴下のまっすぐ脱げる
傘すり抜け春ふれてくれる
春のここでころぶ

【】




【馬場古戸暢】
汗ばむ君の寝相に起きる
ぬくい子抱き寄せて春を待っている
じいちゃんの匂いの枕と寝付けぬ

24 件のコメント:

  1. (5点)母のない子がいぬ撫でにくる夕暮れ  玉虫
    ◎優しい景だ。蕪村の「我と来て遊べや親のない雀」に通ずる。そう思えばいぬの飼い主も母のない幼少期であったものか。(働猫)
    ◎少し句の舞台が整い過ぎていますが、確かにこういうことはあったと強く納得させる句です。変に言葉をこね回さないで、平易な表現を用いているのもいいと思います。(雪兎)
    ○ 夕暮れは安易だし甘い。甘いからいい。(古戸暢)

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  2. (3点)空も海も墓の色している小樽   働猫
    ○めっちゃ好き句。最後体言止めっぽく終わるのが好みなのと、どんより寒そうに曇った小樽の海が目に見えるようでいい。リズムも好き。「墓の色している」のところのリズムが好き。(玉虫)
    ○なぜ小樽なのか。確かに冬期間の海は鉛色のことが多いが、どんよりした色を墓に例えるところにその理由があるのかもしれない。(かもせり)
    ○つらい。(はる)
    △これはわしの。小樽祝津にある鰊御殿跡地。野良猫めっちゃおる。青塚食堂という民宿兼食堂では、でかいニシンンの丸焼きが食べられる。うまいゾ!(働猫)
    △知らなすぎる。 (古戸暢)

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  3. (3点)春のここでころぶ  由紀
    ◎どこ。 (古戸暢)
    ○天然の絨毯。やたらと快適だが、微妙に汚れる。(造林鎌)
    △ここをこうこうこう。塚地のギャグなつかしい。それかバカリズムの文字ネタか。(働猫)
    △11番の「はるにちいさくうまれた」片思いが、早速終わりを告げたのだとしたら面白い、というのも失礼ですけど、コラボっぽい感じがあるなと思いました。(玉虫)
    △もう少し「ここ」のヒントを。(雪兎)

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  4. (3点)夜の靴下のまっすぐ脱げる  由紀
    ◎一番絶好調な時は暗闇をも、我が物としている。まさに忍法。(造林鎌)
    ○よくわからないがわかる気がする。不精して布団の中で足で脱いだ靴下か。(働猫)
    ○好き句。日常のふとした光景で、一瞬「何それ?」ってなりそうだけど、淡々としてて、何処となく日常に対する小さな諦めがありそうでいい。この世界観が実に自由律俳句っぽくて好みです。(玉虫)
    ●佳句と思う反面うまく表現できないが「いかにも」な感じがした。その正体がわからないでいる。既視感ともちょっと違う。(かもせり)
    △想像が及ばなかった。 (古戸暢)

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  5. (3点)ぬくい子抱き寄せて春を待っている  古戸暢
    ◎わかる。(はる)
    ○柔らかくて温かい子どもが、春を待つ心象を表していて良い。(由紀)
    △「子」は子供か、犬猫であろうか。ねっこは春先毛が抜けてひどいから抱き寄せると後悔する。(働猫)

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  7. (2点)よそんちのピアノに泣いて日曜が終わってしまう  玉虫
    ○「よそんち」という語の採用が無ければ平凡な句であった。(働猫)
    ○内容は悪くないのですが、句のすべてを言い切ってしまっている感じがします。何か謎のようなものが欲しかったです。とはいえ、私もこのピアノ聴いてみたいです。(雪兎)
    △ 聞いている姿を想像してしまった。長時間かもしれない。(由紀)
    △想像できなかった。(古戸暢)

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  8. (2点)誰にも言えないたんぽぽを踏む  かもせり
    ◎踏むことも言えないのだろう、たんぽぽの色と閉じられた心象の対比が面白い。(由紀)
    △言えない秘密は自分が犯した罪のことだろう。罪に押しつぶされそうな自分自身をたんぽぽに仮託して、自ら踏みつけている。倒錯しているようで、本人にとっては極めて合理的な行為なのだ。(働猫)
    △好き句。今回別の句が好きだったので選に漏れちゃったけど、いい句と思います。たんぽぽを踏むというちょっとした残酷さを秘密として持ってる感じが好きです。(玉虫)
    △ 「誰にも言えない」はたんぽぽにかかるのか踏んだことにかかるのか。(古戸暢)

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  9. (2点)かつての村の雪とける  働猫
    ◎過疎で廃村となった集落にも春は来る。かつてはここにも人の営みがあったかと思うと感慨深くなる。(かもせり)
    △これもわしの。「廃村の雪とける」とまず詠んだが、変えてしまった。言い切った方がよかった。蝦夷における廃村を詠んだが、福島の景も頭にあった。(働猫)
    △割と好き句。田舎出身なので「かつての村」って無条件にぐっとくるとこがあるかも。吸収合併してドコソコ市になっちゃった、ってよりも、裏読みしすぎかもしれないけれど、例の原発事故で無人の廃墟と化した村のことを言ってるのかもしれない、とも思いました。(玉虫)
    △もう無くなってしまった村にも春は来るのですね。喜ぶ人は誰もいないけど…。(雪兎)
    △よい景。 (古戸暢)

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  10. (2点)私服の君が近道見つけた  雪兎
    ○私服の時に普段とは違う一面を感じることがある。制服の時は近道を通るようなことをしない人なのだろう。(かもせり)
    ○春の景だと思う。 (古戸暢)
    △私服を見慣れない、中高生の君なのだろう。甘酸っぱい青春の思い出を詠んだものか。(働猫)
    △好き句。学生ぽい。わたしの田舎みたいに、田んぼとか林のある帰り道なんだろうなと想像しました。(玉虫)
    △私服のテンションなら近道も見つかりそう。(由紀)

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  11. (1点)春が来た暁に死期を知る   造林鎌
    ○音が綺麗。(由紀)
    △えぇ……。大丈夫……?(働猫)
    △なぜ。(古戸暢)

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  12. (1点)演奏前に吸いこむ春風  雪兎
    ○ブラスバンドの演奏を想像した。春でなくてもよいが春が一番似合う。(かもせり)
    ○可愛い。(はる)
    ●少し語呂が悪い気がする。リズム感を追求せよ。(造林鎌)
    △トランペットかな。さわやかですね。ポカリスエットのCMだわ。多部未華子でお願いします。(働猫)
    △卒業式で演奏する吹奏楽部のイメージ。ちょっとさみしい気持ちもありそうでいい。(玉虫)
    △吹奏楽部っぽい。 (古戸暢)

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  13. (1点)じいちゃんの匂いの枕と寝付けぬ  古戸暢
    ○好き句。じいちゃんちに久しぶりに泊まって、何だか居心地が悪く落ち着かないイメージ。子どもの頃はめっちゃ大好きだったじいちゃん。そしていまも好きなんだけど、大人になってしまった現在は子どもの頃のような密な関係ではなくなっていて、詠み人はちょっとだけ罪悪感を抱いていそうに思いました。じいちゃんの匂いの染みついた枕。あと老人の家ってやたらと音が大きな時計が何故か複数あって、寝付けない夜はほんと気になっちゃうもんですよね。でもじいちゃんは、大人になった詠み人と距離が少し空いたことをきっと怒ってないですよ。そういうものと思っている。分かって受け入れてくれるから、じいちゃんは余計にせつない存在。(玉虫)
    △小さいころは親父の加齢臭が嫌いではなかった。いま、自分が加齢臭を発するようになってくると、他人の加齢臭がとても気になるようになってきた。くさい者たちが夕暮れさらにくさい者を叩く。(働猫)

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  14. (1点)ウグイスはなぞなぞ   造林鎌
    ○何回も何十回もあの特徴的な囀りを聴いていると、その美しさを味わうのを通り越して、何か隠された別の意図について考えてしまいそうです。(雪兎)
    △誰がこまどり殺したの。マザーグースに通じる謎かけの句。(働猫)
    △なんか好き。小さな愛らしい存在だけど、なぞなぞだと思うと、ウグイスに宇宙的な広がりを感じちゃいました。好き!(玉虫)
    △ウグイスとメジロを想像した。(由紀)
    △鳥です。 (古戸暢)

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  15. (1点)はるにちいさくうまれた  雪兎
    ○野花のことか。こんにちわ。(造林鎌)
    ○何のことを言っているのかはわからなかった。(古戸暢)
    ●大きく生まれる方が特殊だろうから、言ってることはあたりまえなんだが、ひらがなにすることで特別な印象を与えている。政権与党の演出する「やってる感」のようだ。だまされてはいけない。(働猫)
    △シンプルで好き句。全部ひらがななのも赤ちゃんぽいイメージでよい。文字通りお子さんのことを言ってるようにも思えるし、例えばひっそりと片思いを始めた、みたいなことを言ってるとしてもいいと思う。(玉虫)

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  16. (1点)ウグイスが鳴いた時、生まれ変わる    造林鎌
    ○春を再生の季節と位置づけたものか。もしくは西川のりおのギャグが生まれた瞬間であろうか。ほーほけきょ。(働猫)
    △言いたいことは分かる。ストレートすぎるので、何かこう、うまい言い回しが見つかるといいなー!と思いました。(玉虫)
    △何が生まれ変わるのか。 (古戸暢)

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  17. (1点)ゆっくりと流れる川底の怒り  かもせり
    ○ 人間が汚したのかな綺麗にしよう。(はる)
    △「かじか」という魚がいる。小さい頃、川で遊んでいたときに、水底から見上げるような人間の顔があってぎょっとしたことがある。それが「かじか」であった。そうとも知らず幼い私は、見てはいけないものを見たという気持ちで恐れた。何とも言えない、自然からの警告、怒りの表れであるかのように思えたからだ。私自身の罪など、川で小便をすることぐらいのものであったが、「人類の罪」については、繰り返し手塚治虫に叩きこまれていたために、その「怒り」が私のもとに現れることには疑問を覚えなかった。(働猫)
    △こちらも汚染のことを言ってるようにも思うし、詠み人の個人的な怒りのことかもしれない。もう一歩踏み込んで激しさを伝えるにはどういう言葉がいいかな?とか、いろいろ考えてしまいました。(玉虫)
    △「怒り」をつかみかねた。(古戸暢)

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  18. (0点)立ち話まだおわらない飛行機雲  かもせり
    ○立ち話と飛行機雲の付かず離れずの距離感が絶妙だ。(由紀)
    ●既視感。(はる)
    △小さなころ、母親に連れられて買い物に行った記憶の中にこんな景がある。退屈で見上げた空に長く尾を引く飛行機雲。昔から世間話が苦手だった。なにをそんなにしゃべることがあるのかといつも疑問だった。人がしゃべっている顔を見ていると、自分とはまるで関係のないもの、違う生き物のように見えてきて気持ちが悪くなる。自分と同じ種類の生き物は自分しかいない。そんな孤独を幼い日から生きていたのことを思い出した。(働猫)
    △素直な感じがしていい句。海紅の人とか好きそうな感じだなーと思いました。(玉虫)
    △子供の目線のようにも思えた。(古戸暢)

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  19. (0点)傘すり抜け春ふれてくれる  由紀
    △「ふれてくれる」がなんといってもよい。春そのものかもしれないし、春を感じさせる誰かなのかもしれない。傘を差していない中島美嘉は噛みついてくるので逃げた方がよい。(働猫)
    △いい句と思うんだけど、助詞がちょっと気になる感じ。(玉虫)
    △傘のナイロン部分をすり抜けることは、穴があいていない限りはない気がしてならない。 (古戸暢)

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  22. (0点)黒々と雨横たわり富士の麓(ろく)まで  玉虫
    △どこから見ているのだろう。ドローンで空撮しているようなダイナミックな視点だ。(働猫)
    △冗長なところも含めてよい。 (古戸暢)

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  23. (ー1点)汗ばむ君の寝相に起きる  古戸暢
    ●のろけてんじゃねーよ!と、ひねくれた気持ちで逆選とさせていただきました!(笑)(玉虫)
    △小さい子供と寝ているのだろう。山田花子かもしれない。(働猫)
    △気温の上昇や官能にも読めるが、恐怖の寝汗で読んでも面白い。(由紀)

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  24. (ー1点)人類の罪の袋は黒く被災地だけに積み上がる  働猫
    ●意味がわからなかった。 (古戸暢)
    △これもわいの。除染土のフレコンバッグを詠みたかったが失敗している。フレコンバッグの耐用年数は3年ほどらしい。現在は「中間貯蔵施設」と指定された場所に「仮に」積み上げられている。3年前、長野の兄を訪ねてフェリーに乗って車と一緒に本州に渡った。苫小牧から仙台で降り、道中で通行規制が解除されたばかりの道を福島第一原発の手前まで行ってみた。ゲートで白い防護服を着た人たちがわらわら出てきて追い返された。(働猫)
    △汚染土問題はわたしも激おこだぞ。持て余した挙句農地の土とまぜまぜしちゃおうぜとは何事か。詠み人の静かな怒りが伝わって来る句。あんまり俳句で社会派っぽい活動しようとするのは良くないかもだけど、例の原発事故とその後問題の句集とか作りたいなーという気持ちもあって、このお題でフォーラムとかでみんなで出来ないかな、とか思っています。(玉虫)
    △圧がすごい。すごすぎて大げさな感じがします。(雪兎)

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